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3/6

特技の発揮

「チュートリアルならもっとこう……なんかあるでしょ!」



「うぅ〜……掠ったら即死……掠ったら即死……」



そんな私達の嘆きを他所に、マーダーベアは猛スピードで接近してくる。これは所謂負けイベントなのだろう。


しかし、何もせずリッカもあの熊の餌食になるのは気に入らない。特に私の視界にチュートリアルの表示は何故か出てないが、好きにやれとでも言うのか。


私は自身にバフをかけるために、さっき選択したスキルを全て発動させる。



「《戦士の構え》《加速》《強打》!」



「わたしは……ごめん、最初の一撃は任せるよ!」



私のHPバーの横に複数の小さいアイコンが出ると同時にリッカを一瞬見ると、指で宙に何かを描いていた。



「Guaaaaaa!!」



「来いっ!」



マーダーベアは私に向かって来ている、私も攻撃が当たれば良くて瀕死だろう。しかし私はその場から動かず、拳を構える。


そしてマーダーベアがスピードを落とさず、その剛腕を振り下ろそうとしたその瞬間に私は目を見開き、腰を少し落とす。


集中し、短く呼吸を整えると全ての動きがゆっくりに見える。でも、私は一瞬だけその感覚の中で()()()()()


その結果……。




「っらぁぁぁああ!!」



「Guooaaaa?!?!」



攻撃が当たるほんの直前に私の拳はマーダーベアの土手っ腹に直撃し、大きく仰け反った。加えてその隙を逃さずリッカの魔法が襲う。



「《マッドショット》! カウンター最強の腕は衰えてないね、ありがとう!」



「《強打》!」



泥の散弾が複数発射され、私も追撃で強打を発動させた蹴りを行う。強打は足にも適用され、しっかりとダメージを与えた。


そう、私はほんの数秒間の間、集中することで全ての動きをゆっくりと感じれて、その中で一瞬だけ早く動くことが出来る。


この特技と言って良いかはさておき、これのおかげで強力なカウンターが可能なのだ。無事に出来たことに安心していると、光球の声が聞こえる。



『特定の条件を満たしたのでマーダーベアの一部情報を開示します。マーダーベアは強打などによる怯みに対して弱く、怯みが発生している間は攻撃が通りやすくなります。また、撃退に成功した場合は称号と1万Gが獲得出来ます』



「そう言うことは早く言ってよ〜!」



「本当にね!」



割とこのゲームは不親切なんじゃなかろうか、そんな感想を抑えながらマーダーベアを見る。実はさっきのカウンターはギリギリの成功だったのだ。


拳にかかった負荷はかなりのレベル差があるのに関わらず、私がなんとかカウンターが出来るギリギリだったのだ。



「Guooo!」



「よっと……またこっちに来てよ」



だからさっきと同じ攻撃ならどうにかなるけど、他は分からない。幸いMPの消耗はそこまでないのか、まだまだ戦える。


バフの効果時間もまだあるから、少し距離を取りリッカに注意が向かないように分かりやすく煽った。



「Grrrrrrrr!」



「相当お怒りだね?」



「魔法陣描くの微妙に難しい〜……」



また何か描いているから、魔法を発動させるには魔法陣を描く必要があるのだろう。その時間は私が稼がなければならない。


マーダーベアはもう一度カウンターを決めるために、構え直す。1回目のように距離にそこまで余裕があるわけじゃない、だからタイミングは若干シビアだが……。



「《強打》」



「Guuuuurrrrrrr!」



「もう一回……吹っ飛べ!」



「Gaaaa?!?!」



「《マッドショット》」



力を溜めた拳はまた見事にカウンターに成功し、大きく怯ませ、泥の散弾が偶々顔に直撃した。すると目に入ったのか、泥を落とそうと苦しみながら腕で顔を擦り始めた。



「チャンスだよ、《戦士の構え》!《強打》!《強打》!」



「やっと慣れてきた! 《マッドショット》!」



「Guaaaaa!!!」



私の拳とリッカの魔法が襲いフルボッコにする。ダメージが積み重なり、倒せるかもと思った瞬間のことだった。



「Grrrr……!」



「逃すかぁ!」



「卑怯者〜!!」



背を向けて逃げ出し、数秒後には虚空に消えてしまったのだった。



『チュートリアル戦闘を終了します、お疲れ様でした。撃退に成功しましたので称号と1万Gが獲得出来ます。また、本来のマーダーベアは逃走を行わなわず、ステータスも強化されているのでご注意ください』



「……なんだか不完全燃焼」



「ミナ、わたしもだよ……」



『それでは始まりの村、ユルに転送します。ご武運を』



「ま、次に会った時に倒そ?」



「だね、絶対そうする」



手加減されていたことが判明してしまい、少し悔しい。けど次は必ず倒す。そう決意しながら私達は光の粒子に包まれるのだった。

読んで頂きありがとうございます、主人公のカウンターは某虎落としを少し雑にした感じを想像して頂けると助かります。

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