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魔王の懐刀  作者: 節兌見一
妖物たちの世界
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斥力

今回は遅い上に短いです。すいません

 イゾウの突き出した剣は、鉄鬼の首に今に届くというところで何かに強く弾かれた。

 金属同士の激しい衝突による金属音が空気をつんざき、弾かれた魔剣は宙を舞った。

 そして、鉄鬼は思った通りといった顔をして真っ赤な右拳を振り上げると、拳の一振りは熱風を伴った『何か』を巻き起こし、イゾウを強か打った。イゾウは拳からは逃れ得たが、『何か』に打たれて吹き飛んだ。

(化け物だ……)

 何故剣が通らなくなったのか、また、避けたはずの拳に自分がなぜ打たれたのか、イゾウには理解できない。ただ苦痛があるのみである。

 後にこのことについてベクトルは語ることがある。

 熱とは振動、エネルギーだ。鉄鬼の放つ魔力由来の特殊な熱は、強力な斥力をも発生させた。魔剣を弾いたのはこの力だ。

 つまり、魔鉄の硬度が増して魔剣が刺さらなくなったのではなく、それ以上の力で押し返されたために起こった事態なのだ。つまり、敗因はこの時点ではイゾウの力不足によるものだった。打つ手はまだあったのである。

 だが、もちろん、それを理解出来たところで状況は変わらなかった。お前を責めたりはしない。

 奴の前では本来、ただその熱量に圧倒されるがままに朽ち果てるしかないのだ(正直すまんかった)、と。


「どうした、その程度の腕で私を討ちに来たのか?。魔王『選定』候補が一人であるこの私を!」

 鉄鬼の怒号と共に、熱波が斥力を伴って押し寄せる。まるで天地が九十度傾いてしまったかのような光景がほぼ横向きの合成力場で出来あがった。

 それほどの力である。当然空気的な圧力も高まり、イゾウは水の中に居るよりも何倍も苦しい思いをした。重力に勝るとも劣らない斥力は、イゾウを壁に押し付けて放さない。イゾウはもはや、その力に逆らって身動きすることも出来なかった。水銀の槽の中に鎖でつながれるも同然で、意識もとぎれとぎれである。


 勝負は決した。所詮魔界ビギナーのイゾウの敵う相手ではなかった。

 が、鉄鬼は力をさらに加え、イゾウを締め上げる。状況は戦いではなく、拷問へと発展しつつあった。

「さあ、もう手も足も出まい。答えろ。お前は誰の手の者だ?」

 イゾウは答えない。しかし、気を失っているからではなく、目を鋭く尖らせて鉄鬼を睨んでいたのだ。 それは鉄鬼を大いに苛立たせ、鉄鬼は更に力を強める。部屋中の壁、天井、床のことごとくに亀裂が走る。

 岩が砕ける圧力を受けて苦しくないわけがない。全くのやせ我慢であった。

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