第四輪:エアレイド王国
また長くなってしまった。文章を纏める能力が無いのは承知してます…
お花畑を突っ切りながら歩く直哉とシエル。遠足の時のようにはしゃぐ子供のようにスキップしてるシエルを見て、直哉は微笑んでいる。
ふと思い出したように、シエルは振り向くと、直哉と向かい合う。
「そう言えば、エアレイド王国は初めてですか?」
「この世界自体初めてだ」
「えっ?」
「あ、いや、その、何でもない…うん、エアレイド王国に行った事はないね」
「そうですかぁ…とってもいい国なんですよ!」
「ほぉ、詳しく聞かせてくれる?」
「はい!えーっと……どこから話しましょう…」
要約+補正するとこうなる。
――エアレイド王国
コラーシュ・キャパシェン国王の治める国家。中央にある王宮を囲むように城下町が展開していて、さらにその外側を巨大な城壁が覆っている。
別名"花の都"と呼ばれるこの王国は、ざっと見ただけでも分かるが花が多い。色とりどりよりどりみどりの花に囲まれるこの王国は、花独特の甘い薫りで満ちている。ちなみに、さっきのお花畑もエアレイド領である。
…俺にはもってこいな国だな、心の中で直哉は呟いた。
城下町は人で賑わい、あちこちで楽しげな談笑が響く。経済面においても発展している理想国家だ。
私はこの国が大好きです、とシエルは締め括った。
説明を聞いてるうちに城門が見える所まで来ていたようだ。
「それにしても……」
そう呟くと、眼前に迫る城壁を正面に見上げる。
「はい?」
「……でけぇ」
それもそのはず、何たって城壁が30mはあるのだ。右を向いても左も向いても、限り無く続く城壁が見える。難攻不落な砦のようなものを思い浮かべる。
「国民を守るために設けたものですからね。……でも、監視役の人にとって良いものとは言えませんけどね」
そう言ってシエルは地上から20m程の場所を指し、苦笑いする。そこには小さな部屋のようなものがあった。あんな距離を登るのは骨が折れそうだ。高所恐怖症な人には地獄以外の何でもない。
楽しそうだなぁ…でも、疲れそうだなぁ…とか考えてると
「姫様!」
城門の警備をしていた人が走ってきた。
そして、直哉に向かって
「貴様、何者だ!」
槍を突き付けた。
それもそのはず、直哉と手を繋いでる少女はこの国の王女様なのだ。
「わっ!」
「ま、ままっ待ってください!彼は私を助けてくれた恩人なんです!」
まさかの(ありがちとしか言えないけど)出来事に慌てながらも、シエルは直哉を庇った。
「恩人、ですか…?」
「はい…東の花畑で空を眺めてたら、急に破落戸に囲まれて…そんな私を破落戸から護ってくれたんです」
「そうですか…これは失礼しました。こちらの早とちりで貴方に不快な思いをさせたこと、心よりお詫びします。そして、姫様を助けいただき、本当にありがとうございます」
「んな大袈裟な…」
180度入れ替わったような態度に、ちょっと戸惑う直哉。
《助けたっつったって、偶然落下地点がその現場だっただけだし…》
口が裂けても滑っても言えない事である。
「まぁそんなに畏まんないでくれ。俺はただの平民なんだし」
「しかし――」
「いーからいーから。それとも何だ、姫様命令を聞き入れないとでも言うのかな?」
そう言ってシエルに視線を向け、えげつない笑みを浮かべるる。視線の意味を読み取ったシエルは
「そうですね。先程の無礼を見逃す変わりに、この条件を呑んでもらいましょうか」
と言い、警備員にいたずらっぽく微笑みかける。
そして、視線を直哉に向けてウインクしてみせた。直哉は思わずドキッとしてしまった。
「……分かりま…分かった。これからは普通に話させて貰うぞ」
「これが一番だね」
そう言うと、直哉は右手を警備員に差し出した。
警備員も右手を差し出し、しっかりと握手した。
「俺は直哉、神崎直哉。あんたは?」
「私はアリューゼ。見ての通り警備員だ」
「確かにそうだな。よろしくな、アリューゼさん」
「あぁ。こちらこそ、ナオヤ」
握手する二人は笑みを浮かべている。そんな二人を見て、シエルも笑みを浮かべる。
「そんじゃ、シエルを王宮に連れてくから」
「姫様と呼――」
「姫様命令です、承認しなさい」
満天スマイルを警備員――アリューゼに向ける。ビクッと肩を震わせるアリューゼ。
「は、はい……」
余りにも強弱関係がはっきりしすぎていて、思わず噴き出す直哉。
そんな直哉に視線を向けるアリューゼを目だけ笑ってない満天スマイルを向けて制するシエル。
「……はぁ、分かったよ。ちゃんと護衛するんだぞ、城下町に破落戸が居ないとも限らんからな」
「はいよ」
肩をすくめて見せるアリューゼに、肩をすくめて答える直哉であった。
「んじゃ、ちょっくら行ってくらー」
「気を付けてな」
城下町へ歩いていく二人を見つめながら
「ナオヤ、か…不思議なヤツもいるもんだな」
自分に言い聞かせるように呟くのだった。
「すげぇ…」
城下町を見た直哉の第一声は、驚きを隠せいないものだった。
「ふふっ、さっきも話しましたけど…とっても賑やかな所ですよ」
人の多さも勿論のこと、客を呼び寄せる声や楽しげな笑い声などが聞こえてくる城下町に、活気が溢れているという認識を持つのは当たり前のような事である。
そして、もう一つ気付いたことがある。
「…黒髪の人が居ないな」
「私もナオヤが初めてですね。今までに見たことすらありません」
何処を見ても黒髪の人が居ないのだ。町民のは赤白黄色、カラフルな色のものだ。
「好奇の視線が向けられると思いますけど、みんな良い人ばかりなので…気を悪くなさらないでくださいね?」
そう言って、直哉に好奇の視線を向けるシエル。
「へいへい……」
先が思いやられるな…と、本人も聞き取れない程の小声で直哉は囁くのであった。
回りの人々や露店を見ながら城下町を歩く直哉とシエルに
「あ、姫様こんにちわ!今日もとっても可愛いですね!」
「こんにちわ、可愛くなんて無いです!」
「またまたー…っと、彼氏と一緒ですか。お邪魔しちゃいましたっ」
「っ~!違いますっ、彼は友人なんですっ!」
「必死な姫様も可愛いです~」
「んもうっ!」
「姫様こんにちわ、とりたてのピピンの実、食べますか?」
「こんにちわ、それは美味しそうですね!欲張って申し訳ないんですけど、二つほど戴けますか?」
「彼氏の分ですか?お安い御用です。さ、どうぞ」
「むぅ…彼氏じゃないってば…まぁ、ありがとうございます。さ、どうぞ、ナオヤ。」
「あ、あぁ…」
「やーねぇ、照れちゃって、かーわいー!」
「ち、違いますよ!」
「あははははっ」
町民は好奇の視線を向けながら語りかけてきた。
シエルは言わずもがな、エアレイド王国の王女だからだ。よく城下町に降りて来るとは言えど、姫様に代わりはない。
直哉が視線を向けられる理由として、目立ちまくる黒髪に漆黒の瞳が挙げられる。誰一人として、黒髪すら見たことが無いのだ。
そんな好奇の視線を捌きつつ、直哉は気になった事を、ピピンの実をかじりながらシエルに尋ねる。
ピピンの実は野生でも多く見かける、定番中の定番と言った木の実である。一つの木にたくさんなるので、収穫量が多いのが特徴だ。人々も慣れ親しんでいて、平民から貴族までの誰もが口にする。
想像甘くて美味しいので、直哉のお気に入りになったとか。
「随分と仲がよろしいこと」
「みんなとはお友達ですから!」
「そりゃええこっちゃ」
そう言ってシエルの頭を撫でる。嬉しそうに笑うシエルを見て、直哉は思う。
《……人の上に立つ者、って言うより…》
『人と同じ場所に立つ者、だよな。俺様もそう思ったわ』
《そうかそうか、流石は一心同体だ》
『この娘がテンプレ王女じゃねーのくらい分かるだろ、常識的に考えて…』
《それもそうだな》
電気系ねずみと会話(?)して、この娘…シエルの不思議さを改めて実感するのだった。
「もうびっくりしないつもりだったのに…」
「王宮はエアレイド王国最大の建物ですからね」
王宮の大きさにビビる直哉に、えっへん、と胸を張るシエル。大きすぎず小さすぎず、丁度いいサイズの……おぉっと、閑話休題邪念退散。
『……ナオヤも、男なんだな』
《どーゆー意味だ》
『そーゆー意味だけど』
《そりゃ分かるが…だって、丁度いいサイズじゃん》
『……一心同体だと、思考まで似てくんのか…』
《はっはっは、よく分かってるじゃないか。ところで、お前男なの?》
『無礼なヤツだな。女に決まってんだろ』
《無理があるだろ》
『酷い言い様だ…何処を見たら男に見えるよ?』
《口調、"俺様"って言うセリフ、あとはシエルを見る目もだな》
『女も使うから。あと、観察もしっかりとだな』
《バカかてめえ、普通のおしとやかな女性はもっと優しい言葉遣いに決まってんだろ…女が女の子観察してどうする…まさか…》
『SHINE』
脳内で論争を繰り広げる直哉の視線に気付き、はっとする。胸を張ったポーズのままだったのだ。
慌てて隠すシエル、それを見て我に返る直哉。
沈黙が時を刻む中、シエルが先に口を開いた。
「……ナオヤの、エッチ」
潤んだ上目遣いの目で見あげ、顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうにするシエル。直哉に歯向かう術など無い。
「……ごめんなさい」
「………」
「………」
沈黙再び。
が、早くも破られてしまう。
「も、もう少しでお父様の部屋です、早く行きましょう!」
そう言うとずんずんと歩いてくシエル。直哉は置いてかれないようにわたわたとついて行く事しか出来なかった。
ペースを上げたシエルは猛烈に早く、あっという間に父の部屋の前についてしまった。
歩いてる最中、回りから好奇の視線を戴いたり、兵士に呼び止められたり…とにかく散々だったのは忘れられない。
シエルは…少し緊張しているようだ。小動物チックに震えたりしている。
「大丈夫だよ、嫌そうな顔したらすぐに出てくから」
「ひゃいっ」
直哉の励ましに対する返事を噛んでしまった。よしよし、と頭を撫でてやる。効果はてきめんだった。
深呼吸をし、ドアノブに手をかけて――
「めんどくさいからやだぁ~…あれ、シエルじゃないか。それと…」
「お父様!」
――問題発言と共に、変なおじさんが出てきた。
どうやらシエルの父らしいのだが…確か国王だったはずだ。こんなんでいいのだろうか…。
そんな直哉の内心は知らんとばかりに、シエルは言を続ける。
「この方はナオヤさんです。私が東の花畑に遊びに行ったとき破落戸が現れて、私を護ってくれた方です」
そう言って、あの時の状況を詳しく語るシエル。
おじさん(シエルの父)は、相槌と共に娘の話に耳を傾けている。
一通り話し終えたようだ。国王は直哉と向かい合うと、頭を下げた。
「私の愛する娘を救ってくれて、本当にありがとう。感謝してもし切れない程だ」
「いやいや、当然のことをしたまでだし、国王ともあろうお方が平民に頭をさげちゃ駄目ですよ」
「身分など関係無いさ。私はシエルの父親として、君に…ナオヤ君に礼を申し上げたいだけだ」
国王の話を聞いて、先程の考えを捨てる。この人は素晴らしい国王だ、と上書きしておいた。
直哉の脳内の王様は悪いイメージしか無く、こんな王様がいるとすら思って無かった。
新しい知識を得た瞬間である。
「…感謝の気持ち、素直に受け取らせて貰います」
直哉がそう言うと、国王は顔を上げた。
「ありがとう、ナオヤ君。私はシエルの父であり、エアレイド王国の国王であるコラーシュ・キャパシェンだ。よろしくな」
コラーシュは身長が190cm程と高く、50歳ぐらいの見た目からは想像がつかない程に肉体が引き締まっているのが分かる。笑顔が似合う好好爺で、話し掛けやすい雰囲気だ。
そんなコラーシュが左手を差し出す。直哉もそれに応える。
「こちらこそよろしくお願いします」
そしてしっかりと握手した。
「食事が出来次第、ご一緒しないかね?腹も減っているだろう」
「えぇ、ペコペコです…お言葉に甘えさせて戴きます」
にっこりと笑い合う二人。
「そしたら、食事が出来るまでは寛いでてくれ。客室を貸そう。シエル、案内してあげなさい」
「はい、お父様!」
嬉しそうに頷くシエル。その様子を微笑みながら見つめているコラーシュ。
《…親子だな》
『親子の鑑だ』
《あぁ……》
『……悪かったな』
《え?》
『今は一心同体だ、ナオヤの考える事はお見通しって訳』
《なるほどね……親父にお袋、元気かなぁ……》
『………』
直哉はちょっとだけホームシックになってしまった。
《両親や友達、親戚のみんなは元気だろうか…そもそも、この異世界から返る事は出来るのだろうか…》
落ち込んでる時の思考はどんどんネガティブなものになっていく。
そんな直哉の様子に気付いてない様子のシエルは
「こっちですよ!」
「あ、あぁ」
直哉の手を引っ張り、客室へと導く。
今思うと、この異世界で初めて感じた人の温もりは、シエルが直哉に泣き付いて来たあの時感じたものだった。
両親も知り合いも誰も居ない異世界で、初めて感じた温もり。これ程まで頼もしいものなんだな…と直哉は思った。
知らぬ間に強く手を握る直哉。シエルは黙って道を急ぐのだった。
「ここが客室です」
ある扉の前でシエルは止まり、直哉と向かい合う。
50m以上はあろう廊下の突き当たりまで、左右の壁には扉が連なっている。だいたい10m感覚だと考えると分かりやすいと思われる。
部屋の大きさは相当なものだろう。
シエルがドアを開け、直哉を中に誘う。
「でけー…」
今日は大きさにビビりっぱなしである。
部屋には天井からはシャンデリアが下がり、テーブルに椅子、2mはあろう巨大なソファーにクローゼット、そして一人で寝るには余りにも大きすぎるベッドが置いてあった。
にも関わらず、部屋の中には何もない自由なスペースがたくさんある。
「まるで豪邸だな…」
「ふふっ、この部屋を自由に使って下さって構いませんよ」
そう言って手をひいてソファーに直哉を座らせ、自分もその隣にちょこんと座るシエル。
「……ナオヤ」
「ん?」
「何か隠し事してませんか?」
「………」
「さっき父と話してる時、少し表情が暗くなってたし、そう言えば破落戸に襲われた時も、何もない空から降ってきてたし…」
「……シエル……」
あの時の表情の変化を見抜いていた事にビビる直哉。
「何も隠さなくていいですよ?私もナオヤに打ち明けて、楽になれたんですから」
「……はは、シエルは凄いな…全部お見通しって訳か……」
「えっへん、町のみんなと話してたらこうなったのです」
胸を張ったポーズをとり、すぐに両手で隠してしまうシエル。よっぽど恥ずかしかったらしい。
そんなシエルに苦笑いをし、深呼吸をする。
そしてシエルを見据える。直哉の真剣な眼差しに、シエルも真剣な雰囲気を纏う。
「……俺は、この世界の人間じゃないんだ」
直哉の本来いた世界のこと、両親のこと、夢でお花畑に居たこと、上から紫色でガラの悪い生き物が降ってきたこと、そいつが神様だったこと、そいつが直哉を、異世界と繋がる電気の輪に突き落としたこと、輪と異世界を繋ぐ空間で一心同体になったこと、そして、落下地点が夢で見たお花畑と同じだったこと。
『ナオヤ』
《ん》
『右手を前に出せ』
《なんで?室内で放電する気か》
『具現化する』
《出来んのか!》
『お前の世界で具現化してたぞ。蹴り飛ばせたし、触る事も出来る筈だ』
《よし任せた》
和気藹々として右手を前に出す直哉、そんな直哉を不思議そうに見つめるシエル。
すると、右手の掌に黒紫色の雷が集まり始める。少しずつ膨らみ、直径10cm程の球体になる。
刹那、眩い閃光が部屋を包む。直哉もシエルも目を瞑る。
「よォ」
そんな声が響き渡った。うっすらと目を開ける直哉とシエル。二人が直哉の右手に視線を向けると、いつぞやの電気系ねずみがいた。
「わぁ~!」
「………」
嬉々とした視線を向けるシエルと、嫌々見上げる直哉。いつぞやの電気系ねずみのえげつない顔をしている。
「初めましてシエルちゃん。俺様が件の神様だ。ナオヤ何だその視線」
「可愛い~!」
「うっせ」
目がキラキラしてるシエル。ぱっと見"だけは"確かに可愛いのも頷ける。が…中身を知ってしまった直哉は複雑だ。
「まぁこれで本物だって証明は出来ただろ。」
「凄いです~…」
「…何だ、その生まれたての小動物みたいな眼差しは」
「その、えっと……触らせてくださいっ!」
「………」
黙ってシエルの元へ移動する電気系ねずみ。シエルに抱き締められ頬擦りされながら、満天の笑みを直哉に投げ掛ける。一握りじゃ済まない程の悪意を伸せて。
《テメェ…》
『ククッ、ざまぁみやがれってんだ』
《いつかコロス!》
『ヒャハッ(はぁt』
「あ、あの~…」
「「あん?」」
「ふぁっ!」
直哉の視線に気付いたシエル。呼び掛けてみると一人+一匹から返事が帰ってきた。
返事をした瞬間、得たいの知れない後悔が一人+一匹を襲う。
「「いや、その、これはそこの(電気系ねずみ・ナオヤ)が悪い訳で…」」
「「オイ、真似すんじゃねぇよ、(電気系ねずみ・ナオヤ)!!」」
「仲がいいんですね~」
「「断じて違う!」」
綺麗にハモる姿を見て噴き出すシエル。なんだかんだでうまくやっていけそうだ。
…そして直哉は気付いた。
《さっきまでの気持ちは何処に行ったんだろう…》
そう、よく分からない寂しさなど諸々がまるごと吹っ飛んでいたのだ。
電気系ねずみとシエルのお陰である。
《……こういうのも、いいのかな?》
相変わらず戯れる電気系ねずみとシエルを見て、直哉は初めて笑みを浮かべることが出来たのだった。
コンコンッ
ドアをノックする音が響き渡る。直哉がドアを開くと、リアルメイドさんがいた。
「失礼します。ナオヤ様ですね?お食事の準備が出来ましたので…あら、シエル様もご一緒ですか?」
「こんにちは、セラさん。ナオヤとお話してましたっ!」
セラと呼ばれたメイドさんは、微笑みで返事をした。
身長はシエルと同じくらいで、腰まで伸びる青い髪はとても可憐である。目は深緑色で、吸い込まれそうな錯覚を覚える。服装はリアルメイドだった。
「それじゃナオヤ、行きましょう」
「あぁ」
部屋を出る二人。直哉は右手に電気系ねずみを鷲掴みにして。
「テメェ!離しやがれ!」
「あ、そう。じゃあ離してやるよ」
そう言って、窓から右手を突きだし、右手を離した。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「あーあーあー、きこえなーい」
『はぁ、はぁ…テメェ…』
いつの間にか直哉の中に戻ってたらしい。
《さっきの罰だ》
『………』
黙る電気系ねずみであった。