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第七十九輪:王宮ロワイヤル(前編)

1ヶ月もあいてしまた。

今もこの小説を読んでくれている方はいるのだろうか………。


予備校だけでも手一杯なのに、免許も取るとなると………時間の確保が困難になり、肉体的精神的疲労がリミットブレイクしそうで………ちょっと休んでました、って言う言いじゃないけど


まぁ、疲れてなくて暇があれば後編も執筆してこーかなと思っております。

これからも、遠い目で見守ってください………!

隕石を消滅させて直哉の部屋に戻った二人は、そのままベッドに向けてバタンキューしてしまう。

そのまま、まるで何かを見なかった事にするかのように、狂ったように眠った。


そして翌朝。


「ん………ふぁぁ~………んんー!」


明るい陽射しに目を覚ましたシエルは上半身を起こし、可愛らしい伸びをして眠気を飛ばす。それに伴ってシーツが捲れ、白いローブに包まれたボディラインが露になった。


「んんぁー………むにゃむにゃ………」

「………」


しかし、それで眠気を完全に消失させれた訳では無い。とろんっとした目を人差し指で擦り、首を捻って自分の右側に向けた。

そこには、腰までシーツを捲られた直哉が、シエルに背中を向けるように眠っている。


「………(キュピーン!)」


そんな直哉を見ていると、シエルは自分の脳内に豆電球が灯るのを感じた。豆電球は霧散し、代わりにアイデアをシエルの脳内に残していった。


「………えへへ」


それに顔を赤らめ──蠱惑的な笑みを浮かべたシエル。ハイハイのようにベッドを歩き(這い?)、さらに直哉に寄った。

そして、直哉の左肩に手を掛ける。


「えいっ!」


ごろん。


そして、若干の力を込めて自分側に引っ張った。

直哉は抵抗もできずに転がされ、右向きから仰向けにされる。

すると、胸部の割けた戦闘装束から肌色の肌が露にされた。


「っ!!」


いつも大浴場で見ている筈の肌なのだが、それとベッドで見る肌とでは衝撃度が断然違う。

シエルの心臓が刻むビートが数段階上昇した。


『やっ………は、恥ずかしいいいいい!!』


上昇したのは鼓動の速度だけでは無く、羞恥心もだったらしい。


「~~~~~!!」


ドンッ!


ついに耐えられなくなったのか、シエルは直哉を思い切り突き飛ばした。マーキュリーの影響もあり、シエルは直哉を軽く吹っ飛ばせる程の力を持っていたのだ。

吹っ飛ばされた本人は身動ぎひとつせず、床をゴロゴロと転がり、やがてテーブルを直撃し、派手な音を立てて沈黙した。


「はぁ………はぁ………」


荒い呼吸を繰り返すシエルは、当初の目的──あんな事やこんな事をしてみよう計画──を覚えてはいない。


少し時間が経つと、シエルもだいぶ落ち着いたようだ──ぴくりとも動かない瓦礫の山に声を掛けれる位には。


「な、ナオヤ~………」

「………」


しかし、待てども待てども返事は返ってこない。

返事は愚か、瓦礫となってしまったテーブルの欠片すら落ちなかった。


流石のシエルも不安になってきたのか、声に怯えと震えが混じっていた。


「ナオヤぁ………」


が、相変わらず返事は無い。

当たり所が悪くて気絶してしまったのだろうか………不安はシエルをそのような思考の螺旋へと誘い、その勢力を強めていく。


やがて意を決したのだろうか、シエルは積み上げられた瓦礫へと歩み寄った。

瓦礫からはみ出した腕の指はオブジェクトのように動かず、それが不安に侵食されたシエルに止めを刺したようだ。


「ナオヤ──」


その腕を掴み、思い切り瓦礫から引っ張り出した。ガラガラガシャンと派手な音を立て、直哉を覆い隠していた瓦礫は除けられた。

手は暖かく、生きている事にほっとひと安心だ。


──しかし、引っ張り上げた直哉の見開かれた、且つ生気が抜け落ちた双眸そうぼう、力無く揺れる首に、シエルの耐久度は割れてしまう。


「──あああああああああああああああああ!!」


ホラー映画宛さながらの衝撃的な光景は、シエルを王宮シャトルランへと追い込むのに十分な破壊力を秘めていた。

──そして、これが引き金となり、シエルは再起不能になるまで追い込まれる事になるのだった。









エアレイド王国に聳える巨大な王宮の敷地内には、腕の良い庭師が整えた庭園がある。色とりどりの花が咲き乱れ、微風がそんな花を撫で、広葉樹が遮断した日光が木漏れ日を生み、それによって噴水が噴き上げる水飛沫が煌めく………幻想的なその光景は、騎士達やメイド達だけでは無く、様々な人が心から愛する──まるで別次元のような場所だ。

庭園にはベンチやテーブルも備えられていて、多くの人が休憩や軽食を摂ったりする時に利用している。


今日も例外では無く、休憩を挟んだ騎士やメイド達で賑わっていた。

──だが、今日に限って一つだけ例外がある。


「はっ、はっ、んっ………ぷぁっ、はぁっ、はぁ………」

「シエル様、どうなさったのですか………?」

「お苦しゅう御座いますか?!」

「大変だっ!!すぐに医者を!!」


──その例外とは、芝生の上に空を仰ぎ見る形で大の字に寝転がり、荒い呼吸を繰り返すシエル、そんな〝お転婆姫〟を不安そうに、或いは面白そうに見つめ、大袈裟に騒ぎ立てる騎士・メイド達ギャラリーで、いつもの数倍は賑わっていた事だ。

シエルが息を吸い込んで吐き出す度に胸が上下し、適度な大きさの膨らみが揺れるのを男性陣──と、メイド──はガン見していた。



王宮シャトルラン(王宮1週で1カウント、王宮は限り無く広い………)を50カウント程繰り返したシエルに体力の極限が訪れたようで、辛うじて保たれた意識でこの庭園へと辿り着いたのだ。

辿り着いたと同時に意識が途切れ、芝生に寝転がり、それを聞いた(または見た)人達が更に広めて………今に至っている。



再び騒がしくなったかと思うと、白衣を纏った女医がメイドに連れられてやってきた。

人垣を掻き分けて進み、シエルに歩み寄る。脇まで寄ってからしゃがみ、シエルの胸部に手を添えた。

──それが切っ掛けとなり、シエルは平穏な1日から大きく手を振りながら離れていく事になる。


「………激しい運動か何かで、呼吸困難になっているみたいですね」


冷静に診断をしてから女医が呟くと、回りからは安堵の溜め息と不安を匂わせるざわめきが起きた。


「ほっ………何でもなかったか、良かった」

「でも、呼吸困難って………ヤバくないか?」

「そうだよ………今、姫様は満足に呼吸すらできてないんだ」

「っ!大変だ、人工呼吸をしなければ!!」

「そうだそうだ!」


最初は真っ当な意見が出ていたが、それはベクトルをあらぬ方向にねじ曲げて勢力を拡大していく。

ねじ曲がったベクトルの先には、シエルの診察を担当した女医もいた。


「それよりも貴女!いつまでシエル様の美しい胸に手を当ててるつもりよ!」

「えっ──」

「そうだそうだ!」

「ズルいぞ!」

「権力乱用にも程があるぞ!」

「いや、これは、その──」

「触診おしまいよ!代わりなさい!!」

「だそうだそうだ!」

「次は私達が触診をする番よ!!」

「順序は守りなさいね?」

「わ、私は──」

「で!どうなのよ!!」

「さささ触り心地ちちちは?!」

「あわわわわぁ………」

「早くっ、言いなさい!でなければ命は無いわよ!!」

「あ、そ、それはもう素晴らしく──」

「殺ス!!!」

「今だ者共、掛かれェェ!!」

「「「「「うぉぉぉおぁあぁあ!!!!!」」」」」

「ひぃぃ?!」


シエルの居ない間にメイド達に貯蓄された欲求は凄まじく、良く見るとやらしい姿のシエルを前に限界を遥かに超越し、理性と言うダムを決壊に追いやったのだ。

欲望の赴くままに動く理性の欠落した狂人達は、眼前で少し落ち着いた呼吸をするシエルへと突撃を開始した。


その光景に恐れおののいた女医が悲鳴をあげた。


「ん………はぁ………」


が、それはシエルを目覚めさせると言うプラス方面の働きを見せる。


ゆっくりと上半身を起き上がらせたシエルは、少し苦しいなと思いながら回りを見渡した。そして、血走った目で自分目掛けて突進してくる狂人達を捉えた。


「はふ………?」


目覚めたからと言って頭が完全に覚醒した訳では無く、暫く呆然とその光景を眺めるシエル。

やがて頭が少しずつ回転を始め、同時に背中を冷たい汗が伝った。


「い」

「シエル様が起きたぞぉぉぉお前等ぁぁぁぁぁ!!!」

「「「「「いーやぁっふぅぅぅうううう!!」」」」」

「あのふくよかな『自主規制』を『自主規制』したいかぁぁぁぁ?!」

「「「「「うぉぉぉおぁあぁあ!!!!!」」」」」

「嫌ぁぁぁぁぁ!!!」


剰りにもおどろおどろしいその光景は、余裕をもってシエルを暴走に導いた。

刹那の時間で練り上げられた魔力は膨大な量の水となり、シエルを中心に渦を巻く。


「ぐぉ………何だ、この水は………」

「これが姫様の力………ッ!」

「怯むな者共ぉ!この困難はシエル様が我等にお与え下さった試練だぁぁぁ!」

「「「「「はっ!!」」」」」

「これを乗り越えないとお゛っ゛!!?」

「「「「「!!!!!」」」」」


そして、主犯格と思わしきメイドを飲み込んだ。

飲み込まれたメイドは渦の中をぐるぐると回り、生きてはいるが動きはしない屍と化した。


「あ、あ、姉貴ィィッ!!」

「ば、おま──」

「あがっ、を゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛………」

「くそ………くそッッ!!」


巻き込まれたメイドを助けようと飛び出した騎士もしっかりと飲み込まれ、渦の内部を高速回転する屍の数は2つとなった。


「う、うぁ、あ──」

「いーやーあああああああああああああああああ!!」


その光景を目の当たりにして初めて、自分達が喧嘩を売った相手を間違えた事を〝悟ろうとした〟他のメイド・騎士達。

しかし、シエルの発狂は底が知れず、渦は戦意を喪失した〝エネミー〟を片っ端から飲み込むのを止めたりはしなかった。悟ろうとするよりも意識を刈り取られる方が早く、悟りは未遂として終わりを告げてしまうのだった。


成分の半分をエネミーとした大渦は暫く回転を続け、水のみが急に消え失せた。エネミーはそのまま芝生に叩き付けられ、全員が戦闘不能になる。


「はぁー、はぁー………」


荒い呼吸を繰り返しながら状況を把握しようとするシエルだったが、把握よりも先に。


「………ナオヤが、危ないっ!!」


自分のせいで再起不能になった直哉が──


「ナレーションうるさぁい!」









直哉が使っている客室に飛んでいったシエルは、予想した通りの光景に暴走しそうになる自分を落ち着ける。

その光景──いやに笑顔なメイド達が開け放たれた客室に侵入しようとしている姿に、歩くペースは上がり、反比例して足音は静かになった。


シエルの接近に気付かないメイド×2。二人はニコニコしながら部屋の内部を見渡し、倒れる直哉を発見した。

にやりと笑んだメイドは何の躊躇いも無しに部屋に入ろうとして、


「おっじゃまぁ──」


ぽんっ☆


肩に置かれた手から伝わる殺気に振り返り、満面の笑みを湛えるシエルと目が合ってしまった。


「──しましたあ」

「あらぁ、遠慮なんてしなくていいのよ?」


慌てて逃げ出そうとしたが時既に遅し。抵抗虚しく部屋に引き摺り込まれたメイドは、ドアが閉められる音を聞いて絶望の縁へと沈んでいった。


「あああああ、あのあのなおあおなのななのの」

「あうあうあうあうあ」


身振りも加えて必死に言い訳を考えるメイドだが、呂律はシエルの味方をしているのか、全く回らなかった。

そして、シエルは味方のフォローを見過ごしたりはしなかった。


「言い残した事………は、無さそうだね」

「ひ──あっ、ふぁ!」

「にゃぁっ?!」


そうのたまいつつ、魔力を練り上げて細長い水銀を生成した。それはまるで意思を持つかのように蠢き、メイドを床に押し倒して大の字になるように固定した。

そして、そんな二人を見下したシエルが呟く。


「じゃあ、お仕置きの時間といきましょうか」

「ひぃっ──あっ!や、そこ、あひゃっ、ひゃひゃはひゃははは!!」

「にゃはははぁ、らめっ、そこ擽っちゃっ、あは、ら、らめぇぇぇーっ!!」


同時に指をぱちんと鳴らす。すると、手の形に変形した水銀がメイドの脇や顎の下、耳等を擽り始めたではないか。実にけしからん光景である。

身をよじらせて抵抗するも、水銀パワーに打ち勝つには遠く及ばなかった。


メイドがあへあへと笑ってる最中に、シエルは直哉を抱き抱えつつ部屋を脱出。嬌声に聞こえなくもない声を遮断するためにドアを閉めた。


「ナオヤは………私が………」


少々ヤバめな雰囲気を漂わせつつ歩き出したシエルは、自分が〝王宮ロワイヤル〟の原因となっている事を知りもしなかった。

話が思い浮かばない………。


まずい、まずいぞ非常にまずい………。

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