ミッション01;観覧車1周以内に告白せよ
なろうラジオ大賞6に参加させてもらっています
奥手男子のピュアラブ、のつもり
「次の方、何名様ですか?」
「2名です!」
ドン、と集団から押し出されてよろめき、勢いで乗り込んだと気づいた時には、ガチャリと扉の閉まる音がした。
「行ってらっしゃいませ~」
スタッフの生温かな笑顔に見送られて上昇を始め、同僚集団はニヤニヤやガッツポーズで次のゴンドラに乗り込んでいく。
向かい側には、入社以来ずっと面倒を見てもらったハル先輩。見慣れたパンツスーツでは無くロングスカート、いつも纏めている髪はほどかれてふわりと肩にかかり、随分と違う印象のせいかドキドキする。
俺の家は母子家庭で生活が苦しかったから、学生時代も部活だの恋愛だので青春する気になれずにいた。
早く働いて、ちょっと体が弱ってきた母さんを楽にしてやりたいとか、俺より頭のいい弟を大学に行かせてやりたいしか考えてこなかった。
結果的に彼女いない歴イコール年齢だ。
そんな俺が高校を出て地元の会社に就職したのが2年前、指導係のハル先輩は専門学校出の3歳年上で1年先輩。他の同僚がアラサー既婚の中、独身男女とくれば、まぁくっつけたくなるらしい。
余計なお世話だ、俺の人生に横やり入れんなよ。
恋愛とか結婚とか、面倒だしコスパ悪いし、対人関係に気を遣うのはしんどいんだよ。
ホラ外野の期待虚しく無言のまま、もうすぐ頂上だ。
「顔、真っ赤だよ、寒い?」
覗き込むように半歩近づいたハル先輩から、いい匂いがする。硬直して顔が爆発しそうな程、熱くなるのを止められない。
「風入るね、閉めようか?」
「え?じゃあ俺が…」
同時に立ち上がりかけた時、ゴンドラがぐらりと揺れる。
弾みでバランスを崩した先輩を咄嗟に受け止め、抱きとめていた事に気づくと慌てて手を放す。
先輩はくっつく距離で俺の隣に座っていた。
「健太って素直だよね」
めっちゃ近い。
先輩は目を細めて微笑うけれども、俺の心臓はやかましい。
「いつも自分の事は後回しで、人の事に一生懸命で。裏表が無いところも、苦手を克服する努力が出来る事も凄いな、って思う」
先輩こそ、優しくて面倒見が良くて、責任感あってしっかりしててスゲーよ?
「私のこと、好き?」
「はい!」
…って、あれ?反射的に何言ってんだ?
「良かった」
差し出された手を取って地上に降り立ったものの、足元がふわふわする。
続くゴンドラに向かって先輩がピースすると、同僚達のイイネを貰っていた。
創作から遠ざかっていたので、お題ありの短編とゆーことでチャレンジ出来ました
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