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エリアボス

 足元から湧いてくるゾンビを倒すのに集中すると、ボスの攻撃を避けきれない。


 距離を取りながら戦っているが、ゾンビは一向に減らない。


 「無限湧きするタイプか、なら……」


 VRゲーム「ワールド・アーカイブ」は英雄や神々、天使・悪魔などになりきって戦うゲームだ。プレイヤーはそれぞれ、なりきるキャラクターが記録されているアーカイブをセットしている。


 そのアーカイブには記録されてるキャラクター達に合わせた必殺技がある。音声認識に対応しており、必殺技の技名を叫ぶと誘導線がゴーグルに現れる。


 その線に沿ってモーションを合わせる事で必殺技が発動する仕組みになっている。そして、俺のアーカイブには騎士王(アーサー)が記録されている。


 「煌めけ! エクスカリバー!!」


 騎士王(アーサー)の必殺技・エクスカリバーは威力を高めた上で、剣撃に5mの範囲攻撃を持たせる効果がある。


 ゴーグルに映る誘導線にモーションを合わせてゾンビを薙ぎ払っていく。


 エクスカリバーの効果時間が切れる前にボスに近づき、時間切れになるまで切り続けた。ボスのHPバーが1割ほど削れた。


 他のプレイヤーも必殺技を使ったのか、技名を叫ぶ声が聞こえる。必殺技がボスに当たるとガンガンHPバーが削れていく。


 どうやら、無限湧きするゾンビによる手数で攻めるタイプで本体の防御力は低めに設定されている様だ。


 「残り1割ほどか」


 大きく息を吐いて集中力を高めると、もう一つの必殺技を叫ぶ。


 「宝剣・カリバーン!!」


 手に持った剣が強く光り、刀身が大きくなる。ゾンビを含めたアンデット系に高い威力を発揮する大技だ。


 誘導線に合わせて剣を振り抜くと、大きな音と共にボスが両断される。今の一撃で倒したのでリザルトが出た。


 エリアボス・海賊船長のゾンビ 討伐

 ・ダメージ数 3,560

 ・攻撃回数  16

 ・経験値   2,370

 ・ラストアタックボーナス ×0.3

 ・レベルアップ 41→42


 「よし、ボーナスゲットだ! レベルも上がったし、今日は調子いいな!」


 ボスが倒されると集まっていたプレイヤー達が散っていく。他のエリアを探索するためだ。


 俺も探索しながら移動していると、また咆哮が聞こえた。


 「また誰ががボスに挑んだな。けど、リキャストがまだだからパスだな」


 必殺技にはリキャストタイムが設定されていて、威力の高い技や特別な技などは連発ができない様になっている。


 エクスカリバーはリキャストが終わってるから使えるが、カリバーンはまだ終わってない。ボスに挑むならカリバーンは使える方が良い。


 「次はこっちに行ってみるか」


 他のプレイヤーが素通りした店舗の間を通る通路に入ってみる。通路は駐車場へ続いていた。


 「駐車場か、車が無いと寂れた感じが強まるな」


 その駐車場は、スタッフや運営の車すら止まっていないので、広大な空間が広がっていた。


 駐車場の所々にエネミーが確認出来るが、建物の中にいた奴と同じなのでスルーして駐車場内を探索する。


 「特に何もないな」


 そう思って駐車場の端に来ると、ゲームエリアを仕切る壁が見える。この壁を越えると失格になるし、ゴーグルに映った映像も途切れて現実に引き戻される。


 俺が立っている位置と壁とでは10mほど離れており、間を埋める様に池のエフェクトがかかっている。近づいて水に手を入れると水面が波打つが水を触っている感覚はない。


 駐車場の探索を終えて建物内に戻ろうとした時、サイレンの様な音が鳴り響いた。ゴーグルには〈緊急クエスト〉と出ている。


 「マジか!? 今日は俺が主役の日みたいだな!」


 〈緊急クエスト〉は、突発的に起こるボス戦だ。発生条件があるものから、ランダムなものまで多くのクエストが用意されている。


 いま発生したクエストがどちらかは分からないが大きなチャンスを掴んでいるのは確かだ。


 〈緊急クエスト〉のボスは他のボスより強いが報酬も良い。


 池から半魚人のエネミーが大量に現れる。ゴーグルには〈緊急クエスト・サハギンを殲滅せよ!〉と出ている。これは、出現するエネミーをひたすら倒していくタイプで討伐数に応じて報酬が割り当てられる。


 「これならカリバーンを使わずに済む」


 駐車場にいた数少ないプレイヤー達が走ってくるのが見える。しかし、広範囲に散っているので集まるのに時間がかかる。


 「今の内に討伐数を稼がせて貰う、エクスカリバー!」


 エクスカリバーを発動させて、湧き出るサハギンを切り伏せる。そうしていると、プレイヤーが集まってきた。


 他のプレイヤー達も必殺技を繰り出してサハギン達を倒していく。クエスト発生から5分が経過すると、サハギンの数が一気に増えた。


 「これは報酬に期待できるな!」


 サハギンの群れに紛れて剣を振るうと、討伐数のカウントがどんどん増えていく。だが、自身のHPも無視出来ないほど減ってきている。


 「一旦離れるか」


 サハギンの群れの中心部から離れてHPの回復を試みる。


 「ポーションを2個使う」


 俺の声に反応してアイテムボックスからポーションが2個消費されると、HPが満タンまで回復した。


 回復が終わったので群れの中心部に戻ろうかと思った時、正面から赤いサハギンが突進してきた。突進を交わすと、赤いサハギンは方向を変えてまた突進してきた。


 「どうやら、レアエネミーみたいだな」


 今度は接近したタイミングで手に持った槍を振り下ろした。槍を交わして剣を振るうと避けられた。そのまま剣vs槍の戦いに発展する。


 相手の槍を避けて剣を振るうが当たる気配がない。しかし、魔法を使ってこない事から接近戦タイプと見当をつける。


 「普通に剣を振っても当たらないか。なら、これはどうだ!? エクスカリバー!」


 リキャストタイムが終わったエクスカリバーを発動させて、赤いサハギンに向かって斬りかかった。赤いサハギンは避けようとしたが、避けきれずにエクスカリバーに切られてた。


 赤いサハギンが消えると、討伐数が10上がった。


 「通常のサハギン10体分ってことか」


 周りを見回してみると、他のプレイヤーの何人かは赤いサハギンと戦っていた。通常のサハギンと赤いサハギンの割合からして出現率は悪くないように思う。


 「サハギンを倒して、リキャストが回ったら赤い奴にいくか」


 クエストでの方針を決めて、再び群れの中心部に突撃する。攻略法が分かれば案外簡単に倒せた。


 クエスト発生から15分が経過するとサハギンは出なくなった。クエストが終わったようでリザルトがゴーグルに映し出される。


 〈緊急クエスト・サハギンを殲滅せよ!〉 完了

 ・討伐数   131

 ・経験値   3,497

 ・クエスト発見ボーナス ×0.2

 ・最高討伐数ボーナス  ×0.2


 成功報酬

 ・回転寿司たかくら お食事券5,000円分


 「おっしゃ! 寿司だー!!」

 

 〈緊急クエスト〉の報酬は中身が大当たり確定と聞いていたが、食事券5,000円分が出るとは思ってなかった。


 これがあるから、このゲームはやめられない。一部のプロゲーマーは「ワールド・アーカイブ」のクーポンだけで生活している人もいると聞く。


 スポンサーも大企業が多く付いているからサービス終了の心配もない。


 俺は意気揚々とモール内に戻ると、既に人はいなかった。駐車場で〈緊急クエスト〉をしている間に先に進んだようだ。


 「競争じゃないし、気ままにやるか」


 そう思って探索しながら歩いていると、女性の悲鳴が聞こえた。その後に男性の叫び声も聞こえる。


 声のした方に走ってみると、プレイヤー同士で噛み合っていた。プレイヤー同士のトラブルはルール違反のはずだ。近くにいたプレイヤーに状況を聞くことにした。

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