第二十三話「早晨③」
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あの黒い流星が空を横切ったあの日から
皆が皆でなくなってしまった
大気は黒く澱み
大地は臭いを発し
鳥は空を舞わず歌を歌わなくなった
魚は川を泳がず海を目指さなくなった
腐臭がやがて世界を覆い尽くす頃
その腐臭の色がついた汚泥が五百日間
空から降り続いたのだった
怨嗟の声が市井を占め
人々が死に絶える絶望に瀕した時に
漸く賢者達は罪を認め
逆しまになってしまったこの世界を
元に戻すために腐心を始めた
リーンカーネーション 輪廻の扉
第二十三話「早晨③」
「帰れ! ここは、貴女のような者が訪れて良い場所ではない」
キイ・シュテラーダ嬢に渡された、装丁も美しい「恋文らしき物」をせっせと小脇に携え、黄金色の装飾が至る所、それこそ本来なら犬くらいしか見ないような外壁の足元に至るまで細かく施されたパレス・ホスピタルの門扉前……
ロイヤルファミリーと、リーザス・フォレスト王国所属の一部の高官のみがその通院を「赦される」特別な場所。
一見すれば、「ここ」こそがリーザス王の居城ではないかと思わせる華美と、威圧感のある門扉。その前に、それこそ幾度も騎士から職務質問を受けながらも、這々(ほうほう)の体で辿り着けたペイル・ペイル初級魔導技官に、まあ、歓迎される事もなし、露骨に嫌悪感を表情を滲ませた衛兵に睨みつけられ、今にも両手に構えた、飾り付きの警仗を振り下ろされんが勢いに、ヒクヒクと彼女はたじろいでいた。
「え、えっと、僕は、私は……」
ホスピタルのある西パレス地区は……
王国の副行政区であり、各省庁の白亜の建物が並ぶいわゆる官庁街。
王城のあるフォレスト・パレスに繋がるリーザス大通りから、北西に向かうレシティア通に至る付近からその様子が見られ、「武門の総本山」的な王城界隈とは趣が違う「知識と良識」とが密集した、リーザス国内でも珍しい地域。
その中に於いてもこの「パレス・ホスピタル」は他の建物より群を抜いて人の目を惹く、その様な佇まいであった。
「しゅしゅしゅ、しゅてらーださまから!」
「下賎な緑髪。本官は、おまえのような不明な輩を通さぬと言っている」
先ほどからペイルが何度も、「同じような」押し問答をしている相手。
身の丈は二メートルに近い、やはり、ここの警備職であると分かる、黄金色の肩当てと金色の刺繍の入った衛士服を纏った、偉丈夫な壮年の騎士。
「文の相手も分からぬ、病棟の号数も知らぬ、命が要らぬのか?小娘」
「だって、だって、ここに来ればわかるって、わかるっていわれたんだから、いわれたんだから……」
門番のロックウェルは実は、本日を以って四十年間勤め上げたホスピタルの勤務を定年し、実家のある田舎に帰る心積もりであった。
積りではあったが、この妙に粘る「不審者」の対応に当たり、少し前に交代に来た新人を別の立居に向かわせ、自ら最後のなるだろう「この」責務を全うしようと、一歩も譲らぬ仁王立ちの覚悟であった。
「だって、ここに、ここに、来れば……」
「お前を証明する物が何もなく、本官が通せる訳もなかろう」
ぐじゅぐじゅと、涙と鼻水とを一緒に袖で拭う少女を見下ろし眺め、多少の憐憫の情が無い訳ではないが、王族も療養されている重要拠点に於いて、子供であろうと何であろうと、素性も分からぬ者を軽はずみに通す道理が衛士にある筈もない。
「ならば文を改めさせよ」
「それは……できません」
ならば……
使者としての職務が全うできないのならば……
ペイルが先ず、脳裏に浮かべたのは「自害」。
賤しくも、リーザス・フォレスト王国の下級官吏。
文の一つも、相手方の手に届ける事が叶わぬ等という失態。
余り深く考えていなかった。
国内である場所に手紙を届けるだけと、高をくくっていた。初級外交官でもある彼女の「失態」であった。
ならば……
ならば……
その次に、ペイル魔導技官の「足りない」頭をフル回転した結論は……
「衛士様、ならばこの僕を……この僕の身体を好きにして下さい!!」
噴飯物の短慮であった。
ペイル・ペイル魔導技官は
身長140.0cm
スリーサイズ??
ぺったんこですよ(笑)
もちろん、以前にイクイナ導師が虐めた女の子も含めて「役柄年齢」と「実年齢」は違いますからね!




