6 女の戦い(?)
「あ、緋花さん」
「中々来ないから心配してたんですよ?
ほら!お昼行きましょう!席取られちゃいますよ」
「あ、はい!」
たまに緋花のことが怖いと感じる紫苑だが、
今回ばかりは心の中で手を合わせて感謝をしていた
慌てて鞄の中から財布を取り出し、緋花のもとへ
走った。
が、それで朝香は終わるような女ではない
走った紫苑の腕を抱き込むように捕まえた
「約束してた人って、緋花さんだったんだぁ
ねぇねぇ!今日は紫苑くんとのお昼譲ってくれない?」
「如何してですか?」
「え?私が頼んでるんだから譲ってくれてもいいじゃん!
緋花さん、心狭いね〜」
「は?」
『お、怒ってる』
始めてみる緋花の険しい顔に、【怒っている】という事が
すぐに分かった。
まあ、朝香はそんなことで引くような女ではない
今まで女子からの妬み,嫉妬などよくある事だった
大体が自身の行動によるものだが、
そんなことは気にも留めない
「やだ!緋花さん、怒ってるの?こわぁい」
「別に、怒ってないですよ」
『やばい、この2人の喧嘩とか怖すぎるだろ
紫苑大丈夫か?』
『助けて』
1番不憫なのは、この2人の喧嘩に挟まれている紫苑だ
ちょっと泣きそうになっていた
「し、紫苑!今日は俺と食べるか!
2人ともそれならどう!?」
『やばい、紫苑が可哀想すぎて慌てて言ったけど
何言ってんだ俺?』
『馬鹿だこいつ!でも、ありがとう』
「「何言ってるの?/言ってるんですか?」」
「あ、すみません・・」
紫苑を助けようと頑張ったのに、2人に睨まれ
シュンと小さくなってしまった拓海
紫苑は、ちょっと俺より可哀想かもと思ってしまった
「というか、私が先に約束してたんですから
朝香さんは明日になさってはいかがですか?」
「私、明日いないもん!」
「明日は必修の科目があった筈ですよね?
そんなので単位大丈夫なんですか?貴方が真面目に
授業出てるところ見たことないんですけど」
「だからぁ?緋花さんに関係ないもん」
「えぇ、関係ないですよ?貴方が留年しようが
私にはどうでもいいです。けど・・」
「けど?なぁに?」
「貴方、1年の時も全く出てなかったですよね?
なのにどうやって進級出来たんですか?」
確かに、朝香は1年の時からこんな感じで
同学年や先輩の男たちにチヤホヤされて、
遊びまくっていた
その、男たちは全員遊びすぎて留年したというのに
彼女だけはちゃんと進級している
「これは単なる噂ですが、教授とそういうコトをしている
というのも信憑性が高いですね」
「そんなことしてないもん!というか、例えしてても
緋花さんには関係ないじゃん!」
「えぇ関係ないですよ、でもそんな汚いやり方しか
出来ない貴方が、紫苑さんに軽々しく触れないで
ください、紫苑さんが汚れます」
「なッ!」
緋花にとって、紫苑は世界で1番尊い存在
そんな紫苑に朝香が触れているのが許せなかった
例え、そういうコトをしていなくても
その会話を聞いていた周りがザワザワと騒ぎ始めた
辺りからは、「マジかよ・・朝香さんが」
「まぁだろうね」「緋花さん、カッコよ」
「朝香って、そういう奴じゃん」
「ッ〜!もういい!」
そんな会話が本人にも聞こえたのだろう、当たり前だ
間近でそんな会話が繰り広げられているのだから
顔を真っ赤にして、緋花にぶつかりながら去っていった
「さ!紫苑さん!お昼行きましょう!」
「あ、うん!ありがとう緋花さん」
「いえ!紫苑さんのためですから!」
先ほどまでの険しい表情はどこへやら
嬉しそうに顔を綻ばせて、紫苑に微笑みかけた
『緋花さん、ちょっとカッコよかったな』
『俺、ただ傷つけられただけじゃね?』
『あの女、どうしてやろうかな』
各々が、心の中で絶対に口にはしないことを考えていた
『なんなのよ!あの女!私に恥かかせて!
絶対に許さない!』
『『殺してやる!/殺さなきゃ』』
この2人は、ある意味似ていたのだろう
後にある事件に発展するとは紫苑と拓海は
思いもしなかった
『そういえば、朝香さんって誕生日12月4日だったよな
前に朝香さんへの誕プレの列が出来てたし、覚えてる
確か、誕生花がサザンカ』
『サザンカの花言葉は、白が【愛嬌】だったよな
あの人にぴったりだ』
紫苑はいつものように花のことで頭がいっぱいだった
人にぴったりの花言葉、というものはやはりあるようだ
ただ、それが毒となるか毒をもうまく使うかは
その人間次第だ
白のサザンカの花言葉・・・【愛嬌】
【貴方は私の愛を退ける】