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第四十九輪:ハプニング

五十輪を目前にして、PVアクセスが300000を突破して310000を達成してました?!

こんな拙すぎる駄作を読んでもらえて、感激の極みでござりますッ!


更新周期は狂うけど、これからも一寸畑をよろしくお願いしますぅぅあっ!

太陽が頭上に昇り切った頃、自分を取り込もうとするダークサイドにあらがう事に精一杯で、結局は一睡も出来なかった直哉は、


「その…昨日は、ごめんなさい…」

「すまん…私も、力尽くでも止めるべきだった…」

「うふふ、ごめんなさいね」

「ごめんなっさぁ~い(はぁt」


昨日の〝きせかえごっこ〟に加担した首謀者達(コラーシュとシエルは参謀と言う方が正しいかも知れないが)からの謝罪を受けていた。

上からシエル・コラーシュ・フィーナ・セラの言葉なのだが、参謀であるコラーシュとシエルには反省の色が見られるものの、首謀の二人にはそれが感じられなかった。


《サイズを測る時、注意しなきゃなぁ…フィーナさんとセラを部屋から追い出して、ドアを魔術で塞いで──》

『ナオヤッて、いつも他の奴等とは一味違う苦労をしてるよな』

《む、何だそりゃ。まるで俺が未確認生命体みたいな言い回ししやがって》

『強ち間違ッてもいねェ気がするんだが』

《お前だけには言われたくなかったな…神様なんてなぁ、見方を変えたらあら不思議、あっという間にUMAデビューなんだよ》


心が溜め息をつきたがっているが、その願望を無理矢理捩じ伏せ、代わりに満面の笑みをセラに向け、そのまま魔力を練り上げる。

小指の先程の大きさに練り上げられた二つの魔力の塊に、小さな雷球になるように念じた。かすかな閃光を放ちながら、魔力の塊は稲妻の塊へと姿を変えた。


「ひ──」


危険を察知したセラが逃走しようとしたが、直哉の方が一足速かったようだ。

直哉が一つの雷球をセラに向けてデコピン投擲した。雷球は音も無く空気中を突き進み、セラの額に着弾。


バチッ!


「にゃああああああっ!!」


カーディガンを脱いだ時のような音が鳴ると同時に、セラが可愛らしい悲鳴をあげた。そのまま床に倒れ込み、陸に打ち上げられた魚のようにビチビチと痙攣し始めた。


「うにゃぁぁ…」

「ふっ…さて、フィーナさんも同罪ですよね?」


涙目で呻くセラを鼻で笑い、フィーナに笑顔を向けた。同時に、フィーナの表情が強張った。

のほほんとした表情以外も出来るんだ…あれ、これデジャブじゃね?等と考えながら、直哉はデコピンの構えをする。


「身代わりってアリよね?」


直哉のスナイピングのターゲットにされたフィーナは、コラーシュの後ろに隠れてしまった。〝身代わり〟にされたコラーシュは、先程のフィーナ宜しく表情を強張らせた。


「な、ナシだろう?ナオヤ、考え直すんだ。今なら間に合うぞ」


口調からも動揺が感じられるコラーシュは、見ている側としてはとても滑稽だ。耐え切れなくなった直哉は含み笑いを溢した。


「大丈夫ですよ、初めからやろうだなんて考えてないですから」


直哉は雷球を魔力に還元し、そのまま霧散させた。コラーシュは安堵の溜め息をつき、フィーナはセラに合掌した。ただ一人、シエルだけはおろおろとしたままだ。


「その代わりと言っちゃアレですけど、今日は食べまくりますよ?」


安堵したのも束の間、直哉の一言で再び顔が引きつった二人。


食べ放題は地味に痛い出費だが、電撃も肉体的な意味で苦痛である。どちらも嫌な事に変わりは無いが、苦痛度は後者が遥かに上回っている。つまり、この申し出を断る事は不可能なのだ。

直哉もそれを知っていて持ち掛けているので、更に質が悪い。


「嫌ですか?そしたら、そこに転がってるセラの二の舞になりますよ?」


素直に頷けない二人に追い打ちを掛けるように、直哉は視線だけをセラに向けた。


「「………」」


つられてセラを見た二人は、その痛々しい姿に言葉を失う。


「安心してください、ちゃあんと病院には連れてってあげるんで」


とどめの一言を喰らったコラーシュ夫妻は、ただひたすらに首を縦に振った。

そして、足場(と言うより全力疾走)に食堂へと向かっていった。


置き去りにされた直哉は、シエルと向き直る。


「…シエル──」

「っ?!」


「気を付けろよ?」と続けようとしたが、怯えられてしまった。

可愛い小動物を苛める趣味など持ち合わせていないので、続きの言葉を並べる事はせず、


「──は、まぁいいか」


代わりにシエルの頭を右手でぽんぽんと撫でてやった。

目を細めるシエルを眺めながら優越感に浸っていると、セラが震える声で訴えてきた。


「な…おや…ご、ごめんなさい…」

「分かればよろしいのだ」


流石に放置しておくのは可哀想だと思ったのか、セラの首根っこを摘まんで病院へと引き摺って行く事にした。


首根っこを摘まんだ時、シエルと目が合った。


「先に食堂に行ってても構わないよ?」

「ううん、シエルも行くっ!」


意地でも首を横に振らないぞ、と言う意気込みを感じた直哉は、その好意(?)を大人しく鵜呑みにしておいた。


直哉がセラの右手を、シエルが左手を掴み、清潔感溢れる王宮の廊下をずるずると引き摺って行く光景は、原初の人々が獲物を二人懸かりで運んでいく時のそれと酷似していた。

つまり──


「二人でセラを運んでるわ…まさか──」

「部屋に連れ込んで──」

「そのまま──」

「二人揃って貪って──」

「「「「キャー!!」」」」


──妄想力豊かなメイド達が見たら、それは訳の分からない内容で素晴らしい誤認を引き起こす引き金にしかならなかった。

しかも、それは引き金を引いただけでは済まさず、幻覚や幻聴を引き起こし、酷い場合は自分を必死に抱き締めて身悶えるメイドまで現れ始めた。


「「………」」


顔を見合わせ、二人はアイコンタクトを図った。


《この流れは色々と面倒臭いぞ?》

『どうしよう…何とかならないかなぁ…』

《全員痺れさせてみる?》

『それじゃあセラと同じだよぅ…』


アイコンタクトと言う割に細かい内容のやり取りまで出来ているのは、シエルが腕に嵌めているブレスレットのお陰である。

ジェラルドの亡霊がブレスレットに宿ってから、シエルは極力ブレスレットを身に付けるようにしているのだ。念話が可能になったり、ジェラルドがずっと傍にいてくれるからと言う理由らしい。「可愛い娘だ」と言うジェラルドの興奮気味の歓声は、一生忘れる事は出来ないだろうと思った。


《うぅむ…他に思い付かんぞ》

『あ、そうだ!あれは?あのびゅーんってやつ!』


何かを思い出したシエルが、直哉にイメージを送る。

言葉だけで無く、イメージ等も共有出来るようだ。全くもって便利な会話術である。


《…あぁ、そりゃ良いかも》


ニヤリと不敵な笑みを浮かべた直哉は、瞬間的に魔力を練り上げた。


「ああああん、私もぉぉぉ!」

「抜け駆けは許さないわよ!」

「私の嫁だあぁぁああぁ!」

「シエル様ぁんっ!」


同時に、メイド達が四方八方から雪崩の如く襲い掛かってきた。

しかし──


「みゅっ!」

「うにゃっ!」

「あぅ」

「むぎゅ」


──直哉達を捕まえる事は出来ず、各々が廊下の中央で抱き合うと言う結果に終わった。

しかし、本人達はそれに気付いていない。


禁断の花園と化した廊下は、言葉では表現する事が出来ない、とにかく侵入が憚られるような雰囲気を醸し出していた。









無事にセラを病院に寝かし付け(半ば強引に押し付け)、食堂で予告通りの暴飲暴食を繰り広げた直哉は、スウェット上下を持って浴場に向かっていた。

悪夢に魘されて汗だくになっていたので、スウェットもしっかりと汗を吸収していたのだ。なので、メイドに頼んで洗濯をしてもらったのである。


スウェットに視線を落とし、そのまま匂いを嗅いでみた。


「すはー…良い匂いだなぁ、これ」

「でしょ?王国の辺りに咲くお花を使った特製石鹸を使ってるんだよ!」


独り言のように呟くと、シエルが嬉しそうに説明してくれた。


嗅いだ事のある匂いだと気付いていたので、窓を開けた時に流れ込む微風の匂いだと分かるのに時間は掛からなかった。


甘いが甘っとろくは無い、丁度良い案配の優しい香りだ。嗅ぐだけでリラックス効果は狙えるレベルである。

──石鹸に味は無いらしく、スウェットを舐めても無味だったのは言うまでも無い事だ。


そうこうしている内に、いつの間にか浴場に到着していたようだ。考え事をすると、時間はスピードを倍にしやがってくれるらしい。


いつものように服(今はガウン)を脱ぎ、薄っぺらい布を巻く。脇で縛ると完璧だ。

──だがしかし、今日に限って縛りが甘かったのである。それが後に引き起こされる悲劇の原因になる事など、直哉はおろかシエルも、直哉に寄生するパラサイトゴッドも、シエルの腕に輝くブレスレットに詰め込まれた元国王も知る由が無かった。


浴室に入ると、相変わらずがらんとした空間が広がり、浴槽には並々とお湯──温泉かは分からないが──が満ちていた。


周辺確認を済まし、そのまま浴槽にダイブ。飛沫と温もりが同時に押し寄せてきた。


「ふぉぉぉぉぉぉお!」


風呂が好きな人種である日本人にとって、入浴とは癒しの一時と言っても過言では無い。汗だくの後の入浴はそれが一入だ。


「うふふ。ナオヤ、子供みたいね」


ぬくぬく暖まるのも忘れて泳ぐ直哉の隣に、控え目にシエルが入ってきた。


ピクッ


直哉の動きが止まった。


「子供…だと…?」


軋む首だけを辛うじて捻り、シエルの方へと向けた。当のシエルはニコニコと微笑んでいた。


「うん、お子ちゃまみたい。可愛いよ~」

「………」


驚いた表情をした直哉は、思考回路をフル回転させた。


《どう見てもシエルのがお子様だよなそうだよな、俺間違ってないよな?》

『少なくとも大人は風呂で泳がないよな?』

《俺は青年、シエルは少女!つまり俺のが大人ぁぁぁ!》

『訂正、精神的にもシエルちゃんのが年上だわ』


そんな直哉に追い打ちを掛けるのは、そんな事になっている事を知らないシエル。


「目を離したら迷子になってそうだよね~」

「なにおう!」


ザバッ!


そのまま立ち上がった直哉は、シエルと向き直りながら高らかにのたまった。

──この時は過ちに気付いてはいない。


「これでも俺は十八だ!ちょっと方向感覚に不安はあるけど、これでも大人なんだぞ!」


天井を見上げながら両手を使ってオーバーな振る舞いをし、必死な表現をする。

──この時も気付いてはいなかった。


「頑張ってお兄系目指して──ん?」


──そして、シエルが一言も発しない事に気付いた。

不思議に思った直哉は、視線を再びシエルに落とした。


「あ……」


呆然とするシエルは、何かを見つめたままぴくりともせずに固まっていた。

しかし、その可愛らしい顔は、お湯のせいにしては異常なまでに真っ赤に染まりきっていた。


「どうした?」


直哉の問い掛けにも返事をする事が出来ないようだ。身動ぎ一つせず、ひたすら彫刻と化している。

その代わり、シエルの回りのお湯が湯気を上げ始め、お湯の温度が急速に上昇していった。


流石に異常事態であると気付いた直哉は、まずはシエルが何を見つめているのかを調べる事にした。

方法は簡単である。シエルの視線を大雑把に辿るだけだ。


「えぇーっと──」


シエルの視線は、正面に立つ自分の腰らへんに向けられていた。なので、ゆっくりと自分に視線を向けた。

──そして、本日最大の悲劇が直哉(精神的ダメージはシエルの方が大きいが)を襲った。


何を隠そう直哉が巻いた筈の布がはだけ、一糸纏わぬ姿になっていたのだ。そして、直哉はシエルと面と向かっていた。極め付けに、直哉は立って、シエルは座っていて、丁度直哉の腰らへんがシエルの目線の高さと一致した訳で。

──簡単に言うと、シエルの目の前に〝重要機密情報〟をノーガードで晒してしまった、と言う事だ。


「──うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!??」


だだっ広い浴室に凄まじい絶叫を木霊させながら、直哉は後ろを向いて座り込んだ。そして、お湯の中の布を手探りで探し、見つけた布を腰に巻き、きつーく──コルセットを無理矢理着けるように──縛った。


真っ赤になりながら振り向くと、お湯の上をぷかぷかと漂うシエルが目に飛び込んできた。

背泳ぎをするように浮かんでいたので、呼吸には困らないようで安心した。


「あ……あはっ、あははぁ………」


ただ、想像を絶するショックを受けたらしく、自分の熱で頭のネジが数本溶けてしまったらしい。回りのお湯を沸騰させながら、あはあはと狂ったように笑っていた。


「あ…あは、あはははは…」


自分の中で何かが砕け散る音を聞いた直哉は、座り込んだまま笑い出し、そのまま意識をシャットダウンした。


二人は暫くの間発狂していたが、


「はふぅ…ん?」


痺れが取れたのか入浴しに来たセラに見つけられ、事なきを得たのであった。

──セラが高らかに笑い出していたらしいが、それは気にしない方向で。









二人は各々がガウンを着せられてから自室に運ばれ、メイド達が付きっきりで看病した。


「………」


死んだように眠る直哉には、ドジっ子メイドを代名詞に持つセラが付いた。


「やれば出来るもんっ」


ナレーションにケチを付けようと、必死に看病をしようとした。水入りの水桶に肌触り滑らかな白い布を入れ、軽く絞ったそれで直哉の顔を拭いてやった。


「……!」


ここで疚しい考えが浮かんだセラは、そのまま布を下へと滑らせていく。


『看病してあげてるんだしね…ちょっと、うん、ちょっとだけだからね…ぐへへ…』


自分に催眠を掛けるように繰り返し、ガウンを開けさせた。熱からか疲れからか恐怖からか、うっすらと汗が滲んでいた。


「~♪」


セラが鼻歌混じりにタオルを滑らせた時、急に伸びてきた腕がセラの手を掴んだ。


「うにゃあっ!」

「おはよう」


驚いて飛び上がるセラは、今まで眠っていた筈の直哉が手を掴んでいる事に再び驚いた。軽い錯乱状態に陥り、ぎゃーぎゃーと喚き出した。


「うにゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!」

「訳分からん発音すんな!」


ばちん


「あぅ!」


そんなセラの額にデコピンを炸裂させた。稲妻は作り出していないので、純粋なデコピンだ。

しかし、破壊力は従来のそれよりも数段上らしく、額を押さえたセラは千鳥足で後退りした。


「な、ななな、何するですかー!」

「こっちのセリフだボケ!」


開けたガウンを整えながら、直哉はベッドから起き上がった。そのままセラを睨み付け、声を荒らげた。


「何食わぬ顔でセクハラしてんじゃねーよ!どーせ「ちょっとだけだからね」とか考えてたんだろうがよ…」


ぐさり


「う゛っ…」


直哉の言葉がセラの胸に突き刺さり、核心と言う隠された的をぶち抜いた。

狼狽えたセラを見て核心を破壊したことを確信した直哉は、腕を組んで偉そうな態度を取った。


「ったく、ドジっ子に変態をプラスしてもお釣りが来ちまうじゃねーか」


それから暫く、直哉による説教が続いた。説教をする直哉は、何故自分が自室にいるのかを覚えていない。


「──これだから変態は…」

「うぅぅ~…ごめんなしゃい…」

「分かればよろしい」


セラが涙目で謝ってきたので、仕方無く説教を切り上げる事にした。

そのままベッドに座り、


「んで、何でセラがここに?」


気になった疑問をぶつけてみた。

質問を受けたセラは、直哉が軽い記憶喪失だと言う事に気付いた。なので、説教の仕返しに大袈裟な表現をしてやる事にする。


「それはね──」









余りにもはっちゃけた内容をも当然のように語るセラにキツ目の稲妻を落とし、びくびくと痙攣するセラを尻目に自室を後にした直哉は、急いでシエルの部屋に向かった。


「そんなに急いでどこ行くんですか~?」

「シエルの部屋!」

「妻の部屋に行くなんて…あぁ、素敵ぃ(はぁt」

「アンタの妄想力のが素敵だよ!」

「何しに行くんですかぁ?」

「真相を確かめに!」

「シエル様がナオヤ様を好いているか、ですか?そんなのもう確認する必要──」

「うるせぇ!」


メイド達が冷やかすように話し掛けてきたが、全てを適当にあしらいながら、ただひたすらに走った。


すぐに部屋に到着した直哉は、ドアを強めに叩いた。


「何ですか?」


ドアを開けてくれたのは、いつもシエルの部屋を掃除しているメイドだった。

メイドにしては珍しい純情派らしい。シエルが純情可憐な事に素直に頷けるような、一言で言うと〝メイドの鑑〟と言った人物だ。


少し落ち着きを取り戻した直哉は、深呼吸してから用件を告げた。


「あいや、ちと様子が気になって…」

「ふふ、少しお待ちくださいね」


優しい笑みを浮かべたメイドは、一旦部屋の中へと引っ込んだ。

そのまま待つ事三秒──


「嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!入ってきちゃダメぇぇぇぇぇぇぇ!!」


──本人が明らかな拒絶を返事として返してくれた。


少しすると、メイドが申し訳無さそうな表情をしながら出てきた。


「──と、言う事です…」

「………」


呆然と立ち尽くす直哉の前で、ぺこりと一礼したメイドがドアを閉めた。

部屋の中からは「大丈夫です、シエル様は私がお守りします」と言うメイドの会話が聞こえてきた。


『ドンマイ…クククッ…』


全てを知るウィズが溢した笑い声は、直哉を訳の分からない絶望のドン底へと突き落とした。

絶賛放心状態キープ中な直哉は、痺れが抜け切らない身体に鞭打ったセラに引き摺られて国王の部屋に連れて来られた。


「お連れ、しましたっ」


部屋の中に直哉を放り込んだセラは、そのまま部屋を後にした。コラーシュに念押しされ、部屋を後にせざるを得なかったのだ。

因みに、フィーナも席を外している。現在部屋の中にいるのは、直哉とコラーシュ、それと縫製ほうせいを生業とする〝男性〟だけだ。


服を脱ぐように指示された直哉は、言われるがままにガウンを脱ぎ捨てた。


そこからの測定はスムーズに進み、十分も掛からずに終了した。

男性は足早に立ち去り、部屋にはコラーシュと直哉の二人が残る形となった。


「…さて、ナオヤ」


沈黙を破ったコラーシュの声は、かすかに重圧を漂わせるモノだった。

しかし、直哉には返事をする余裕が無い。


「明後日には王国を発つべきだと考えているんだ」


そんな直哉を気にせず、コラーシュは続けた。


「ガルガント王国とは違って、センティスト王国への道程は長い。明日はゆっくりと休んで、明後日に備えてくれ」


それだけだ、と締めたコラーシュは、直哉の後ろのドアを開いた。国王が自らこう言う動作をするのも問題である。


まるで吹かれるように部屋から出ていく直哉を、コラーシュは無言で見送った。









自室に辿り着いた直哉は、いつの間にかベッドに横になっているセラをどかし、その上に横たわった。

暖かいベッドは、精神的に疲れた直哉を眠りに誘う。


「休んでらんねぇよ…」


寝言のように呟いて、そのまま眠りに就いた直哉であった。

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