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魔王の懐刀  作者: 節兌見一
妖物たちの世界
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追跡

現在自分はとても忙しい状況下にありまして、中々このお話に必要なだけの時間を費やせないでいます。がんばりますけど、もしかしたら……

聖なる壁と呼ばれる火山地帯が有毒ガスを噴出し、悠然とそびえているために魔界と人間界が分断されていることは前にも述べた。未だこの山を越えた行軍は不可能に限りなく近く、周到に用意済ませた者でも安全に通過できるかは未知数である。

 だが、ベクトルとバグという規格外の魔物二人を相手にしてはその有毒ガスも世界を隔てる脅威としての地位を失ってしまうのであった。

 勇者一行追討に向かうベクトルとバグは、ベクトルが発明した小型防毒結界発生装置によって有毒ガスの瘴気が立ち込める危険地帯を涼しい顔をして通り抜けていく。

 今、彼らの表情が涼しいと述べたが、冷たいと言った方ががふさわしいかもしれない。彼らは敵討ちという名分によって動かされているのである。

 聖なる壁を越える行程のおおよそ半分を踏破した辺りである。ベクトルとバグは追討について話し始めた。

 『ところでバグさん。下手人の居場所は蟲でマーキングしたのですか?』

「いや、既に蟲は焼き払われてしまったようだが、匂いで分かる。奴らはここを6時間前に通過した、そんな匂いがする……。急ぐぞ」

 可能ならばベクトル達はバテレン達が人間界に逃げ切る前に始末をつけたかった。魔物は基本的に人間界の地理に疎い。人間界まで逃げ切られては追跡は困難なのである。

 歴史の中で何度も繰り返されてきた魔界と人間界の戦争の過程で互いの地理的な情報が大きなカードとなることは証明されているのである。地図など本来はそうやすやすと手に入るものではない。戦争において実地の計測を試みた者もいたが、それらの記録は古く、しかも正確ではない。

 この時魔界が保有していた最新版の人間界の地図はなんと、百三十年前にスパイによる偵察によって作られた『短冊人界図』という地図である。その名の通り短冊程度の縦長の範囲しか調査が達成できず、町一つ載っていない、すなわち聖なる壁付近の山と川の分布しか分からないという半端な地図である。

 それほど双方、特に人間界は地理情報に対して堅かったのである。

 ベクトルにとって不思議だったのは、バテレンと名乗った男がいかにして魔界の地理を知り、大師匠のことを知り、魔界に侵入したかということである。人間界から魔法によってかろうじて魔界に忍び込んだ斥候が多くいるのは知っていたが、彼らごときに幻覚作用のある植物や特殊な現象を引き起こす魔界の地理状況を把握できるわけはないのである。しかし、把握していなかったのならば奴らは大師匠のところにはたどりつけてはいないはずなのだ。推測の域を出ないが、魔界から裏切り者が出た可能性も考慮しなくてはならない。とにかく、敵は魔界の地理をどうにかして知っていたということは間違いはなかった。

 魔界のことをよく知る人間というのは決まって魔界にあだなす存在である。また、勇者がその代表格である。

 大師匠が殺されたという時点でもちろん大不幸なのであるが、ベクトルは、それをさらに上回るような不気味がこの先に待ち構えているような気がしてならなかったのである。

 「急ぐぞベクトル、この辺りで奴らは休憩していたらしい、匂いが一気に近くなった。戦闘の支度をしろ。」


 一方その頃、バテレンも追っ手の存在に気が付き、勇者に戦闘準備を命じていた。

 だがバテレンは、自分を追い討ちに来るだろうと予測される魔物を(先ほど戦ったバグも含めて)恐れてはいなかった。

「あのときの蟲じじいかな。勇者よ、今度は手加減せずに焼き払いなさい。」

「はい。」

 この場が歴史的顔合わせになることは後の者が見れば当然のことであるが、当事者達はそんなことも露知らずに各々、自分の殺しの準備を済ませるのであった。

 


 PIXIVでベクトルという名前の魔物が出てくる漫画を見かけました。タイトルもそれとなく似ていたのです。『魔王』というワードも入ってたし。

 どうせただの偶然でしょうけど、興奮しました。

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