彼女と彼女
「ねぇ御奈々、せっかくVR機器が抽選で2人分も当たったんだからDualFantasieOnlineやらない?」
とある日の夜、VR機器のセットに苦戦している私を見ながら幼馴染みでもあり同棲中の彼女である莉華がそう提案してきた。
「でゅあ……なに?」
「DualFantasieOnline! 最近話題のVRMMOのこと! CMくらいは見たことあるでしょ?」
「あー……あれかな」
言われてやっと思い出した。実際にその世界で生きてるような感覚を出来るようなVRゲームが増えている中で、ベータ版ですら一際盛り上がってた記憶がある。
数ヶ月前に正式リリースされ、今でもプレイ人口はかなり多いと聞く。それに最大の特徴として、2人でタッグを組むことが強く推奨されているのだ。
そのため若干人を選ぶものの、不人気と言う言葉は聞いたことがない、らしい。
「うんうん、夏休みだし時間もあるからやってみない?」
「でも私ゲームそんな得意って訳でもないし……」
「だいじょーぶ! わたしが付いてるし……御奈々のあの特技、活かせると思うよ?」
「……莉華がそこまで言うならやってみるよ」
確かに私のあの特技……と言えるかは怪しいけど、戦闘があるものなら使えるかもしれない。
「ありがとう! ぎゅう〜……!」
「んっ」
小柄で幼なげに見える莉華が私に抱きついてきた。抱き返してあげると嬉しそうに微笑んでくれる。
「御奈々は大きくてあったかいな〜……むねもでかい……髪も伸ばせば良いのに」
「髪は邪魔だから短髪にしてるの、あと胸のことは余計っ!」
「持たざるものの悲鳴を聞け〜!」
お互い大学生ながら、そのままいちゃつき始めてVR機器のセットが終わらなかったのは言うまでもない。ふわふわしてて可愛い莉華が悪い。
そして次の日、大学からの帰り道に目的のゲームを買った。ちなみにゲームの方も2つで1つと言う変わった売られ方をしていて、私達は勿論そっちにした。
一応普通に売られている分もあったが、値段は数百円変わるくらいだった。
「この形式で買ったら自動的に一部の機能が2人プレイ用に切り替わるみたいだよ? 合流もキャラクリ中に出来るらしいから、難しいことは考えなくて大丈夫だよ」
「ふむふむ、便利だね」
2人プレイが強く推奨されてるだけあって、システム面も色々あるらしい。そこら辺の情報は莉華が調べておくって聞いたから任せている。
「よしっ、これでいつでも遊べるよ」
「それじゃ、早速遊ぼ?」
「はーい」
私達は同じベッドに一緒に寝転び、VR機器を顔に装着する。そして起動音と共に意識が吸われていく独特な感覚がした。
数秒後、視界が暗闇から切り替わると真っ白で何もない空間へと私は居た。周りを見渡そうとすると、小さい光の玉がふよふよと寄ってくる。
『DualFantasieOnlineへようこそ! キャラクタークリエイトを開始しますか?』
「YESっと」
そう声が聞こえると同時に、目の前にYES/NOと書かれた半透明の画面が出てきたからYESを選択する。
『ではキャラクターの種族を選択してください。もし決まらないようでしたら自動選択にすることも可能です』
「種族ね……」
画面をざっと見る限りだとかなりの種類がある。それぞれに強みと弱点があるから把握するだけでもそれなりに時間がかかりそうだ。
それから一通り迷ったあと、獣人(狼)と言う種族を選んだ。説明文はこんな感じだ。
《獣人(狼)》
人としての体と狼としての特性を多少持っている種族。少なくとも狼の尻尾と耳は持っている。特に敏捷力と耐久力が優れており、成長すると聴力や嗅覚なども強化される。しかし魔法などを扱う際には注意が必要だろう。
氷属性などや寒さには強いが、火属性などや暑さには弱い。
言うなれば近接タイプだ。多分莉華は魔法使いになるだろうから、前衛を務められる方が都合も良いだろう。
《次はキャラクターの見た目を制作してください。現実のお姿をベースにすることも可能ですが、種族による特性は消せないのでご注意ください》
「それならリアルベースにしようかな」
ここら辺はパパッと決めていく。私をベースにして、多少の美化や髪色を狼の耳に合うように大人しめの銀髪にしておく。
……思ったより尻尾がもふもふしてる。可愛い。
『キャラクターネームを決めてください』
「ミナ、で良いかな」
単純に呼びやすさと分かりやすさを優先しただけ。莉華もそこまで凝った名前にはしないはずだし。
『それではコンビを組む相手が来るまで待機してください、揃った時点で説明を開始します』
どうやら何かまだあるみたい。既に見た目はミナであるものに変わっているから、私は莉華が来るまで体を動かしたりして待つのだった。
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