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覇軍の、序曲(4)

 カリフォルニアの空で二つの影が交差する。一つは紅、一つは漆黒。共に音より早く舞い、無秩序な機動で衝突を繰り返す。

 紅はレーヴァテイン=オルフェウス。外套の隙間よりライフルを突き出し、追跡してくるもう一機を狙い撃つ。

 漆黒はロンギヌス=イザナギ。あらゆる攻撃を弾き飛ばし、ただ真っ直ぐにレーヴァテインを追う。回避も防御も不要。その挙動に一点の曇りすらなし。


「攻撃が効いてない!? そんな、どうして――!」


「あれに乗ってるのがオリカ・スティングレイだからに決まってるだろ!」


 戸惑うアイリスに叫び返すリイド。漆黒の怪物は手にした太刀より歪な光を放ち、斬撃を放つ。一閃は海を割り空を断ち彼方の大地を吹き飛ばして余りある。

 そう、目の前のこれは世界最強。同じアーティフェクタであるレーヴァテインとロンギヌス、この二機の性能は同等。本来は拮抗している。しかし今は事情が異なっている。

 ロンギヌスは異世界の王であるリフィル・レンブラムの力で以前とは比べ物にならない程の性能を与えられた。搭載したリアライズシステムの子機はユグドラシルに接続された本体より無尽蔵のエネルギーを確保、性能を限界まで引き出そうとしている。

 何よりもこれには最強のパイロットであるオリカ・スティングレイが乗り込んでいる。邪魔な意識を取り払われ、剥き出しの自我でロンギヌスと同化している今の彼女は人間と言う枠と軽く超越していた。

 ただ歩いているだけでも最強と呼べる異常者なのだ。更に常軌を逸して狂気を得たのなら、最強を超える無敵。たった一機で世界を壊せるアーティフェクタという存在をここまでストレートに表現できる者は他にはいないだろう。


「装甲の頑丈さは干渉者の意志力に依存する……! オリカの意志に一寸の乱れすらあるものかよ!」


「オリカさん……どうして……!」


 逆に今のアイリスは多くの迷いを抱えている。自分自身に対する疑念、オリカに対する戸惑い……。それらは確実にオルフェウスの性能に影響を及ぼしている。

 己に対する迷いは守りに。敵に対する迷いは攻撃に。だが、それはアイリスに限った話ではない。人間ならば誰でも心に抱える物なのだ。

 元々オリカには迷いと呼べる物が極端に少なかった。しかし今は完全に自我を喪失している為、迷いはゼロに等しい。本来愛すべき、守るべき存在であるリイド・レンブラムに刃を向けている以上、それは疑いようもない事実だ。


「もっと戦いに集中しろ、アイリス! ゴチャゴチャ考えていて勝てる相手じゃないぞ!」


「でも……だって!」


 眉を潜めながら叫ぶアイリス。そこへ加速したロンギヌスが迫る。闇の斬撃を放ち、即座にレーヴァテインの背後へ。光を目くらましに利用し、その背中を蹴り飛ばした。

 正面から迫る光に自ら突っ込んでしまうレーヴァテイン。激しい衝撃に外套が引き裂かれ、装甲に巨大な亀裂が走る。


「く……うぅううっ!」


 激痛に身悶えるアイリス。リイドは舌打ちしながら失墜する姿勢を制御、片手で水面を薙ぎながら回転、オルフェウスを直立させながら後退する。

 雄叫びを上げ、落下してくるロンギヌス。武装がイザナギである以上、武装は刀のみ。遠距離攻撃は必然、フォゾンを纏った光波斬に限られる。


「そっちの攻撃手段とパターンは読めてんだよ! 伊達にオリカとシンクロしてるわけじゃない!」


 連続で放たれる光の雨を舞うように回避するリイド。爆発と共に空に舞い上がる海水はまるで海をひっくりかえしたようで、空と海の狭間に飛沫の滝が出来上がった。

 オルフェウスの回避性能は低い。一点突破の攻撃力に全ての性能を偏らせたオルフェウスにとって、インファイトは絶対に避けなければならない物だ。防御能力も高いとはお世辞にも言えず、補う為のマントも今や役に立たない。

 だが、それでもリイドはオルフェウスを飛ばしていた。オリカは無敵の干渉者であるが、リイドもまた絶対の適合者。光速の挙動その全てを掌握し、自らの手足のように……否、それ以上に操る事が可能。


「いいかアイリス、よく聞け! 今は何とか逃げられてるが、このままだと時間の問題だ! ボクたちは何としてもあれを撃破するしかない!」


「しかし、乗っているのはオリカさんなんですよ!?」


「それがどうした!? だからこそ、ボク達はあれを倒さなきゃならないんだろうが!」


 オリカという少女が正気を保っているのなら、敵に回る事なんてありえない。

 いつだってそうだった。彼女は天地がひっくり返ったとしても、人生を繰り返したとしても変わらない。ただただ、リイド・レンブラムの味方であり続ける。

 この世界がどんな風に変わっても、それだけは変わらない。誰もが時間と共に心を入れ替えても、その願いだけは手放さない。


「ボクは頭に来てる。奴らはオリカを無理矢理操って戦わせてるんだ。方法はわからないが、間違いない」


「だったら尚更、戦闘を回避する方法を……!」


「考えて直ぐに導き出せるのか、この状況で! 今の僕達がすべき事は考える事じゃない。オリカを止める事だ!」


 距離を詰め、太刀を振るうイザナギ。その攻撃をかわし、時にはライフルの銃身で逸らしながら飛翔を続ける。


「もしかしたらオリカを殺してしまうかもしれない。だけどこのままじゃこっちが殺されるだけだ。なら、どちらも助かる為に賭けに出るしかないだろ!」


「賭け……?」


「ロンギヌスを戦闘不能に追い込み、奴のコックピットからオリカを奪い取る! 失敗すればボクらかオリカのどちらかが死ぬが、成功すれば両方助かる!」


 鋭く漆黒を睨むリイド。背後からその凛々しい背中をアイリスは呆然と眺めていた。


「全員助からないなら意味ないだろ? 誰か一人でも泣くならハッピーエンドじゃないだろ? だったら可能性がどんなに低くても構わない。ボクは全員助かる道を選ぶ。あいつを諦める為にじゃない。あいつを救う為に戦うんだよ、アイリスッ!」


 その言葉は少なからず胸を打った。瞼を閉じたのは一瞬の更に刹那。心を整えるのに要した時間はその何分の一か。

 人間が選べる道は決して多くない。目の前に提示された条件はいつだって困難で、その中のどれが正解なのか、あるいはそれ以外のどこかに正解があるのか、考えている余裕はない。だから迷ってしまう。足を止めてしまう。後悔する事を恐れてしまう。だが――。


「……不思議ですね。何の根拠もないのに、貴方の言葉を聞いていると……出来るような気がしてくる」


 後悔を恐れた結果に後悔するのでは、全てが本末転倒。迷い考え慎重に未来を選ぶ事は勿論重要だ。しかし――。


「わかりました。助けましょう、オリカさんを。貴方のその賭けに私も乗ります!」


「根拠ならあるさ。勝ち目も十二分にある。オリカは操られていたってオリカだ。だからボクらの声はきっと届く。届かないのなら、聞こえるまで叫び続けるだけだ!」


 瞳を輝かせるオルフェウス。全身から赤い光が迸り、無数の半透明な壁が纏わり着くイザナギを彼方へ弾き飛ばした。

 海面を滑るように吹っ飛ぶイザナギ。オルフェウスは胸部の装甲を展開し、眩い光を放つ。地上に現れた太陽の中心、黒いシルエットとなったオルフェウスが揺れる。


「「 歌えよオケアノス、ハデスよ眠り給え――! 我は嘆き奏で、跪く者なり! 省みよ……! さすれば汝、永久の別れを得ん――! 」」


 目を瞑り、心の中に線を描く。境界線を越え、心を一つに重ねる。その瞬間アイリスは目を見開いた。

 レーヴァテインという器の奥深くに手を伸ばす。今ならば分る。この機体が持つ本当の力、本当の姿が――。


「これが……オルフェウス……? でも、これは……」


 光の中でうねり、形状を変化させる装甲。レーヴァテインの後頭部から伸びた髪の様な光が更に勢いを増し、雄叫びと共に片腕を振るう。

 轟音と共に光が爆ぜた。舞い上がった海水が豪雨となって降り注いだ後、光を弾いてその機体は姿を現した。

 その紅は極限まで研ぎ澄まされ、鮮やかな虹の光を表面に纏う。それはオルフェウスであり、しかしオルフェウスではない。


「アナザーオーバードライブ……」


 ぽつりと呟くアイリス。だがこれは、どこから引き出された力だ? 何を前提にして成立した力なのだ?

 思考が疑問に触れた瞬間、頭の中を夥しい記憶が掻き乱す。数え切れない言葉、数多の感情。激しすぎる奔流の中、アイリスはそっと瞳を開く。


「違う……これが、本当の私。本当の……オルフェウス……」


 顔を片手で覆い、静かに息を着く。アナザーオーバードライブという無茶をしている割に、思考も感覚も全てがクリアだった。


「この機体……良く分らないけど、行ける! こいつなら、オリカともやりあえる!」


 再び飛来するイザナギ。獰猛な雄叫びを上げながら前進する姿に片手を翳し、オルフェウスは瞳を輝かせる。

 海中より出現したのは無数の光の剣であった。イザナギの全身に突き刺さり、上空へと引き上げていく。

 両腕を広げ舞い上がるオルフェウス。その周辺に光の剣が出現し、織り重なり翼を成す。虚空より美しい装飾の長銃を引きずり出し、片手で回してイザナギへと構えた。


「……この力で、オリカさん……貴女を救ってみせる。もう、貴女を……貴女を愛する人を、悲しませたりはしない!」


 不思議と涙が溢れ出した。オリカが辿る無数の悲劇の形、それらが今はなんとなく掴める。だからこそ、それを踏破する事も可能となる。


「行きましょう、先輩! 私はこの力で……悲しみを撃ち抜いてみせる!」


「上出来だアイリス! それでこそボクのパートナー! オリカの最強伝説も、今日ここで終わらせる!」


 飛翔するオルフェウス。イザナギは黒い光を放ち拘束を解除。胸より新たに巨大な太刀を引き出し、迎撃に乗り出すのであった。




覇軍の、序曲(4)




 大量の海水を瀑布の如く撒き散らし、トライデントは吶喊する。目的地などありはしない。ただ眼前には敵で構築された巨大な戦線が待ち受ける。


「ハッ! これだけの数の神話級を良くも集めたもんだぜ!」


「奴等は月のユグドラシルへの道を開いたんだ。最早その戦力は無制限と言っても過言ではないだろうね」


 眉を潜めるセト。ユグドラシルは異世界と通じる門だ。神を従える能力を持つ物がそれを掌握するという事は、要するにこういう事なのだ。

 平行世界から際限なく神を召喚する事が可能になれば、その戦力は文字通り無限。数多広がる枝葉の様な世界の全てを焼き尽くす程の力でなければ、その全てを屠るのは不可能だ。


「分かっているのなら話は早い。さっさと絶望し諦めたらどうだ? 未完成の実験動物風情が」


 声は頭上から聞こえた。空に浮かぶアーティフェクタ、“トランペッター”である。人間の上半身と管楽器の様な下半身を持つ異形のアーティフェクタ、そのコックピットでソルトア・リヴォークが笑う。


「トランペッター……乗っているのは誰だ? 僕たちの知らない適合者みたいだけど」


「知った事かよ! 誰が相手だろうがぶっ潰すのみだ! 雑魚が雁首揃えて並びやがって……身の程を弁えやがれェッ!!」


 目を瞑るセト。ネフティスは対照的に感情をこめた瞳を見開き、頬を吊り上げるようにして笑う。

 冷静と情熱の両極端さが二人の力だ。荒々しい海のように猛るネフティスの心の強さ、それを的確に制御し乗りこなす。それがセトの持つ能力の全てだ。


「今回ばかりは僕も同感だ。あの類のアーティフェクタは存在しちゃいけない。これ以上、僕らと同じ悲劇を繰り返さない為に」


 周囲に従えたフォゾンを爆発させる。海水を巻き上げながら装甲を展開し、両肩に巨大な柱を出現させる。先端部に収束した小さな交点を空に放ち、陣を穿つ。

 爆ぜる炎は空を焼き尽くす。光に飲み込まれ次々に消滅する天使、しかしトランペッターは神々を壁に使い未だ健在であった。


「お前達の力は全て把握している。そして僕はその能力全てに対策を用意してある。お前達実験体は確かに厄介な敵だったが、所詮は消耗品……。造物主に敵う道理もなし」


「ご高説どうも! 悦に浸ってんじゃねえぞ、ナルシス野郎!」


 片腕を振るうトライデント。海中から夥しい数の柱がせり上がり、回転しながら光を帯びる。それらは主の号令で一斉に飛翔、神々の軍勢を貫き爆発していく。


「いっくら数を揃えようともなァ! 圧倒的な実力差は覆らねェんだよ! そんな程度で天と地が埋まるっつーなら、誰も苦労はしねェ!」


「確かに。アーティフェクタに勝利出来るのはアーティフェクタのみ……それも勿論知っているさ。もう一度告げるぞ。僕はお前達に勝利する術を用意してある、と」


 コックピットで優雅に足を組んだまま指を鳴らすソルトア。すると空の彼方より光が走る。トランペッター程ではないが、それもやはり異形。緑の光を帯びたアーティフェクタ、クサナギである。


「久しぶりだな、セト……ネフティス。会いたかったぜ……ハハハハッ!!」


「野郎……クサナギだと!?」


「いや、あれはリイド・レンブラムが確かに消滅させたはず……あの状態から復帰出来る筈が……」


 戸惑いを隠せない二人。そこへクサナギは片腕を伸ばし襲い掛かる。


「実際に居るんだからしょうがねーだろ? 目の前の現実を認めろよ。ルクレツィアはどこだ? 同窓会でも開こうぜ!」


 トライデントの砲撃を掻い潜り掴みかかるクサナギ。トライデントの頭部を掴んだ腕を縮ませると同時に本体を手繰り寄せ、強烈な蹴りをかます。

 すかさず吹っ飛ぶ巨体を追うクサナギ。左右の腕を伸ばしながらその先端に光の剣を展開、回転しながらトライデントを滅多打ちにする。


「相変わらず格闘戦のセンスはずば抜けているね、彼は……」


「トライデントの防御力ならそうそうダメージは受けねェが、重くて反撃の余地がねェ。ジリ貧になるぞ、セト!」


 高速で海面を疾走するクサナギ。隠し腕を展開し、四つの腕を射出し槍のようにトライデントの装甲に食いつく。


「前よりかなーり調子いいぜ! リフィルには感謝しなくちゃならねえなあ!」


 声高らかに笑い、舞い踊るキリデラ。猛攻でトライデントを突き放すと、すぐさま頭上のトランペッターが号令を下す。


「受けろ。これが神の力だ」


 横一列にずらりと並んだ同じ形状の神々。それらが口を開き、光を収束させる。


「サマエル・ルヴェールの名を代行し命じる……滅びよ!」


 両腕を振るうトランペッター。神々は一斉に光を放ち、海面を爆発させる。その光は一瞬でトライデントを飲み込んだ。


「知れ! お前達が何に戦いを挑んだのかを! そして痴れ! その無恥厚顔さを!」


 神々は休まず一斉砲撃を続ける。その後方、合図と共にマステマ隊がミサイルを発射。フォゾン弾頭が次々に爆ぜ、虹色の光を撒き散らす。


「この世界は我らが主の御手にある! 世界に蔓延る蛆虫共め……! 滅べ! 消えよ! その姿跡形も無く、神の怒りの前に消滅するのだ!」


 さながら気分は大音楽団の指揮者。尤もそれは彼の力ではなく、彼に与えられた彼女の力なのだが。

 別段それは問題ではない。彼女の力をこうして代行できる、それがソルトアにとっての至福であり、この上ない快楽そのものなのだから。


「僕は神の代行者だ! これより一斉掃除を始める! 貴様らはのた打ち回る暇さえ与えられぬまま死ね、それが唯一無二の権利だ! 世界を浄化し、支配する! 貴様らの様な不純物! 汚濁! 下劣な悪漢は全て死するさだめよ!」


 フォゾンの光に汚染された海を見下ろし恍惚の表情を浮かべるソルトア。その傍に舞い上がり、クサナギは腰に手をあて静止する。


「おいソルトア、俺はレーヴァテインとやりてえんだ。こいつらはお前だけで何とかなりそうだから、俺は向こう行っていいか?」


「ああ。わざわざお前を用意しておいたが、僕の杞憂だったようだ。あんな虫けら風情、僕一人で十分……」


「おい、勝手に終わらせてんじゃねェよ……変態野郎」


 光の中から投擲された槍が迫る。キリデラが咄嗟にそれを蹴り返すと、蒸気の中からトライデントが姿を現した。


「あれだけの攻撃を受けてまだ健在か……余程長く苦しむのが好みらしい」


「君達のように力を傲慢に使う者達を野放しにするわけにはいかない。僕らは本来この世界に存在してはいけない物なんだ」


 舞い上がり翼を広げるトライデント。セトは小さく息を吐き、目の前の敵を睨む。


「アーティフェクタの力はあまりにも強すぎる。この世界には過剰なんだよ。だからその力を無闇にふるってはいけない。そんなものは適合者の基礎の基礎だ」


「それがどうした」


「わかんねェ奴だな。セトは今までずっと手加減してたって言ってんだよ」


 呆れたようなネフティスの声。キリデラはにやりと笑みを浮かべる。


「俺は向こうに行くぜ。ソルトア、後は頼まぁ」


「何……?」


 一瞬で飛び去るクサナギ。残されたトライデントは瞳を輝かせ、周囲を汚染していたフォゾンの光を吸い込み始める。


「僕はこの力が大嫌いだ。だからこの力が好きで好きでたまらないらしい君達が羨ましいよ」


 冷静な――しかし劣情をこめた瞳。感情を制御する事を諦め、セトはトライデントという巨大な暴力装置の本質を解き放つ。

 両肩から生えていた巨砲を左右の腕に掴み、左右に突き出す。その姿勢のまま吸い込んだ光を収束させ、左右に放出した。

 光の柱が空を穿つ。セトはそのまま回転し、周囲を薙ぎ払った。神々の隊が一気に燃え上がり、黒コゲの残骸が海へ零れていく。


「相手になってやる、トランペッター。神の力だかなんだかしらないが、それを殺すのがアーティフェクタだろう?」


「ほざけ雑兵! 思い知れ、神の力を! この世界を……否、全ての世界を統べる、魔王の力を!」


 夥しい数の神々がトライデントへと襲い掛かる。セトとネフティスはこれらを次々に撃破、一歩も引かぬ戦いを展開する。その様を遠く離れたヴァルハラでリフィルが観察している。


「さてと……そろそろ私もウォーミングアップを始めようかしらね」


 ロングコートの裾を翻し本部を後にする。髪を揺らしながら廊下を進み、辿り着いたのは本部のアーティフェクタハンガー。そこには見慣れない機体が鎮座していた。


「――目覚めなさい、オーディン。ウサ晴らしの時間よ」


 起動する巨大な人型兵器。俗に言われるアーティフェクタという存在の中でも、それは特にレーヴァテインに酷似していた。

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またいつものやつです。
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