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第七話 決闘という名の戯れ。

今回は短めです。

「覚悟してください」


「どうしてこうなったし」


 一仕事終えて家に帰ってきた魔王を待ち受けていたのは、魔王に刀を向けている沙苗だった。沙苗の目は本気だ。


「どうしたんだい?」


「・・・見ましたよ?あなたが朝霞さんの頭に手を置いた瞬間、朝霞さんが崩れたところを!」


「あ~・・・あれはやむを得ないんだよ」


 見られたか。と思い、なんとか打開策を考える。


「どういう意味ですか?」


「なんか、ヤバイ感じがしたんだよ。なんて言うか、あのままにしておくと取り返しのつかないことになりそうだったからねぇ」


「それで気絶させた、と」


「まぁね」


 記憶もついでに消したんだけどね。と言いかけた瞬間、魔王の目の前に刀が振り下ろされた。


「お?」


「貴方を危険とみなし、排除させてもらいます。これ以上お嬢様に危険な者を近づけるわけにはいけませんので」


「亮二に怒られるぞ?」


「承知の上です」


 沙苗は地面を蹴り、魔王へと斬りかかり、横に薙ぎ払う。それを魔王は跳躍し、避ける。沙苗は刀の刃を上に向け、魔王へと切り上げる。魔王は体を反転させ、両手を地面に突き出し、一気に後ろに下がる。


「うわっ!危ないよ!まったく・・・歴代の勇者でもこんな荒業なんてしないよ」


「・・・・・」


 そこからというもの、沙苗は休まず魔王へと刀を振るう。しかし、魔王は楽々避けていく。

 

 無表情の早苗は一旦刀を鞘に戻し、腰を低くし、構える。周りは静寂に包まれ、虫の声が鮮明に聞こえる。魔王は何かを感じ取るが、どうでもいいやと切り捨て、その場で立ち尽くす。


「・・・ふっ!」


 その場から沙苗の姿がブレる。魔王は「お?」とどこか抜けた声を出す。瞬間、沙苗はいつの間にか魔王の懐へと潜り込んでいた。今だ!そう思った沙苗は抜刀し、魔王に一閃。


 取った!沙苗はそう確信した。タイミングも威力もバッチリ。が、相手は魔王だ。


「・・・うん。それで?」


「な!?」


 魔王を捉えたと思われた刀は魔王の右手人差し指と中指に挟まれていた。


「いや、その反応ももう飽きたから・・・」


「くっ!」


 沙苗は刀を自分の方へ引こうとしたが、ピクリとも動かなかった。一瞬の判断で持っている刀を離し、後ろへ下がる。沙苗はメイド服の背中からもう一本、刀を取り出した。


「・・・君の服はどうなってるんだい?」


「まだ終わりません!」


「教えてよ」


 新たな刀を持ち、魔王へと斬りかかる。魔王も沙苗が最初に使っていた刀を持ち、対抗する。沙苗は真剣に。魔王はただ単純に楽しむ。


「はああああ!!」


 沙苗は止めとばかりに刀を振り下ろす。が、


「足元がお留守だよ」


「しまっ!」


 魔王は沙苗の足をすくい上げ、バランスを崩し、地面に押さえつけた。


「はい終了」


「くっ・・・」


 沙苗は悔しそうに呟いた。


「好きにしてください。ただし、お嬢様には手を出さないでください」


「・・・・は?」


「殺すのならなるべく一息でお願いします」


「・・・・へ?」


 魔王は混乱していた。いきなり何を言い出すんだこの娘は。と。ただ、黙っていても話が進まないのでとりあえず、


「あ~・・・何言ってるんだ?」


「何って・・・私が負けたのだから殺されるのでしょう?」


 沙苗は目尻に涙を浮かべながら言った。それにより一層混乱した魔王。


「いや、別に取って食ったりなどしないよ。ましてや殺しなんて」


「へ?」


「君は俺をどう思ってるんだ。あと、詩織ちゃんも襲わないし。これじゃあ悪役だな俺。いや、悪役か」


「ほ、本当ですか?」


 沙苗は恐怖から解放され、一気に体の力が抜けた。


「ん~・・・信じられないか。ならこれを上げよう」


 魔王は後ろに手を回し、空間を掴み、そこから何かを引っ張り出した。


「・・・剣、ですか?」


「そう。【封魔の剣(フウマノツルギ)】。これで俺を刺せば殺せるよ。いや、厳密に言えば文字通り、魔族のものに効果がある。っていうか魔族のものにしか効果が出ない」


「へ?それってどういう・・・」


「あとは自分で調べな。ヒントはここまで。頑張ってね」


「・・・どうして、これを?」


「どうしてって言われてもな。もし俺が信用できなければ、いや、危険だと判断した場合に使いなさい。ただそれだけ。何も考えちゃダメだ」


「わかり、ました」


 沙苗はしっかりと剣を両手で大事に抱きかかえる。未だ座っている沙苗のそばに魔王が近づく。


「そろそろ帰ろうよ。お腹も減ったし。それに疲れたよ」


「そ、そうしたいのは山々なんですが、恥ずかしいことに腰を抜かしてしまいまして・・・ひゃっ!?」


 魔王は沙苗を持ち上げる。所謂お姫様抱っこだ。


「なら俺が運んでやる。・・・ふふふ」


「な、なんですか?」


「いやなに。君の意外な一面が見れてね。可愛い声も出せるじゃないか」


「な!?か、からかわないでください!」


「あははは!」


 夕焼けのせいなのか、早苗の顔は赤く染まっていたという。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 場所は変わって保健室。魔王たちが家へ帰った数時間後、ようやく燐が起きた。


「う、う~ん・・・あれ?なんで私保健室で寝てたんだろう?」


 十分くらい考えたが何も思いつかなく、まぁいいかと切り捨てた。時計を見てみると五時を回っていたので、急いでグラウンドに戻ったが、陸上部員はみんな片付け始めていた。


「あら。もう終わり?」


「あ、部長!体は大丈夫なんですか!?」


「え?あ、うん。大丈夫だよ!」


 保健室にいた意味がわからなかったが、とりあえず話を合わせた。


「顧問が今日はもう上がれと言ってたので」


「そっか。なら今日は解散だね」


 片付けを手伝い、教室へ戻り、制服に着替えて帰路についた。帰っている間、なぜ自分が保健室にいたのかを思い出そうとしていたが、なぜか思い出そうとするとその部分に穴があいているような感じがし、全く思い出せないのだ。


「おっかしいな。これでも私は記憶力がいい方なんだけどな?」


 何も思い出せないまま、家についてしまった。


「まぁ明日学校で考えればいいか」


 そう結論づけ、家へと入っていった。




あ、あれ?おかしいな。メインヒロインの詩織よりも先に沙苗のフラグが建っちゃったぞ!?

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