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第七十二輪:決戦

夏バテ真っ盛りでございます。

どうも調子が出ません………時間も無いし最悪でござる………。


出来るだけ執筆の時間を作って執筆しますが、不定期更新になるかもしれません(´。・ω・`)

「──これは罠かも知れん。上りきったら階段が崩れて、変な部屋に閉じ込められるって可能性もあるな」

「さっきは正面突破云々(うんぬん)って言ってたアリューゼさんがねぇ………」

「ぐぅ………」


先程閉じ込められた経験を活かして警戒を示すアリューゼに、直哉はほんの少しの揶揄からかいを籠めた返事を返した。


今は崩れた部屋で、不自然な階段を素直に使うか否かで話し合っているのだ。

とは言っても皆が警戒しているので、話し合わなくても使わない方向で纏まりそうだったが。


直哉にごもっともな反撃を喰らい言葉に詰まるアリューゼを見た直哉は軽く笑い、そのまま一歩下がる。


「………エアレイド王国第一騎士団団長はアリューゼさんだ。俺じゃないから、俺には決定権は無いよ。さ、騎士団長として指示を出してくれよ」

「ナオヤ………」


先程のアリューゼの表情を見逃す程、直哉は鈍感では無かったのだ──違う方面では〝超〟鈍感であるのは、非常に残念ながら否めないが──。なので、アリューゼの立ち位置の再確認と憂鬱の払拭を兼ね、簡単な一芝居を打ったのだ。

直哉が極度のお人好しなのはアリューゼも知っているので、その行動の裏に隠された目的に気付くのはすぐだった。


「………分かった、階段は使わない事にしよう。これからはベクターを捜すために遺跡内を歩き回り、見つけ次第捕まえる。歩き回るとなると変なのと遭遇するかも知れんから、警戒は怠らない事。良いな?」

「「「「「「「「「了解っす・だ・です・でひゅっ!!」」」」」」」」」


騎士団員とローム・センギアの二人は各々が三者三様の返事を返し、一行を取り巻く空気が若干柔らかいモノになった。

和やかと言うと語弊がある。どちらかと言えば〝再び纏まった〟だろう。


「よし、じゃあ捜索を続けよう。何かあればすぐに報告だ。情報は共有するに越したことは無いからな」


そうと決まれば、纏まった一行の行動は速い。全員が武器を構え(シエルは直哉の左腕にしがみつき)祭壇のあった部屋を後にした。


「取り敢えず上層を目指しつつ捜索しよう。なるべく捜しそびれが無いように注意深くな」


下層から上ってきたので、アリューゼはそのまま上層を捜索する方針を定めた。下層の全ての部屋を調べた訳では無いが、まだ調べていない部屋の多い上層部に目を向ける事にしたのだ。


方針が決まってからの行動はスムーズだった。ゴーレムの襲撃があっても被害をこうむる事も無く返り討ちにし、次々と部屋の捜索が進んでいった。

一度通った事も幸いして捜索は進み、一行は地上へと向かう事になった。出るのに要した時間は侵入時の半分以下だったのだが、時計を持ち合わせてる訳でも無いので誰も気付かなかった。


薄暗い通路の先に光が差していて、暗闇に慣れた一行にはそれが幻想的な光景に見えた。

セフィアが火球を消し、光がより一層明るさを増したように見える。一行はその光を目指して駆け足で駆けていった。疲れている筈だが、それを感じさせない一段飛ばしで階段を掛け上った。


そして──


「ふぅ」

「ふぁー!」

「あー疲れた………」

「あぁー………やっと出れた………」

「凄い、本当に浮いてる………」

「………夢、ではありませんよね」

「綺麗ですぅ~!」

「信じられん………まさか、本当に城が浮かび上がるとは………」

「凄いですね、センギア様」

「………確かに〝凄い〟のぅ」


──ねぎらうかのような絶景が一行を出迎えた。

淡い水色の空の中、自分達が雲と同じ位の高さに浮いているのだ。地平線は僅かにかすみ、地上には緑豊かな大地が広がっている。所々に見えるのは集落だろう──そのような光景を遮るモノは何も無い。数歩進んだ所に地面は無く、近寄りすぎると危険だ。


目の前に漂ってきた白い雲を掴もうとするシエルに、直哉は注意を促した。


「可愛………じゃなくて、あんまりそっちに行くなよ?落っこちちゃう──」


しかし、その言葉は最後まで紡がれずに途切れた。


──


「「?!」」


直哉達の頭上を漆黒の光線が無音で通過し、下に見えていた集落を直撃したのだ。ふちに歩み寄っていた二人だからこそ見れた光景で、他の皆は黒光に驚いているだけだった。

光線が集落に照射されてから数秒後、何かがへし折られ、捻切られ、押し潰されるような音が一行の鼓膜を揺らした。直哉とシエルはそれが集落から発生した音だと気付き、唖然としている一行を無視して振り返った。


「っ!!」


光線を辿って光源に辿り着いた時、丁度光線の照射が終わった。


「ククッ………素晴らしい、素晴らしいぞこの力!」


音も無く消える光線の光源は、いつの間にか綺麗に復元された王宮の最上階、そこの窓から細い腕を突き出して高らかに笑うベクターだった。

その笑い声や言葉の内容は強化された聴力で辛うじて聞き取れるレベルの音声で、皆は気付いていない。


「………」


一行もようやく驚愕から解放されたらしく、直哉に倣って王宮を見上げた。


「なっ、何で直ってるんだ?」

「爆発で吹き飛んだ筈では………」


最初に抱く感想はそれだった。大爆発があったのは全員──救出組は居合わせた訳では無いが、巨大な爆音は聞いている。直哉が王宮を捜索している時にその旨を話すと「え?ナオヤじゃなかったの?!」と変に驚かれたのを覚えている──が知っていて、それが王宮の大半を瓦礫にしたのも聞いていた。だからこそどこも損傷していない王宮に驚いたのだ。


その驚きは、その場の温度が数度下がった事にも向けられた。

肌寒さを覚えて自分を抱きしめるシエルは、背筋が凍りつくような殺気に振り返った。


「ナ──」


声を掛けようとした瞬間に甚大じんだいな魔力が渦を巻き、どす黒いオーラが直哉を包み込んだ。同時に、直哉の左目の中で輝いていた六芒星が色を失っていくのを捉えた。

先程と同じ禍々しさを放つ直哉を見て、ダークサイドが表に出てきた事を悟るシエル。


「──ナオヤ!!」


〝ダークサイド〟は〝ブライトサイド〟の裏返しだ。普段の温しい直哉が冷酷で残酷な直哉──ちょっと面白い面もあるが、殺意が王宮を軋ませているこの状況では明らかに関係が無い──と入れ替わってしまったのだ。

ダークサイドに身体を乗っ取られた直哉が人間を挽肉にした事を思い出し、惨事を前もって止めるために声を荒げて駆け寄った。


「来るな」

「っ──」


しかし、静かな言葉と桁外れな魔力──邪悪な殺気そのものを投げ掛けられ、シエルはその重圧と鋭い眼差し──一抹(いちまつ)の光も籠められていない、深淵(しんえん)の闇そのもの──に耐え切れずに座り込んでしまった。


「あ………か、はっ………」


まるで空気圧が増したかのように呼吸が荒くなり、冷や汗が止め()無く溢れ出す。それはその重圧をダイレクトに受けているシエルのみならず、一行にも飛び火していた。

シエルを黙らせた直哉──ダークサイドは、その重圧を一行から窓辺に(たたず)むベクターへと向けた。同時に圧力は消えうせ、一行は必死に酸素を取り入れようと荒い呼吸を繰り返した。


「………」


そんな一行など気にも留めず、身に纏う膨大な魔力の一部を背中に集め、漆黒の翼を形成した。

その場で数回羽ばたかせると辺りを強風が吹き荒れる。


そして、次の瞬間に直哉はそこから消えていた。凄まじい速度で移動したのでは無く、目の前と言う空間からその存在を別の位置へと移動した──消えたのだ。


言葉を失う一行の耳に届いた音は、羽ばたきにより生じた風が空を切る音、そして復旧された王宮が真一文字に両断され、少しずつずれる音だった。


「わ」


地響きをたてながらずれた王宮は、上半分が地上に向けて落下を開始──する直前に、煙のように消えた。

影縫いの森で発動した電磁崩壊マグネイドだが、規模が比べるまでも無く桁違いだった。


「これは………影縫いの森の?!」

「物体を消すだなんて………人間業じゃ無い………」

「………ナオ──」


そこで漸く一行は直哉の姿を捉えた。が、邪神としか言い表せないその姿──どこもかしこも漆黒に包まれ、身体を突き刺すような威圧感を放ち、そしてどこか怒りを含んだ直哉──に言葉を失った。


暫くすると、切断された王宮から一つの黒い影が飛び出す。それは人間の形をしていたが、背中には邪悪さを漂わせる蝙蝠こうもりのような羽が付いていた。

それは直哉の正面まで浮上し、直哉と向き合った。


「………ただの人間かと思っていたが、ここまでやりおるとはな」

「よぉ、ゴミクズ」


飛び出した影がベクターだった事は言うまでも無かった。

何故なら──


「っ!」

「くっ!朱堅防壁!」


──直後に防壁を張らなくては耐えられない程の衝撃が大気を揺るがしたからだ。

前話から魔術名の表示方法をちょっと変えてみました。

完全に厨二真っ盛りです。

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