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第三十一輪:戦略的散鬱(前編)

たまには短い文章も良いですねー!

主に腕や腰が痛まないところが(ry

窓から朝日が、今日も朝が来ましたよーと言わんばかりに射し込む。太陽はグレる事無く、いつもと変わらない仕事を繰り返していた。

そんな太陽でも目を見開いてしまいそうな状況が、エアレイド王国の王宮の、端っこの客室に広がっていた。


「うぐぐぐ…」


朝からむさ苦しい呻き声をあげているのは直哉だ。苦しそうな声をあげるのには理由があるのだ。


「すひー…むにー…」

「くぅー…」


同じ部屋からは、整った寝息が聞こえてきている。間違いなくシエルとセラのものだが、二人の寝相がおかしい。

簡単に説明すると、直哉は普通に寝ているのだ。だが、直哉の気管支を塞ぐようにシエルが横になり、お腹を圧迫するようにセラが眠っているのだ。二人が直哉となす角は垂直で、カタカナの「キ」をイメージしてくれると分かりやすいだろう。


「うぅ…天井が…やめて潰さないで…」


直哉が胸らへんを掻きむしり始めた。夢の中で、直哉は何もない部屋の、コンクリート製と思われる床に寝そべってるのだ。とは言っても、両手両足と首が金具で固定されていたが。ガルガント王国の拷問を思い出し、直哉は慌て始めた。

すると、天井が近付いてきた…否、下がってきたのだ。現在進行形で絶賛圧迫中だ。


「やめっ…む、無理…色々出る…うぐっ」


逃げようと必死に足掻くのだが、金具はびくりともしない。少しずつ下がってくる天井に、直哉、万事休す。

壁がより一層圧力を掛ける。直哉はえげつない音を鳴らしながら、到頭耐えきれなくなったようだ、ぺしゃんっと潰されてしまった。


「~~~~~!!」


言葉にならない悲鳴と共に、直哉がベッドと垂直に跳び、ベッドと平行に空中で制止した。

直哉が跳び跳ねる瞬間、二人は同時に起き上がった。なので、被害を被る事は無い。

引力により、直哉はベッドに吸い寄せられるように落下した。


「おぶっ!」

「みゃ!」

「ふぁ!」


その衝撃波により、二人は文字通り飛び上がった。慌てて周りを見渡し、現状を把握しようとする。すると、両手両足や身体中の安否を確かめる直哉が視界に映り込んだ。


「手…良し、足…良し、首…良し、他…異常無し、と…危うくペーパーソンになるところだったぜ…」

「全然上手くねェよ…」


瞬時に突っ込みを入れたのはウィズだ。昨日具現化し、今までそのままだったらしい。

そんなウィズを華麗にスルーし、二人の視線に気付いた直哉は、二人と向き直る。


「あれ、おはよー…って、何してんの、ねぇ?!」


と、同時にびっくりしながら飛び上がり、二人から目を逸らした。耳まで真っ赤に染まっている。


《なななななんで、二人が俺の隣で寝てんの?!しかも、こりゃちょっと危ないだろ?!》

『昨日お前を心配して、ここに来てくれただろ…服が乱れてんのは知らん』

《前者はともかく、後者は何ぞ!!》


目を逸らした直哉を見て、二人は同時に首を傾げた。自分の服が、まるで激しく動いた後のように乱れている事など、知る由も無い。ついでに、直哉も服が脱げかけていたのだが、当然の如く気付かない。

二人が首を傾げると同時に、ドアが開かれた。そこから恐る恐ると言った様子で顔を覗かせたのは、直哉が控え室で頭を撫でたメイドだ。直哉達を視界に捉えた瞬間、微動だにしなくなった。同時に、直哉が屍と化した


「あ……」

「ちょ……」

「おはようございます!」

「おはよ~」


それに気付かない能天気な二人は、当然だと言わんばかりの顔で挨拶をする。


今のメイド(と、この光景を目の当たりにする「普通の」人)の思考を掻い摘まむと、次のようになる。

一つのベッドの上で、寄り添うように横になる男の子と二人の女の子。三人の服は乱れ、男の子…ナオヤの顔は真っ赤だ。そして、傍らの女の子…シエルとセラは、潤んだ目を向けてきている。本来は寝起きだからなのだが、メイドが知る訳が無い。


メイドと直哉の表情が、世界の黄昏を目の当たりにし、最期まで生き残ってしまった人間のそれになる。つまり、絶望と恐怖と戦慄と孤独と…ありとあらゆる負の感情を比率関係無しにごちゃごちゃと混ぜて出来上がった感情を滲ませたのだ。

そんな表情を浮かべたメイドの顔色が土気色になり、直哉は最早黒としか表現出来ない色になった。


「あ…あぁ……」


メイドが呻き声と共に、ゆっくりと後ずさった。尻餅をつき、床に座り込んでも尚、ただひたすら後ずさった。


「うわあああああああん!!」


悲鳴と共に、メイドは立ち上がる。そして、音速で走り去った。

その様子を唖然と見つめていた二人は、直哉がベッドに倒れ込む音で我に返った。


「な、」

「ナオヤ?」


直哉から返事は帰ってこない。先程のメイドと同じ表情をしていて、黒くなっていた。


「どうしたの?ねぇ、どうしたの?」


シエルが直哉を揺さぶる。かくかくと揺れるだけで、変わったリアクションは無い。

頬っぺたを摘まもうと、直哉の頬っぺたを触った。そして、すぐに引っ込めた。


「?!」


冷たかったのだ。生気を感じさせず、まるで土偶のようだった。

シエルはセラを見た。そして、セラもシエルを見た。目があって、服が乱れている事に気付いた。


「「!!!」」


慌てて服を整える二人。すると、直哉の顔色が青ざめたモノにまで回復した。頬っぺたも温かくなったので、シエルは安堵の溜め息をついた。だが、相変わらず直哉は動かない。再びあわあわと慌て始めたシエルを、ウィズが短い腕で制した。


「短いは余計だ!」

「え?」

「…いや、なんでもねェ。まぁ離れときな、お二人さん」


ウィズが二人を離れさせた。何をするのかと見ていた二人の前で、ウィズは深呼吸をする。

そして、ベッドを強く踏み込み、高くジャンプする。とは言っても、天井ギリギリまでだが。

そのまま直哉の上らへんまで飛んで、そのまま下に落ちる。


「天誅ゥーーーー!!」


ドスン!


「ふごっ!!!」


痛々しい効果音と共に、直哉のお腹目掛けてドロップキックが突き刺さる。

苦しそうな呻き声を発し、お腹を抱えて踞る直哉。そんな直哉を見たウィズは、ガラの悪すぎる顔を歪め、右手の人差し指を天井に向けて突き出し、楽しそうに叫んだ。


「ブレイクアーウト!!」






何とか一命を取り留めた直哉は、二人と共に食堂に向かった。腹癒せに途中の窓からウィズを全力投擲したが、いつの間にか直哉の中にもどっていた。


『クククッ…残念だったな』

《こんにゃろぅ…》


今更気付いたが、ウィズが直哉の中に戻ってしまったら、それこそウィズの天下である。自分をぶん殴る訳にはいかないし、自分に入るダメージがウィズに直結するとも限らない。昨日の二日酔いが良い例だ。だが、ウィズが中でニヤニヤしてると考えてしまうと――


『ケケケッ、イライラが伝わってきますなぁ!』

《だぁークソッ!うるせーんだよボケ!》


――こうなってしまう。

ストレス社会に生きる下っ端サラリーマンよりも膨大なストレスを抱え込んでいる、と直哉は自負している。

単なる自負だと言う事は、お子ちゃまな直哉には分かりはしない。


《言葉に気を付けろや!》

『…ときどき、ナオヤがわからなくなります』

《棒読み自重しやがれ!》


ナレーションは直哉達に見えない(聞こえない)筈である。だが、鋭いと言うか被害妄想が酷いと言うか…とにかく"変な直哉達"には聞こえてしまうようだ。


苛立ちを極力隠しながら食堂に向かう直哉一行は、近寄りがたいオーラを放っている。その威力は、メイド達すら避ける程だ。

周りに苛立ちを覚えながら、一行は食堂のドアを開けるのであった。






直哉はただひたすらに咀嚼を繰り返し、ただひたすら飲み込むと言う動作を繰り返していた。いつもの食事のペースの二倍をキープしていた。お腹が空いていたのもあるだろうが、ヤケ食いと言うのが大きいだろう。

一同が目を見張る最中、直哉はテーブル上の料理の六割をお腹に突っ込んだ。

コップ一杯の水で口直しをし、溜め息を吐き出した。


「ふぅ…」


すると、コラーシュが口を開いた。力の無い目を直哉に向ける。


「何をイライラしてるんだ、ナオヤ…」

「コラーシュさんこそ、随分と顔色が悪いですよ?」

「うぐ…いや、これは――」

「お酒の飲み過ぎで二日酔いですか?」

「…言い返せない…」


良く考えると、コラーシュは"被害者"だ。"加害者"は、隣でのほほんとしているフィーナである。

溜め息をつきながら、フィーナに注意を促した。コラーシュ程ではないが、こちらも二日酔いに苦しめられてるようだった。


「フィーナさんも、無理に飲ませちゃダメじゃないですか」

「あらあら、お酒を勧めたのは貴方よね?コラーシュ」

「なっ!わ、私は――」

「そうですよね?」

「はい」


コラーシュ、撃沈。完全に尻に敷かれてしまっているようだ。王国で一番偉いのは、コラーシュではなくフィーナではないだろうか。

この強弱関係を目の当たりにしてしまった直哉は、この世界の女性の強さだけではなく、男性の弱さまで垣間見たのであった。


それからしばらく、バカップルの漫才のような会話が続いた。思わず笑ってしまいそうになるのを堪え、動くに動けない状況を打開する策を練り始めた。

だが、先にコラーシュの苦し紛れの話題に打開されてしまう。


「そっ、そうだ!たまには気分転換も必要だろ?ガープも遊びに来いと言ってるのだし、今日はぱぁっと――」

「あなた達だけで行ってらっしゃい…とは言っても、道が分からないかしら?」

「それなら、私が――」

「たまには迷子になるのもいいかしらねぇ…」

「随分と適当ですね、フィーナさん」

「うふふふふ、そんな事無いですよ?」

「あの、私は――」

「コラーシュ、貴方に発言権は無いですよ?ついでに生存権も拒否権も、基本的人権も」


コラーシュの発言をことごとく切り捨て、最後には存在から否定するフィーナ。コラーシュが地面に跪き、絶望を表現するのを見て、フィーナは冷笑を堪えきれなかったようだ。


シエルを見ると、苦笑いしながらもその様子を見ていた。どうやら日常茶飯事らしい。

対するセラは――


「フィーナ様ったら、こんなところで…次はどうするのかしら…」


――目をきらきらと輝かせながら、二人の様子を眺めていた。脳内では素敵な妄想が果てしなく広がってるに違いない。


これがコラーシュ達の日常だ。直哉は改めて大きく深く、意味深な溜め息をぶちまけるのであった。






王宮の入り口に、直哉達と王国第一騎士団の団長、そして副団長達が集まっていた。一行はガルガント王国に向かうため、大型の馬車に乗り込もうとしている。


ガルガント王国への道は、セラが頭に叩き込んでいたようだ。それをフィーナに伝えると、コラーシュの手首を掴み、恐ろしいまでの笑顔を浮かべながら出ていった。部屋から出ていく時「もしものために、護衛でも連れてくと良いわ」と言って、王国第一騎士団の面子を同行させてくれたのだ。

そんな気遣いはできるのに、何故コラーシュには手厳しいのだろうか…考えてみたが、直哉には理解不可能だった。


考え込んでいる直哉の後ろから、黒くて大型の狼らしき生命体が近付いて来た。気配を断ってるのか、直哉は気付かない。


「ウォン!」

「うわぁぁ!…リオン、びっくりさせんなよ…」


急に吠えた狼…リオンに、直哉は驚く事しか出来なかった。同時に、周りが笑い出した。


「謀られた…」

「ワゥ」


リオンが牙を剥き出した。きっと笑顔なのだろうが、鋭く尖った牙を見せ付けられてしまうと、やはり恐怖が勝ってしまう。

そんなリオンを撫でていると、シエルがてくてくと歩いてきた。


「おはよ、リオン」

「ワォン!」


リオンが伏せた。それを見たシエルは、ニコニコしながら背中に乗った。


「ふわふわー…ふかふかー…」


シエルはリオンにしがみつき、撫でたり頬擦りしたりしている。リオンは尻尾を影分身させているが、一向に立ち上がらない。

不意に直哉を見上げると、小さく吠えて促した。それを受けて、直哉は自分待ちだと言う事に気付いた。


「あー、わりぃわりぃ」


慌てシエルの後ろに跨がると、リオンは待ってましたと言わんばかりに立ち上がる。


馬車組も全員が乗り込んでいて、準備万端である。因みに、今回は騎士団の面子も馬車に乗っている。馬を準備するのが面倒だったらしい。

アリューゼが「手綱は俺が握るから…頼む!」と懇願してきたのは、内緒にしておこう。


それを確認し、直哉は張り切って言った。


「うぉーし、行くかぁ!」

「「「「「「「「おー!」」」」」」」」

「ワゥゥ!」


直哉の呼び掛けに八人と一匹が返事をした。アリューゼが手綱を操り、馬車はゆっくりと走り出す。リオンも馬車と同じ速度で走り出した。


王国から出るためには、必ず城下町を抜けなければならない。つい最近、城下町に遊びに行った直哉にとって、それは不安以外の何でもない。だが、その不安は杞憂に終わった。


城下町に差し掛かった一行は、町民達の暖かい眼差しを受け取っていた。

この前のように飛び掛かってきたりはせず、代わりに眩しい笑顔を向けている。だが、真っ直ぐ城壁に続く道の左右に町民がずらりと並んで、口々に「英雄だー!」や「こっち向いてー」、「シエル様ー!」、「あのわんこ、すごーい!」等とのたまっているのには、思わず苦笑いしてしまった。


「英雄って言われるのはいいとして…これはちょっと大袈裟じゃね?」


呆れた口調でシエルに言った。すると、シエルが振り向いて、


「ナオヤがそれ程の事をしたんだよ。ありがとね、英雄サマ?」


直哉の鼻先を指で突き、ウインクしてみせた。


周りから様々な感情を含んだ悲鳴があがる中、鼻先を突かれた直哉は、心臓の鼓動が急に速度を増し、身体中が火照るのを感じた。シエルの行動にドキッときたのだ。


「あ、あぁ…」


直哉はシエルから真っ赤な顔を背け、そっぽを向きながら返事を返した。恥ずかしすぎて、面と向かってなど不可能だった。

それを見たシエルは、後ろに座る直哉に寄り掛かる。直哉の体温や速い鼓動を感じ、くすくすと笑った。


「っ~~~~!!」


寄り掛かられた直哉は、言葉にならない声をあげながら姿勢を正し、心臓以外動かす事を止めた。否、止めざるをえなかった。

甘い香りが鼻を擽り、さらさらな金髪は風になびき、小柄な身体は直哉に凭れ掛かり、少女の鼓動や体温が優しく伝わる。いつも感じるそれらとは比べ物にならず、それらは直哉の煩悩の増殖を大いに手助けした。


今の直哉には、一際大きくなった町民の叫び声すら届かない。隣の馬車から送られてくる視線にも気付く事はない。


『少しは慣れろよ…いや、初だからこそいいのか…?』


もちろん、ウィズの呟きも例外ではなかった。






エアレイド王国を出てしばらくした頃、ようやく動く事を思い出した直哉は、深く息を吸い込んで、ゆっくりと吐くと言う動作を繰り返す。特別な呼吸法のようだが、ただの深呼吸である。


少し落ち着きはしたものの、身体中は火照ったままだ。しかも、シエルも寄り掛かったままである。

それを知ってか、シエルが揶揄うように言った。


「ナオヤ可愛かったよー」

「うっ、うるせー!」


裏返った声で抵抗する直哉。だが、完全に逆効果にしかならなかった。

馬車の面子はシエルの肩を持ち、直哉をフルボッコする。


「あれぇ?顔が赤いよー?」

「初ちゃんでしゅね~」

「青春だな…」

「うぅ~…シエル様、羨ましいですぅ~…」

「ははは、耳まで真っ赤だぞ、ナオヤ?」

「お似合いですよ、お二方」


上からセラ・ミーナ・ラルフ・セフィア・ルシオ・アイザックである。セフィアの言葉には、直哉を揶揄うと言うよりも、シエルを羨む気持ちの方が籠っていた。


流石に敵が多すぎると感じたのか、直哉は悔しそうに押し黙る。ここで抵抗しても、それを上回る勢いで弄られるのがオチだろう。

直哉が溜め息をつく。それを聞いたアリューゼが振り返り、直哉とアイコンタクトを交わす。


"言葉は要らない、全ては目線で事足りる"


そう言わんばかりに、アリューゼからバカにする意識を感じ取った。それも、物凄くたくさんの。


アリューゼが正面を向く。その肩はかすかに震え、笑いを堪えていると言うのが良く分かった。

だからこそ、何も言い返さなかった。


直哉が深く息を吸い込む。先程の深呼吸など比べ物にすらならない程吸い込み、数分掛けて吐き出す。

シエルの背筋に冷たい何かが走る。慌てて振り返ると、直哉が何やら不穏な空気を纏っていた。


「な…ナオヤ?」


シエルがおっかなびっくり話し掛けた。

すると、直哉はシエルの頭を撫でながら言った。


「大丈夫、シエル"には"何もしないから」

「ほぇー…」


疑問符を浮かべながらも目を細めるシエルを見ながら、直哉は微笑みを浮かべた。だが、心の中には表情とは真逆、それ以上の陰謀が渦巻いていた。


《後ろには気を付けろよ…くくっ…》


直哉以外の八人の背筋を、氷を滑らせた時のような悪寒が駆け抜けた。

直哉が何かを企んだ頃、エアレイド王国に聳える王宮にある国王の部屋の中では、


「うぅ…も、しません…ゆるひて…」

「まだまだ生温いですよ?」


地面にうつ伏せに横たわるコラーシュがフィーナに、文字通り尻に敷かれていた。

朝食の時にコラーシュが言ったデマカセが原因だ。お酒を勧めたのは、間違いなくコラーシュだったのだ。


「いやいやいや、もう十分だ!頼む、たすけ――」


不意にフィーナが立ち上がる。ほっとしたコラーシュが立ち上がろうとすると、足を払われた。ドスンと床に尻餅をついたコラーシュ。顔はみるみる青ざめ、頬はピクピクと痙攣している。

そんなコラーシュに、悪魔の囁きが聞こえてきた。


「さ、お仕置きの時間ですよ?」


その日以来、王宮に響き渡るコラーシュの絶叫には、「王様の憂鬱」と言う名前が付けられるようになったのであった。

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