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第十三輪:騎士団

明日から学校のせいか、内容が残念になってしまいました…


学校が始まるから更新速度が狂うと思うので、ごりょーしょーくださいましprz


朝(午前六時くらい)。

それは神聖な一日の幕開けで…色々とあって…まぁ、一日の始まり。


なんかデジャヴだとか思いつつ、直哉は朝の微睡みを堪能していた。

隣にはシエルの温もりを感じる。シエルのお願い遂行のため、一緒に眠ったのだ。ただ一緒に眠っただけである。そこの君、変な妄想はしちゃダメだよ!


誰かに向けてシエルと一緒に眠った事に対する自己弁護を延々と言い聞かせると、不意にドアをノックする音が響く。


「うー…あと五分…」


駄々をこねつつ、直哉は寝返りを打つ。…寝返りと言うより、シエル側に寄った、見方を変えれば抱き着いた、と言うのが正しい。


ドアが開く。そして、メイドさんが入って来た。どうやらシエルを起こしに来たようだ。

返事が無いから、きっと熟睡でもしてるのだろうと思ったのだろう。


シエルに声を掛けようと、視線をシエルに向ける。


「シエル…さ……ま………」


声は小さくなっていった。見知らぬ黒尽くしの男の子がシエルを抱き締めてるのだ。

あの純情シエルが、男の子と一緒に…


驚愕の光景に、思わず座り込むメイド。その拍子で机にぶつかり、オリハルコン製のブレスレットが床に落ちる。


カラーン…カラカラカラ……


メイドは目を見開く。そして、やってはいけない事をしてしまったと思った。


その音を聞いた男の子…直哉は、半ばびっくりした様子で起き上がろうとして、途中で止まった。シエルの頭の下に腕があるからだ。

そして、座り込むメイドと目が合った。


目が合った途端、ビクッとなるメイド。あり得ないモノを見たように目を見開き、開いた口は震えるばかりだ。身体もガクガクと揺れている。


「あ………あぁ………」


メイドの如何にも絶望的な状況ですと言うのを感じる様子と言葉に、端から見たら自分達が異常なだけだと気付いた。

取り敢えず、挨拶からだ。第一印象は大事である。


「おはよう」

「あ……え?」


聞き返された。


「大丈夫ですよ、取って食ったりはしません」

「と、取って…食ったり…」


復唱するメイド。直哉を見て、シエルを見て…顔が真っ青になった。


「ま、まさか…シエル様を…取って――」

「はいそこまでー!」

「ひぃっ!」


素晴らしい妄想を繰り広げそうだったので、無理矢理中断させた直哉。

説明はシエルに任せようと言う事で、シエルを揺さぶり起こす。


「おい、シエル」

「うにゃー…も少しぃ」


可愛らしい抗議の声を発し、どっかの誰かのように寝返りを打った。

このままじゃ埒が明かない…そう思った直哉は、一撃必殺をぶちかました。

シエルの耳元に口を近付け、必殺技を繰り出した。


「おはようセラ。そう言えば聞いてくれ。シエルが夜中に、淋しくなって俺の布団に――」

「ダメぇっ!!」


効果は抜群だったようだ。

慌てて飛び起きて、回りをキョロキョロ見渡す。傍には直哉しか居ないようだ。

セラが居ない事に安堵の溜め息を一つ。


「ナオヤ、酷いよぅ…びっくりさせないでよー」

「わりぃわりぃ。でも、このままじゃ…このメイドさん伝いに、セラの耳に届くぞ」

「「?!」」


メイドとシエルがぴくりと動く。メイドは自分が口封じされるであろう事に、シエルはメイドが居た事に反応したようだ。


バラバラにされて、冷たい土の中に埋められるのでは…と素晴らしい妄想を繰り広げるメイドに


「おはようございます、いつもご苦労様です」


優しく微笑みかけるシエル。

メイドも少しは落ち着いたらしい。シエルに挨拶を返すと、説明を求めるような眼差しを向ける。


その眼差しに応えるように頷くシエル。そして、直哉と寝てた理由(完全捏造ver)を話した。



――昨晩セラから怖い話を聞き、怖くて眠れなくなったシエル。両親の元で眠るのは恥ずかしく、セラの元は論外だ。メイドの元とも考えたが、毎日お世話になってるので、これ以上手間を取らせたくない。すると、自分と身近な存在は直哉だけになり、不本意ながら傍に来てもらった。奥手な直哉が手を出すとは考えられず、同じベッドて寝た。抱き締めてたのは寝相の悪さが災いしたので、故意は無かった。怖い話はセラから聞かされたので、この事をセラが知ったら最後、苛めの種にされてしまう…なので、セラには話されたくは無かった――



短時間で考えた割にしっかりとした意見だ。素直に感心し、シエルと目が合うと首を縦に振って見せた。

シエルも笑みを浮かべてそれに答えた。


メイドの中でけたたましく鳴り響く警戒アラームが解除されたようだ。直哉を見る眼差しが「この世の終焉を目の当たりにした目」から「普通の男の子を見る目」に変わった。


「そう言う事でしたか…申し訳ございません、勘違いしてました…てっきり、ナオヤ様がシエル様を――」

「わー誤解が解けて良かったなーシエルー」

「え、えぇ、とても良かったですねー、ナオヤ」


このメイド、頭の中身がピンク一色のようだ。直哉がシエルを…と言う妄想を捨てたく無いらしい。

妄想暴走するのだけは遠慮とばかりに、話題を強制終了させる二人。そして、立ち上がったシエルが


「も、もうこんな時間。もう朝食が…ナオヤ、急ぎましょう。メイドさん、毎日ご苦労様です」

「あ、あぁ。急がなきゃみんなに迷惑かけちまうな」


部屋からの脱出経路まで作ってくれた。

これに乗じて逃げる事にした。それに気付かないメイドは


「行ってらっしゃいませ~」


ペコリとお辞儀をして、足早に立ち去る二人を見送るのだった。






直哉は王宮でよく目撃される客人と言うポジションまで上り詰めたらしい。相変わらず珍獣を見るような眼差しはあるが、挨拶をしたら返してくれる程にはなった。

いつもお偉いさんと並んでるのもあるだろうが。今日はシエルである。


しかし、直哉は悩んでいた。


《なぁ、ウィズ》

『ふぁー…なんだ』

《俺達さ、いつまでここにいていいのかな…》

『さぁ…』

《シエルの好意で国に来させては貰えたけど、いつまでも客人扱いって訳にも…》

『……言われてみたら、確かにな。王宮にタダで住み込んでるとか、良い印象がねェな…』

《だけど俺は無一文…どうしたもんかねー》


直哉は王宮の客室に泊まってる王女様の客人扱いだ。そして、王宮の客室を利用するのは、外国からの使節位だ。

豪華過ぎる部屋に泊まれるのは良いが(何回か鳥になりかけたけど)、直哉の心も図太くは無いし、周りの目も気になってくる。


《コラーシュさんに聞いてみっかぁ…》

『それなりの覚悟はしておけよ』


ウィズに言われて、追い出された自分を想像する。

仕事が無くて、表通りを彷徨く始末。捨てる予定の残飯を貰い、裏通りの狭く暗い通路で寝る…


「……ヤ、ナオヤ?」

「あ…あぁ、すまんすまん」


暗すぎる未来を想像してた直哉。表情にも出てたらしく、シエルが心配な顔をして直哉を覗き込む。


「顔色悪いよ?大丈夫?」

「ん…腹ペコすぎるからかなぁ…何か食べれば治るかな」

「そっかぁ、今日もいーっぱい食べてね!」

「あぁ、そうするよ。シエルの分は残すからな」


シエルの頭をなでなでする。やっぱり撫で心地最高だ。撫でられてるシエルの表情も最高だ。


そして、すぐに食堂に着いた。流石にお先真っ暗な想像をしてたら、食べられる食材様に失礼だ。

頭をぶんぶんと振り、悪いイメージを吹き飛ばす。壁にぶつかってずるずると落ちたイメージを想像(?)して、不敵に笑う直哉。

シエルは不思議がっていたが、黙ってる事にした。


食堂の中に入ると、お馴染みの面子に見馴れない顔が一つ。

取り敢えず挨拶をする。


「うーっす」

「おはようございます!」


シエルも倣って挨拶をした。


「あぁ、おはよう」

「おはようございます」

「おはよーう!」

「おはようございます、シエル様、ナオヤ様」


上からコラーシュ・フィーナ・セラ・見馴れない人だ。セラは昨日の事などさっぱりと言ったような笑顔だ。


「あの、貴方は?」


見馴れない人に直哉が尋ねた。


「これは失礼しました。王宮の料理長で御座います。食事を綺麗に食べて下さる方を一目見てみたくて、同席させてもらってます」


料理長がにっこりと笑う。なかなか優しい感じがする。


「あ、どうも。毎日の料理が美味しすぎて、手が止まらないんです」

「ありがとうございます」


いつもは残される料理が、直哉が王宮に来てから残らなくなった。料理人として、これ程嬉しい事はそう無いらしい。


「まぁ、せっかく作りたての料理なんだし、冷める前に…」


直哉が料理をガン見すると


「そうですね、お腹ペコペコです!」


セラが同意した。


直哉は先に座ったシエルの脇に座り、両手を合わせる。


「いただきます」

「「「「いただきます」」」」


食事開始の合図は、最後に座った人が出す事になっている。直哉が合図を出すと、朝食タイムが始まる。


料理長は直哉を見て、目が点になっている。普通の人の数倍の早さで料理を掻き込んでいるのだ。マナーもへったくれも無いが、それを差し引いても驚愕するレベルだ。

コラーシュ達は見馴れた光景なので、特に何も言わない。


因みに、直哉の脳内から"肉"に対するトラウマは消え去っているようだ。普通に食べている。


黙々と食べ続けたせいか、テーブルの上を埋め尽くしていた数々の料理が、跡形も無く消えた。半分は直哉が捕食したが。


「ふぃ~、食った食った」

「相変わらず凄いね…」

「………」


シエルが驚き、料理長は沈黙している。

そして、料理長は直哉の元に近付き


「ありがとうございます!!」

「?!」


思い切りお辞儀した。綺麗に直角を描く腰は、なんか凄い。


「いやいやいやいや、料理が美味しいからですよ。美味しい料理をありがとうございます」


直哉もぺこりと頭を下げる。直哉としては逆に申し訳無い。なんせ、タダ食いである。


そんな直哉を見て、コラーシュは考え込んだ。確かにシエルの客人としてここに居るが、客人は王宮に何日も滞在して良いモノでは無い。

しかし、シエルやセラ、それにコラーシュやフィーナも直哉が気に入っている。不思議な魅力を持つ直哉に、引き寄せられてるのだ。

せめて、どうにかして理由が付けられれば――


「…そうか、理由を作ってしまえば…」


独り言をぼやくコラーシュ。隣に座るフィーナには聞こえたらしく、不思議な顔をしている。


ぺこぺこ合戦が終わったのか、申し訳無さそうに苦笑いする直哉を見て、コラーシュは決心した。


「……ナオヤ」


いつに無く真剣な声に、直哉はコラーシュの方を向いた。


「ちょっと着いてきて欲しい」

「はぁ…良いですけど」

「理由は歩きながら話す」


そう言って立ち上がろうとするコラーシュを、直哉が止めた。

国王を止めた事に、料理長は驚く。シエル達は大したリアクションは取らなかった。


不意に直哉が両手を合わせ、コラーシュに笑顔を向ける。コラーシュは申し訳無さそうに座り直し、両手を合わせた。


「ごちそうさま」

「「「「ごちそうさま」」」」


挨拶はしっかり。直哉が気を遣っている事だ。元の世界では意外だな、と評判であったとか。


改めて立ち上がるコラーシュに続き、フィーナと直哉が立ち上がる。シエルも着いてくるようだ。


「それでは、ついてきてくれ」

「ほい…それが終わったら、服取りに行こうな、シエル」

「うん!」

「ふふ、シエルはナオヤが大好きなのね」


フィーナに冷やかされ、真っ赤になるシエル。頬を膨らませ、フィーナをちょっぴり睨み気味で見つめている。

シャイなんだか大胆なんだか…複雑な視線をシエルに向ける直哉だった。






「ここが、会議場だ」

「すっげー…」


コラーシュが止まり、目の前の扉を指差す。赤い下地に美しい装飾が成されている。直哉は改めて王宮のスケールの凄さを思い知った。


ここに来る途中に、コラーシュが理由を話してくれた。客人と言う直哉の立場、周りからの視線、そしてコラーシュ達の意志。直哉も同じ事で悩んでた事を伝える。


コラーシュに考えがあるらしく、直哉は内容を聞いた。そしたら、「はい」と言えば良いとしか教えてもらえなかった。

怪訝な顔をする直哉に、コラーシュはにんまりと笑って見せた。


「大丈夫、悪いようにはせんよ」

「はぁ……」

「取り敢えず中に入ろうか。ナオヤ、私の隣に控えておきなさい」


そう言うと、重そうなドアを開くコラーシュ。コラーシュ・フィーナ・シエル・ナオヤの順で中に入った。

そして固まる直哉。


まず最初に思った事は、凄い。扇形の部屋の壁や床は茶色で統一され、入り口から王座に一直線に繋がる道があり、その左右に事務用机が並んでいる。机の数は百程で、半数以上の机には一人ずつ着席している。座ってるのは、鎧を纏う一目で騎士だと分かるような者、ローブを纏う魔術師、王国のお偉いさん方などだ。

会議場って、こんなんかなー…と想像してたモノより質素だが、厳密な雰囲気が質素さを吹き飛ばしていた。


王座に向かうコラーシュ達を、周りの人々はじっくりと観察している。コラーシュ・フィーナ・シエルまでは分かるが、一番後ろの男…黒髪に漆黒の瞳、全身黒尽くしの姿…シエルの客人だと聞かされている男が、なぜ会議場に来ているのか、と疑問を抱いているようだ。


そんな視線を意識しないようにして、直哉はコラーシュ達について行く。


玉座についたようだ。コラーシュは真ん中の椅子、フィーナはコラーシュの右側の椅子、シエルはそのさらに右側の椅子に座り、直哉はコラーシュの左に立つ。


近くで見ると椅子の豪華さがよく分かった。手摺は金色で、多分金を使ってるのだろう。輝きがそれを物語る。座るところは赤い布製で、見るからにふわふわしている。背もたれにまで装飾が成されているのだが、この空気で散策なんてしたら屍にされそうだ。


沈黙が支配する会議場で、声を張り上げたのはコラーシュだ。


「遅れてすまない、皆の衆。今日の会議は他でも無い、我等が王国と対峙する敵対国、ガルガント王国の脅威についてだ」


会議場にざわめきが生じる。


「先日、我が娘…シエルが拐われた。犯人は…」

「………」


黙って首を振る直哉。切り刻んで、稲妻属性の魔術で消し去ってしまったのだ。


「…分からない。犯人は裏通りにある礼拝堂を根城にしていたようだ。この者…ナオヤがそれに気付き、シエルを助け出し、私に教えてくれたのだ」


直哉に視線を向け、コラーシュは言った。国王の話に向けられた集中が、全て直哉へと向いた。


「これは私の独断でだが、ただの礼拝堂では無いと言うナオヤの言葉を信じ、ナオヤに礼拝堂の調査を命じた。話を聞いた、または見た者もいると思うが、ナオヤは強力な稲妻属性の魔術の使い手だ」


ざわめきが大きくなる。顔を見合わせてる者や、「あぁ、そう言えば」と呟く者もいた。

よっぽど貴重なんだなと思い、ナオヤは苦笑いした。


「そして、その礼拝堂の地下に…そいつらを糧に育つ化け物がいた。ナオヤは危険を省みず、その危険因子を消し去ってくれたのだ。空を貫く光の柱を見たものは少なくは無いだろう」


ざわめきが止まる。全員が目撃してたようで、揃ってあんぐりと口を開いている。なかなか滑稽な光景だ。


「そして…化け物を倒した後、この札を回収してくれた。ガルガント王国で使われる文字が書かれている」


そう言うと、懐から紙を取り出す。赤い文字の書かれた、呪術符と言うやつだ。

呪術符についてはみんな知ってるようで、驚きを隠せないようだ。


「これは大きな収穫だ。敵対国の明らかな敵意を再認識出来たし、簡単に国に侵入出来ると言う弱点に気付かせてくれた」


静まり返る会議場に、コラーシュの声がこだまする。


「これを讃え、ナオヤを王国第一騎士団に入隊させようと思う」

「「「えぇっ?!」」」


話を聞いた人々、それに直哉が驚いた。


"第一"だ。聞くからに強そうな部隊に、自分を入隊させると言うのだ。直哉も驚いて当然だ。


騎士団は何個かあり、それらの頂点が第一騎士団なのだ。戦力も王国一と言う、力が無いと入隊出来ないエリート騎士団。そんな騎士団にいきなり編入など、前代未聞である。


「お待ち下さい国王様、確かに空を貫く光は目撃しましたが、それがその者の力だとは…」

「……それもそうだな」


コラーシュは直哉を向き、二人にしか聞こえない声で話し掛ける。


「はいと言うだけでは済まなくなってしまった。彼らに簡単な魔術を見せてやってくれないか?」

「まじすか…」

「すまない…」

「いやいや、俺の事を考えた上でやってくれたんですから…謝らなくて大丈夫ですよ」


そう言ってコラーシュに笑顔を向けた。コラーシュはすまなそうな、冴えない顔をしている。


直哉は人々と向き直り、両腕を前に突き出し、集中した。そして、各々の手に雷球を作り出すと、閃光と共に弓と矢が現れた。礼拝堂でステンドグラスの下をぶち抜いたサンダーアローだ。呪文を唱えて無いから威力は控えめだが、それでも凄まじいエネルギーだ。

ローブを纏う魔術師の表情を見れば分かる。


そして、その矢を弓の弦に引っ掛け、引く。バチバチと唸る弓矢に、何も言えなくなる人々。震え出す者までいる。


直哉が集中を解くと弓矢が消えた。だが、沈黙は続く。


「これでいいのかな…」


コラーシュに同意を求めるように聞いた。周りの反応を見て、頷くコラーシュに安堵する。


「し、しかし…姫様の客人として、ナオヤ殿は王宮に居るのでは…?」


ぐっ、と小さく唸るコラーシュ。流石に想定外だったようだ。


困った素振りをしているコラーシュを見て、シエルが立ち上がる。

コラーシュ本人もびっくりしてる事から、シエルの独断である事が分かった。


「彼は…ナオヤは、私が保護した人です。名前以外の記憶を失っていて、帰る場所も無い…途方に暮れてるところを、私が見つけたのです」


これも半ばでっち上げだが、半ば正論だ。直哉は右も左も分からず、途方に暮れてたところをシエルに保護されたのだ。


「お礼などいらなかったのですが、どうしてもと言われて…迷ってる最中、件の誘拐事件。これの後、彼は私の身を護ると誓ってくれました」


誘拐事件を思い出し、暗い表情を浮かべるシエル。明らかに無理をしながら話すシエルに、人々は掛ける言葉を失う。


「そして、無理を承知でお父様に頼んだのです、ナオヤを、私達を…愛する国民を護ってくれる騎士団に入隊させてくれと」

涙を浮かべながら、訴えるように話すシエル。ここまで来ると、反対意見を抱いても引っ込んでしまうだろう。

演技なのかは分からないが、直哉は胸が締め付けられる思いがしていた。


「……ナオヤよ、我々を…国民を護ると誓えるか?」


コラーシュが直哉に問い掛けた。ここまでしてもらって、期待に応えない訳にはいかない。


《いつ見た映画だか忘れたが、確か…片膝を着いて、頭を下げるんだったな…》


うろ覚えでポーズを取る直哉。地味に合っていた。

そして、誓いを述べる。


「神崎直哉、この命愛する王国の守護に捧げる事を誓います」

「……彼の誓いは本物のようだが、異論はあるか?」


直哉の誓いを聞き、コラーシュは人々に問う。だが、言葉は一言も飛び交わなかった。変わりに頷く者が多数だ。


「異論は無し…では、ナオヤを王国第一騎士団の一員と認定する。今日の会議は以上だ。ガルガントからの攻撃はいつ来るか分からない、気を抜かないように」


コラーシュが会議の終わりを告げると、人々は次々に席を立ち、各々仕事に就くために会議場を後にした。

残るのは、国王コラーシュ、王妃フィーナ、王女シエル、そして王国第一騎士団の直哉の四人だ。


「うーん…展開がかなり急すぎるな…」

「すまないナオヤ、私にはこれが精一杯だ」

「でも、これでナオヤと一緒に居れますね、シエル」

「はい、お母様!」


上から直哉・コラーシュ・フィーナ・シエルだ。ちょっと面倒だが、これで王宮に居る事が正当化される。


大きく息を吐き、直哉が話し出す。


「俺の為にわざわざありがとうございます。これからも、何卒よろしくお願いします。…んじゃ、早速任務に向かいますね」

「任務?まだ何も任されて無い筈だが…」

「町に服を取りに行くシエルを護衛すると言う任務がありますよ」

「やったぁ!早くいこ、ナオヤ!」


嬉しそうにはしゃぐシエルは、直哉の腕を掴み、引っ張って行った。

そんな光景を見たコラーシュは


「任務の大半がシエルのモノになりそうだな…」


顔を手で覆い、溜め息を吐くのだった。

気付いたら十話を過ぎてました。いや、わざとじゃないです、意外とマジです!


読んでくれてる人が居ると、ここまで嬉しいモノだとは思ってませんでした。

これからも一寸畑をよろしくおながいします!

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