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魔王の懐刀  作者: 節兌見一
妖物たちの世界
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閑話・大師匠とベクトル

 大師匠とバグにまつわるこの一件と後に勃発する『ククリ=奇奇怪怪事件』とは時間的にも状況的にも分けて語ることが出来ないものであるから、とりあえずベクトルのルーツと共に彼らの事を話しておく。

 結論から言ってしまえば大師匠との死別はベクトルにとって重要な出来事であったようで、後のバグをして、

「あの一件が間違いなく、魔王ベクトルを生んだ一番大きな要因である」

と言わしめた。

 あの遺言が大師匠との最初で最後の機会となってしまったイゾウにとっては、永遠に理解できない事である。と言うか読者にとってもそうだろう。

 まず、大師匠と出会う前のベクトルについてはなしをしよう。

 そもそも、ベクトルの生まれとは?

 代々魔王という役職に就くような強力な力を持つ魔物というのは有力魔族の家柄から出るもので、歴史を辿っても種族的に偏りの多い構成となっている。

 例えば、強力な魔力と肉体、そして不死性を持った『吸血鬼』の一族は、今までの五十五名の魔王のうち、およそ三分の一となる十六名を輩出している。

 『奇奇怪怪』と後に義兄弟の杯を交わすこととなる『大黒天』も吸血鬼の宗家の出身であるから、今もその勢力は衰えを知らずと言える。

 そんな種族的な要素の大きく現れる(『血の戦い』らしい)魔王『選定』であるが、ベクトルに限ってはどの種族においても正統とされない、悪く言えば『雑種』の生まれである。人間界では亜人と呼ばれる種族系統でもある。

 自身は気にもしなかったことだろうが、人間帝国との戦時中は種族に関する誹謗中傷が水面下を飛び回ることとなる。

 特に、人間の血が混ざっているということが保守的な者にとって格好の的になった。

 

 ベクトルは、生涯の最初の15年間を亜人として人間界で暮らしていた。もちろんここで一言に亜人と言っても種族血統的に他の種族との交わりを持っていたというだけであるから、種族的に劣るとか、そういうようなことがあるわけでは決してないのだが、どうにも雑種は劣等であるという迷信じみた差別意識が魔界にも人間界にもあったようである。魔界に住むものには人間界との交わりを、人間界のものには魔界との交わりを疎んじられ、非常に肩身の狭い思いをしていたようである。

 また、当時の人間界における亜人の扱いは使い魔よりも悪いほどであり、亜人差別というものが横行していたともいわれている。

 人間帝国に『バテレン』が現れたためだとベクトルは考えているようだが、その詳細は不明である。

 ベクトルの人間憎しの思想は、こうした亜人差別を温床として育まれていったのではないか。ベクトル様よほど人間の汚い部分に打ちひしがれ、自らに流れる寸分の人間の血すらも恨んだのかもしれない。

 ベクトルの人間廃滅への野望は、先の戦争で十分に示される。だが、ほんの少し運命が狂えばその矛先が魔界に向いたかもしれない。ベクトルは魔物であると同時に人間でもあり、魔界も所詮は排他的で残酷な集団に過ぎない。

 それはさておき、ベクトルの両親はエルフと亜人の夫婦で、亜人の父は大師匠様の弟子であった。恐らくバグと同期の弟子だった。

 そして、どうやらベクトルの父こそが今のイゾウを生みだした『異世界魔法』研究の第一人者であるというようなことをベクトルは後に口にする。

 魔界から異世界魔法を盗み出した人間帝国がその技術を本格的に軍事利用しようとした際に口にしたことで、その言葉がどのような意味を持っていたのかは、きっと誰にもわかるまい

 保守的で排他的な性質が人間と魔物に通底するように、自由奔放で世界の枠を飛び出すほどの開拓的な思考もまた、人間、魔物の双方に持ちうるものであり、たまたまそれについて深く考えさせられる境遇にあったのが、亜人やエルフのような中立の者共であった。

 大師匠様から受け継いだという可能性もあるが、ベクトルと父とは多少方向が違えど、亜人的なアンチ保守主義的立場にいたところが変わりないと想像してみれば、やはり、『異世界魔法』は彼ら親子のものだったのだろう。

 彼らは、人間と魔物の関係をどうにかして変えようとしていたものと思われる。

 とは言え、これ以上のことは誰にも知り得ない事であり、想像で補うしかないだろう。

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