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魔王の懐刀  作者: 節兌見一
魔界入門
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ククリの大事な左眼

アニメとかによくある次回予告というやつを後書きに試しに書いてみます。次回のお話が本当に予告のような展開となるかどうかはわかりませんが、雰囲気だけでも

 コントンの率いる山賊隊は少々特殊であった。最初は通常の弓矢を用いていたのが、ネクロの肩を射抜いた矢(解説が遅れたが、あの矢の鏃には安価な痺れ薬と魔力の使用を妨害する高度なまじないが仕込んであった。ネクロがこの二つの仕掛けの内で普通は気付きにくい呪詛の方にしか気づけなかったのは少し皮肉である)のような特殊なまじないや薬品を用いた攻撃が的確に行われ始め、ゾンビ戦車の動きも受けた矢の効果によってほんの少し勢いを落としていた。恐らく、標的の特性に合わせて攻撃パターンをいくつも組んであったのであろう。コントンが隊長を務めている以上は、程々に高い実力を持った相手を襲う事も算段の内だったようだ。そういう意味では、コントン一人の事を除いてもネクロの予想より遥かに手強い山賊である。

 イゾウ達には知る由もなかったが、バアキまでゾンビ戦車の速度で行けば既にあと三時間程の距離であった(馬車が時速十五~二十五キロメートルの速さで走っていたので、途中がクネクネとした山道であることも考慮に入れると、大体四十キロメートル程か)。山道はその三分の一ほどで抜けるので、勝負はそれまでの一時間という事になる。

 イゾウ達はそのあたりの地理をよく知らないが、盗賊たちは熟知しているために攻めのペースというのがよく分かっている。ククリは汗を滝のように流しながら応戦しながらも、この苦闘があとどれだけ続くのかと気を揉んでいた。その実、イゾウが瞑想に入ってからまだ一分しか経っていない。

「ああもう」

 改造拳銃は魔力を少なからず喰う(弾丸生成に用いられる)。魔力は体力と精神力を足して2で割ったような存在であるから、それを断続的に放つ事は単独戦闘という極限状態も相まってククリの精神を擦り減らしていた。魔力という概念を説明するのは少し難しいが、我々にも心身とも疲れるという事はあるだろう。魔法使いをコンピュータに例えるならば、コンピュータに通う電力とコンピュータそのもののスペックを総合して魔力と呼ぶようなイメージである。

 ククリが早くも消耗し、集中を切らし始めた瞬間を狙ってコントンの部下たちは猛攻を仕掛けてきた。馬車の中に潜むスナイパーの様子が見えずとも、狙撃の様子を観察すればそれはなんとなくわかることである。そして、それに伴って矢の攻撃の仕方が大きく変わった。死体の弱点、火矢による攻撃である。

 なぜ死体の弱点が火なのかといえば、死体が動くという邪に対して「火には浄めの力があるから」というマジカルな理由に加えてもう一つある。それは、力学的な攻撃ではないために対処されにくく、痛覚を失ったゾンビ兵のほとんどは自分の体が炭になっても火を放置してしまうという奴隷人形であるが故の弱点である。この弱点を上手く突くことで、ゾンビが魔法で定められたとおりに動きながら燃え上がって朽ち果てていくのを見ることができる(逆にその姿が面白いという事で敵の死体を燃やしながら馬鹿踊りさせるという、惨たらしいストレス発散法がかつての戦乱の中で流行したこともあった)。

 とどのつまりは、ゾンビ戦車に火がついたのである。死体というのは分泌を行わないのでカサカサで燃えにくいイメージが無いこともないが、むしろ水気の無いところに脂肪や腐敗部分が剥き出しになっていたりして非常によく燃える。馬車と肉汁の絶妙の比率によって火矢の一本一本の火が瞬く間に燃え広がった。『将を射んと欲せばまず馬を燃やせ』と俗に言うその通りの戦術である。しかし、積み荷が燃えてしまってもいいのだろうか。

 燃え上がる火炎は非常識なまでの速度でゾンビ戦車を侵食し、当然内側に居るククリ達の元まで迫りかけていた。このままでは(イゾウはともかくククリが)焼け死んでしまう。新技などという甘い夢をいきなり見出したイゾウが火事場に残されようとまあ仕方がない(それに、たぶん燃やしたぐらいでは死ぬまい)、という判断のもとにククリはゾンビ戦車の肉の窓から脱出を試みようと外へ身を乗り出して様子を窺った。その時既にゾンビ戦車の外部は火の海に近い状態で、バチバチと油汁の弾ける音が拍手のように響いていた。

しかし、胸から上にかけてをほんの一瞬窓から出した瞬間、ククリは異変に気が付いた。火花が眼に入りそうなほど近くを舞っているというのに、

「熱くない…… 燃えていない?」

現に目と鼻の先で炎が音を立てて燃えているように見えるが、ククリはその熱を不自然なほどに全く感じなかった。まるで炎のホログラムを見せられているようである。

「熱くない炎? ……ハッ!」

(幻術の炎! おびき出されたか)

 ククリはその異変に気が付くことまでは早かったが、それが意味するところのものを感じ取るまでがほんの一瞬足りなかった。まんまと罠に嵌った事に危険を感じて反射的に身を窓から中に引っ込めようとするも遅し、巧みにククリの隙を窺い潜んでいた射手の矢がククリの頭部を目がけて放たれ、避け損なったククリの左目から左耳にかけてを浅く抉り貫いた。ククリの左目を起点に赤い一文字が走った。

 ククリが断末魔のような悲鳴を噛み殺してその場に倒れ伏したその時、イゾウが瞑想に入ってから三分と一五秒が経過していた。

 次回予告


 ククリが左目をやられた! 魔法妨害を受けて勢いを失うゾンビ戦車、中には意識を失ったイゾウとククリだけ。まさに絶体絶命! しかし、そんな大ピンチに現れたのは……?

 次回『魔王の懐刀』第八十回、『釣鐘落とし』。来週も見てね!


↑みたいなノリの良い文章で本文も書けると気持ちがいいでしょうね

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