部屋割り
彼なら薫の謎が分かるかも…マリアは母が倒れた事、
薫のお母さんが亡くなった事を話す。
もうすぐ部屋割りが決まり、王麗明のそばに居られなくなる。
「薫くんはメイクしてるよね?化粧品とか沢山持ってる?」と第一声聞かれた。
「ええ、私より詳しいし沢山持ってるわ。部屋のドレッサーは瓶だらけよ。」それが母が倒れたのと薫の母の死因とどう関係するのか?
「ずっとマリアから良い匂いしてるよね?
これは香水?」なんだか全然死因と関係ないような…マリアは混乱する。
「これは薫が私の足にマッサージオイル塗るからよ。
ほんと気色悪いの!」思い出すだけで寒気がする。
「へえ〜そのオイルって、薫が作ってるの?」麗明の口角が片方だけ上がる。
「エ〜ッ、そこまではしてないと思う。良い匂いの香油を掛け合わせてブレンドはしてるみたいだけど。」マリアは訳が分からず頭を傾げた。
「う〜ん、でも偶然はオカシイな。誰かの入れ知恵を感じる。
まあ、本人から聞くか。」王麗明が本当に嬉しそうだ。
「マリアに近付いて良かったよ。本当に良い話が聞けた。
…ありがとう。後は任せて…」そう言うとマリアの手を握った。
ひどく冷たい硬い手。
本当に死神なのでは?
支配人の宮本さんから部屋割りの発表が始まったので2人は離れた。
「翡翠宮は1階が大広間に食堂、キッチンとバーがございます。
お部屋は2階からとなっております。
まず佐原家の悦子様がお足が悪いので2階の東部屋3部屋を佐原家様でお使い下さい。
そして、西部屋4室は王家の皆様でお使い下さい。
そして3階の東部屋を大河様、西部屋を古舘様でお使い下さい。」と屋敷の見取り図に部屋割りを示したものを支配人が見せた。
子供達がどうせ走るので階下に響いても良いように配慮したのだろう。
「エ〜ッ、中国人一家と同じ階なの?煩そうねえ〜」悦子会長夫人が不満を口にする。
言葉が若干分かるのか?母親が悦子夫人を指さして中国語でまくし立てる。
麗明の顔は能面のようだ。
「まあまあ、3階では介助する恭子が大変だから〜」息子の茂政がとりなす。
「私では3階までは無理だわ。そうよ!息子のアナタがお母様をおんぶしたら良いのよ。
支配人さん、文句がある人が移動すれば良いのでは?」恭子が嫌みタップリに茂政を見る。
「ハア、年だけ食って口だけ一人前になったわね。
跡継ぎも産めないクセに!」悦子会長夫人が社長夫人の恭子を嘲笑う。
「それは…」と言いかけて社長夫人は口をつぐんだ。
「私が副社長に頼んで秘書室を社長室の手前に用意したから。好きな娘を選びなさい。
もう、こんなトウが立った石女は捨てて
若い娘と再婚なさい!」なんかスゴい修羅場が始まった。
能面だった王麗明が席を立ち、支配人のそばに行き囁く。
「では、各家の代表の方達で2.3階のお部屋を見て頂いて決めましょう。どうぞ、こちらへ。」佐原家は茂政、王家は麗明、古舘家は耕三、大河家はなぜか薫が支配人の後に付いて見に行った。
「流石だね。人に割り振られると文句を言う人が絶えない。自分達で選べば意見がまとまらない。
発言権の強い各代表に決めさせれば、1番短時間で解決する。」マリアの父は王麗明にベタ惚れのようだ。
結局、支配人が決めた部屋割りになった。
「フウ〜ッ」支配人が肩を落とす。
まだまだホテル管理の道のりは遠そうだ。
「スタッフは食事が終わり8時には自宅に戻ります。
バーテンダーだけ10時ですが、その後は皆様でお好きにお酒をお楽しみ下さい。
翌朝は6時に早番スタッフが参ります。
何かありましたら、私が常駐で1階の支配人室におります。お声掛け下さい。」各々ポーター役の男性スタッフが荷物を運ぶ。
が、佐原家と王家が口うるさいのでポーター4人はそっちにかかりっきりとなり、マリアや夏希達の荷物は放置されていた。
「なんだよ!全然教育行き届いてないな!」薫が文句を言いながら自分のキャリーだけ持って上がっていく。
マリアはとんでもなヒールの靴なのでキャリーを担いで階段を3階まで登れるか不安になる。
すると風のような速さで父とマリアのキャリーを両脇に抱えてヒロが階段を駆け上る。
「同じ3階ですね。よろしく!ヒロです!」オカルト倶楽部の少年だ。
「オイッ、ヒロ!アンタのカバンはどうすんのよ?」サキが怒鳴る。
「すぐ戻るから〜」と言ってる間に3階に消えたかと思うと、またズダダダと降りてきた。
「部屋の前にキャリーは置いときましたから〜」と階段の5段目から飛び降りてオカルト倶楽部の仲間の前に着地した。
「スゴイな!記事にそう言えばサッカーで大学推薦取ってる子が居ると書いてたな。彼か。」父とマリアは呆気に取られる。
マリアはビックリする。
マリアの学校は女子校なので、そんな動き方をする人間をまず見たことがなかった。力もだが、最後のフワリと空を飛んで仲間の場所まで5mくらい空を飛んでる姿に驚いた。
マリアがボーッとしてる内にオカルト倶楽部の一行は3階まで上がってしまった。
「ほんと、アンタは美女見ると走り出すね〜」
「もう本能だな。スゴイね〜」とからかわれている。
「男の子って、スゴイのね。」マリアが父と登りながら呟く。
「男が皆ああいう訳じゃないぞ。あの子がスゴイんだろ。気持ちの良い子だったなあ〜」父はスポーツ出来ないが会社ではプロバスケットリーグのスポンサーもやってる。
「ジョーダンのエアーウォークみたいだったな、最後のは。」父も感心していた。マリアは胸がドキドキした。