援軍
鉄鬼編を乗り切ったら本腰の展開へと入ることができるので、それまであともう少し、私めの試行錯誤にお付き合いいただきたく存じます。
今のうちに何かご意見をいただけましたら、新章までには改善を試みますので、どうか、何かお気づきになったことがあればご指摘ください。
鉄鬼はもはや諦めた。この男から裏を聞き出そうというのは無理なことだと考えた。
それと言うのも、魔界には刺客や密偵が捕縛されたときの対策として口封じの催眠術を用いる魔物がいるのである。ここまで耐えられてはもはやそれに違いない、とその線を疑い、やがて曲がりなりにも確信した。
何故すぐにそのことを疑わなかったかというと、その手の術は下っ端に用いるものだという常識があったからだ。
力を出してはいなかったとはいえ、一時は自分と対等に渡り合った相手がそんな術をかけられているような下っ端だったとは思いたくないという心理も働いただろう。
推測は見当違いではあったが、とにかく、鉄鬼は無駄にエネルギーを消費しないうちにイゾウを殺すことにした。
そんなことは簡単だ。動けないイゾウを、渾身の力で叩きつければいい。
本気の力に本気の拳を乗せれば、イゾウの体などは跡形もなく叩き潰せるという自信が鉄鬼にはあった。
「この報い、裏で手を引いていたものには嫌と言うほど味わせてやる。」
この時点で、早くもイゾウの第二の生の可能性は尽きたように思われた。
イゾウには、棚から牡丹餅、といった程度の第二の人生が終焉を迎えることに何の悲しみもなかった。
ただ、何もかもが『俄か』で終わってしまうことにいささかの苛立ちがあったのみだ。
「所詮は死ぬ間際の一時の夢か。夢の中でもとっつかまって死ぬとは、嫌な末路だ。」
何の抵抗もしようとしないイゾウが、鉄鬼は憎かった。
こんなにつまらない刺客に同胞が殺されたと思い返し、怒りを晴らす鉄槌を構えた。
「死ねぃ。あの世で同胞に二度殺されるがいい。」
対して、イゾウは鉄鬼にすら聞こえないような声で、誰に言う訳でもなく呟いた。予定上の最期の言葉だ。
「ふん、あの世とはここだ。一度死んだ身なら、何の未練があろうか。」
最初の毒死とは打って変わって潔いことこの上ない。
ここでこのまま死んでいても、それはそれでイゾウらしい最期ではあったかもしれない。
だが、そんな事態を許さない男が颯爽と現れた。
アクセス解析という機能をはじめて知りました。
沢山の方にご覧になっていただいていることがわかり、感謝のきわみでございます。これからも宜しくお願いします。がんばります。