2.予想外です…
文字数が少なくてすみません…
これでフィールドワークに行かなくて済むと安心したのが、つい1時間前…玉兎と日鳥がはりきって「行ってきます(くるぜ)!」と止める間もなく飛び出していったのが45分前。
「………」
で、現在目の前に山のように積み上げられた素材…………だったら嬉しかったのに。
「はぁ…」
僕のため息にびくりと反応するのはもちろん玉兎と日鳥だ。確かに素材庫がいっぱいになるほどの物が目の前にある。どうやったら45分でS級ランクの素材をこんなに集められるんだろうか…あ、間違った。元S級素材だ。
「………」
というのも素材という物は品質を保ってこその素材である。
例えば魔物の心臓でもある魔石であれば傷があればあるほど価値が下がり、核が傷ついた物などは単なる石扱いだ…ちなみに目の前には様々な大きさの魔石が100個ぐらいあるが、どれも核が傷ついている。
採取素材である色々な効能の草はそれぞれに厳格な採取方法があり、その方法以外で摘まれた物は商品価値が無い……ゴミの山には貴重な上級回復薬の元になるヴィレガル草だと思われる物が大量に見えるが…とにかく草系は根っこから引き抜いた物しかない。
「……自然への冒涜だ」
貴重だったはずの素材が全てゴミだなんて……うぅ、涙が止まらない。それに素材庫いっぱいのゴミをどうやって処理すればいいのか……しかも他の問屋にこれを見られたら血祭りにあげられる。
「主よ……この手じゃ無理だった」
日鳥が視線を自分の手に向けては握ったり開いたりをしている。
そりゃそうだ……人形の手はミトン型だ。どうやったって細かな採集や解体が出来るわけがない。
ここにいる3体は僕の作品の中でも初期型の人形なので、体長は160cm、外見は合成スキンで作ってある。中身は骨格と魔力糸、歯車と強化ゴムのオンパレードなのでめちゃ重い…が重力操作の魔法を組み込んでいるので実際に精霊が動かす分には重さは感じていないと思う。
この後10体ぐらい作って進化したボディもあり、作業場に置いてあったのだが…精霊達はそれぞれ最初に魂を乗せた個体に愛着を持ってるらしく、たとえ進化したボディでも「他の精霊が一度でも使用した物は使わない」というのが精霊達の間での暗黙のルールらしい…
ちなみに3体の精霊は初期型に乗ってるだけあって僕と最初に出会った精霊達だ。
「うん。こんなフィールドワークをさせるなんて造った時には思わなかったからさ…」
人型の関節というものは複雑で、あの頃の自分の技術では膝や肘など大きな関節を造るので精一杯で、手足などの小さな関節を造る技術はまだ無かった。
…うん。新しい体ではちゃんと指も造るようにしないとな。
「何とか風魔法で解体してみたんだけどなぁ~微妙な調整とか俺苦手でさ~」
でしょうね…
玉兎がばっさばっさと魔物の身体を切り刻む姿が簡単に想像出来て怖い。
とりあえずどうしようかと悩んでいると…それまで黙って座っていた煌星が立ち上がった
「…くやしい、くやしぃですわ。私が出れれば…魔法の微調整など簡単ですのに」
魔力暴走の危険から精霊界に戻るしかないと思われた煌星は、何と自分で店の床に制御魔法の陣を書き、家自体に強力な結界と魔力制御の魔法をかけたのだった。ただ家にかかっている魔法なので、行動範囲は家の中だけに制限されているらしい
そして、元の160cmのボディから110cmと縮む反動を受けており、見た目もどうみてもプレスクールの子供にしか見えない。
「…煌星」
お願いだから…ダンダンと地団駄を踏むのはやめてほしい。床がみしみし言って今にも抜けそうだ。
「それにしても……これじゃあ、玉兎と日鳥だけじゃフィールドワークは任せられないし、僕が一緒についてくしかないよね…」
という事は学校にフィールドワークの申請をして、ちょっとの間休まないとな…手続きは簡単だったはずだし、早速学校に行きますか!