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魔王の懐刀  作者: 節兌見一
魔界入門
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黒騎士殺すに新術要らぬ、奇奇怪怪に頼めばヨイヨイ

 ちょっと興味があって『小説になろう』の土壌というか、傾向を色々調べてみたらなんだかすごい世界が広がってるみたいでびっくりしました。

 テンプレとの飽くなき戦いというか、何というか。何も考えずに書いているのがこっぱずかしくなりました。

 ああいう議論の場で「訳わかんねえもん書きやがって!」とか、ちょっと言われてみたいですね。というか、そもそも感想が欲しいのです(ください)。

 あと、タグというものに『転生』と『異世界』を入れると読んでいただける可能性が上がるという魔法を教わったので使ってみました。

「奇の字、黒騎士野郎に幻術が効いてねえぞ!」

コントンはどこかに潜んでいる奇奇怪怪へと呼びかける。そう言えばそうだ。彼の幻術が効いているならばネクロは平衡感覚を失い、その上コントン達を認識することもできないだろうに。

「無駄だ。この黒魔導鎧はあらゆる術の効果を減殺する。幻術と最初から知れていればなおさらの事なのだ。意識を集中すれば幻など掻き消えてしまうのだ」

黒騎士ネクロは治り立てとは思えない体捌きで黒槍を構える。

「この前は見逃してやったが今度はそうもいかん。秘術の限りを尽くして向かってくるがいい」

ネクロは少々驕り気味にコントンを煽る。しかも、先手をコントンに強いている。

 コントンも馬鹿正直には乗らず、脱力気味に返した。

「気まぐれで生かしておいて、後で吠え面かくなよぉ」

コントンは以上の言葉と共に例の宝剣をどこからともなく三本取り出し、一度にネクロへと投げつけた。宝剣は高速回転しながら縦に重なって一直線にネクロへと向かう。

 今回は戦闘の描写の探究のため、実験的に少しネクロの脳内を覗いてみる。

(またその宝剣か、懲りない奴め。確かに破裂したり軌道を変えたりと驚かせてくれたが、その手はもう食わん。図るべき対処はこうだ。

(一)、大きめに避ける

 宝剣が弾けたとしても間近でなければ槍を高速回転せて振り払えるだろう。変わる軌道も距離を取れば脅威ではない。だが、距離を取っての安全策、攻撃に転じるには不都合がある。

(二)、手頃な死体(狗)を使役して盾にする

 ネクロ流死霊術ならば間一髪で狗公方殿の部下を使って宝剣を受け切れるだろう。そのまま戦力にすることもできるし、防御を死体に任せれば有利に攻撃を行う事ができる。ただ、狗をこちらで使役すると後の狗公方殿の術の差し障りになる可能性がある。何より、これは戦術的ではないが、尊敬すべき、誇り高き山の狗を弾除けのためだけに使うのは武人としての誇りが咎める。

(三)、最強の鎧を信じて防御姿勢を取る。

 黒騎士に代々伝わるこの魔導鎧は魔剣を弾き魔弾を防ぐ。破裂した宝剣の断片もタネが割れていればしっかりと防御できるはず。堅実な分小量のダメージは避けられないが……

 上の三つの行動一、二、三の内で最も、コントンが繰り出してくるであろう未知の術への対応に適しているか。うむ、やはり二が一番合理的だが今はまだその時ではない。狗夜叉の外道じみた行為を批難した後ではなおさらだ。ならば一か三だが、奇奇怪怪の幻術の影響も0ではない。ここは距離を取る。一だ!)

三本の宝剣がコントンからネクロまでの距離の三分の一を行ったかという所で、ネクロは真横に跳んだ。

「そう来ると思ってたぜ!」

コントンが念じると宝剣たちはネクロの方へと傾き、ブーメランのように軌道を変えて再びネクロに襲いかかる。思ったよりも追尾能力が高く、三本の宝剣はネクロを捉えつつあった。

「様子見なんてしけたことさせるかよ。そんな暇は与えねえ」

コントンが執拗に宝剣に念を込めると宝剣の速度は曲がりながら急加速し、ネクロの額には一瞬でどっと冷や汗が流れる。完全に見切りが甘かった。

 前回の戦いの観察からネクロは、コントンが戦いにおいて、一撃一撃の攻撃に対して威力や効果を度外視して(自分だけ)楽しくやれればいいやと適当に考える享楽的なタイプと高をくくっていた。宝剣は適当に投げていたし。だが、思ったよりも曲がる軌道、執拗な急加速攻撃、コントンの態度。一度勝った相手と油断していたのだ。これは、武人にはあるまじき驕りである。まあ、相手の初撃で悟れるだけまだましな方で、下手を打つとトップレベルの実力を持ちながらそれに気づかないまま生涯を終えるなんていう事もざらなのであるが。

(前回のようには行かないか。おのれの傲慢さを恥じよ。……仕方ない、ならば(三)だ)

 自身への戒めも込め、ネクロは宝剣を一旦受ける態勢を取った。だが、それこそコントンの願った展開であった。

「奇の字、頼む」

返事はない。だが、その代わりにネクロがそれに呼応するかのように呻き声をあげた。

「しまった!」

突如、宝剣が地面よりタケノコのように突きだしてネクロの左足を貫いたのである。彼の足を覆う黒騎士の鎧をも貫通している。恐るべき、非現実的な突きの威力であった。

 しかし、足に受けた傷に気を取られている暇はない。三本の宝剣が力強く飛行し既にネクロの目前にまで迫っている。

 ネクロは槍を構えて防御の構えを固めた。足を宝剣によって地面に釘付けされているのでこれ以上躱すわけにもいかない。気合を込めて、ネクロは自らの要所の守りを腕を使ってかばいながら固め、その態勢のままながら流麗に、槍の穂先を三本の宝剣へとぶち当てた。

 ネクロの予想通り宝剣は弾け飛んで粉々の破片になりながら襲いかかるが、被害は浅い切り傷が数か所という所である。

(いや、結果的には足を貫かれてしまった。重ね重ね不覚!)

 この時、ネクロは自身の足が貫かれていたのにも関わらず、足に痛みを感じていなかった。生死のやり取りを行う場において極度に緊張、興奮した生物は、脳からアドレナリンなどの物質を分泌して感じる痛みなどを減殺することがある。ネクロの場合もそうなのだろうか。実際彼にもそういう経験が無いでもない。

 だが、それでもネクロは奇妙に感じた。

(「あまり痛まない」のではなく「まるで痛みを感じない」じゃないか。何故だ?)

思わず宝剣を防御した時の集中を解き、ネクロは自ら貫かれた足の方へと視線を逸らした。そして、全てを理解したのである。

 左足に傷も、刺し貫いているはずの宝剣すらも、存在しなかった。刺された感触や、今は全く感じられない驚くべき痛みすら今この瞬間には夢幻のように感じられた。

「幻術か……」

 ネクロは、突如脾腹を襲う激痛に黒槍を手から取り落とした。

「その通り。黒騎士の装備に驕って油断したな」

と答えるのは、いつの間にかネクロの背後へと移動して宝剣をネクロの脾腹に突き入れるコントンである。その表情は喜々としていた。

「教えてやろう。奇の字、いや奇奇怪怪の幻術はお前の注意を完全に飛来する剣と足元に誘導し、ご丁寧にも俺の姿と気配を覆い隠してくれていたのだ。痛いだろう? 残念ながらこれは現実だぜ」

「グゥッ!」

コントンはネクロに突き刺した宝剣で傷口をぐりぐりとほじくった。

 さて、軽く解説するなば、今回のコントンの戦法はこのようなものであった。

一、宝剣を投げ、魔力によってその軌道をコントロールし、相手が立ち止まって防御せざるを得ない状況を作る。

二、奇奇怪怪へと合図し、幻術で相手の足を突如貫く宝剣を出現させ、相手の意表を突いた上に移動を封じ、尚且つ術者本体から注意を完全にそらさせる。

三、相手が宝剣の防御に気を取られている内に幻術によって気配をシャットアウトしてもらいながら近づき、鎧の合間から宝剣を突き刺す。

 単純であり、無駄が無い。与えられたゲームを最短ルートでクリアするような、こなれた知略である。

「まだまだ術の戦いについてこられないかぁ、ボウズ?」

前回と完全に立場は逆転した。ネクロは武人としては一級品であるが、術数に踊らされる結果となった。

 耐え切れず、ネクロは倒れた。コントンはそれに見向きもせず残りの、今や目も耳も鼻も幻に封じられて右往左往する狗共の生き残りを首狩りながら高笑いした。

「黒騎士の鎧は幻術を減殺する、か。はぁ、減殺するぅ? 馬鹿言え、減殺だろうがなんだろうが一瞬でも騙されたら終わりだろうがぁ、この間抜け! 幻術なめんなよ!」

ネクロには言い返す言葉もなかった。黒騎士装備の性能と過去の勝利に溺れた、と言っても過言ではない負け方である。自分は驕っていたと改心したつもりがそれすらも慢心であった。

 残りの進入者殲滅の作業を終えると、コントンはネクロの前に再び立った。コントンは口調を変えた。

「もしここで死んじまえばお前も洗脳されて奇奇怪怪の手下になる他ないが、もしここで俺たち山賊の仲間、いや、この俺に忠誠を誓おうってんなら生きたまま仲間にしてやらねえでもない。どうだ? 狗夜叉みてえに訳わかんなくなっちまうのは嫌だろう? え?」

 かつて自分がどこか惜しさを感じて見逃してしまったコントンが、今度はこのような形で迫ってくる。ネクロは複雑な気持ちながらも嫌悪感だけははっきりと感じていた。

 だから、これだけ言った。後の事は知らん。

「くそくらえ」

 普段理知的な態度のネクロが咄嗟に思いついた悪口であった。

「ああ、そうかい」

コントンは仕方なく、宝剣でネクロの首を刎ねた。


 だが、身もふたもない話であるが、この前、魔王軍時代にネクロがやった一発芸(バテレンのものまね)の話をしてしまった以上、ネクロの登場がここまでとあきらめる読者はたぶんいらっしゃらないだろう。未来の事をペラペラ書くのは止そうと思った今日この頃である。


次回予告

 兄弟仁義に夢幻の霧毒、公方と死鬼の一騎打ち、今度は死ねるか狗の夜叉!?

 次回『魔王の懐刀』第百九回、『走狗雷鳴剣対走狗疾風剣』


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