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翡翠宮  作者: たま
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白い牢獄

伊豆下田の駅から乗ったタクシーが別荘地に入り細い道を蛇行する。

「急にガタガタしだしたな。道の端の雑草も増えたし。手入れが行き届いてないな〜」父が小さく舌打ちする。

「この別荘も買ったの僕がまだ幼稚園だったから〜15年経ってるでしょ?

そりゃボロくなるよ。」マリアの隣で薫が運転手の横に座る父に話す。

「毎月維持管理のために大金取ってるんだ。ちゃんとして貰わないと困るな。」父は経営もやってるので厳しい。

「行政とは規模が分母が違うじゃん。たいたい200棟くらいだろ?それで、この道路もライフラインも全部維持管理なんて、元が間違ってる気がするけどなあ〜」薫は文系なので父の仕事の技術的な所は分からないが、金勘定はしっかりしてる。

別荘地の規模で考えたら、コストが合わないのだ。

観光会社もザル計算だったのだろう。

案の定、車が跳ねて止まる。

「どうしたのかね?」父がタクシーの運転手に聞く。

「どうも植物の根が道路の真ん中もぶち抜いて生えてきてるなぁ〜

こりゃ、大変だよ、お客さん。」地元のおじさんらしい人が、前の方を見ながら話す。

「この頃、異様に暑いからね〜ココらへんの植物もスッカリ南国みたいになって、マングローブを誰か持ち込んだみたいで地下茎がスゴイことになってる。

どうも前のタクシーも止まってるから、聞いてくるよ。」そう言うと前で止まってるタクシーにゆっくり歩いていった。

「なんでキビキビと動けないのかな?地方の人は?」いつも、家では朗らかな父だが働く人間には厳しい。

「なんくるないさーだよ。こんだけ暑いと下田も沖縄化するのさ。カッカすると血圧上がるよ、父さん。」薫が父の肩に手を置きながら話す。

父はAIに関しては全くチンプンカンプンな薫だが、柔軟で口八丁手八丁(くちはっちょうてはっちょう)な後継者、薫を評価してる。

自分は理系なので、人間には疎い所があるのを知ってる。今も会社で技術部門にばかり居座って、経理や経営は部下に任せっきりだ。

なので薫に早くそこら辺を任せたいのだ。

なんだかんだと仲の良い親子だ。

その様子を見ながら、マリアは1人絶望してる。

父も母も跡取りとして薫に期待してる。

私が薫の秘密を話しても、無かったことにされるだろう。お手伝いさんも口裏合わせて、マリアが妄想癖のある変わった子扱いされるだけだ。

今も父の肩に手を置きながら、片手でマリアの足を撫でている。

気持ち悪くて吐きそうだ。

何とか扉に寄って遠ざかろうとしてるが、手がぬっーと伸びて膝丈ワンピースから出てる部分から手を離さない。

異母兄弟なのに、一体どういう感覚をしているのだろう?

自分が大好きなのは分かる。

部屋には鏡が10枚近くある。化粧品もズラッと並んでる。マリアより確実に多い!

知らない海外の高い化粧品もあるようだ。

同居するなりムダ毛を処理してない事を咎められた。

今では知らない内に手足のムダ毛は処理され、なんならアンダーヘアーまで剃られてる。

顔のムダ毛もいつの間にか処理されている。

服も薫が用意したものしか着れない。

マリアが持って来た服は、洗濯に出すとことごとく失くなるのだ。

お手伝いさんは、悪びれもせず失くしたとのたまう。

ワンピースは長い物はない。

マリアはジーパン派で、ワンピースならロングしか着たことなかったのに。薫が用意する白いワンピースは

全て短い。長くても膝丈までだ。

靴はヒールの高いものばかり。ルブタンかディオールのパステルかキラキラばかりで歩くのも大変だ。

母が愛人だった時は、家族で祖母や叔母とジーパンとスニーカーで世界中歩き回ったのに…あの頃が懐かしい。

つい去年までの事だ。

こんな大きなリボンを頭につけて…ちんどん屋か?

バービー人形のような姿で薫に足を撫でられている。

「ハア〜きしょ!」思わず扉のガラス窓で悪態をつく。

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