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リーンカーネーション 輪廻の扉  作者: あさのてんきち


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第二十二話「早晨②」

二十二話です

ずいぶんと放ったらかしにしていたのですが、やっと続きに着手出来ました

私は毛虫

ウジウジと地を這い

醜く生きる


捕食動物でさえ

この目を覆う私の姿に

たまらず他所よそを向き

去って行く


まして高貴な貴方の目に

私が留まる事はない


金色に輝く力の根源

生ある物の全てが

心より信奉している


そう私も

恥ずかしながら

貴方様をお慕いしております


貴方様を



リーンカーネーション 輪廻の扉

第二十二話「早晨②」



皆さん、生きていますか?

私は、とーぜん、生きています。


 あはは、平和な時代にお住まいの皆さんにはもしかしたら、想像つかないかなと思いますけどぉぉ、生きる事って多分、暴力や理不尽、差別や貧困なんかの大不幸、それら一切合切を受け入れるみたいなあ……

 てへへ、ちょっとだけ変な言い方をしてみましたけど、よーするに毎日、何らかの意地悪を無条件に我慢するって事、そんななんだと思います。


 純粋な暴力。

 イジメなんて優しい言葉、多分この世界では使われない。

 純粋な暴力。

 拷問なんて、相手の要求に応えれば許される物じゃなくて……

 痛くて痛くて痛くて痛くて苦しく苦しくて苦しい日常。

 決して終わりのない。

 あはは、でもね、辛くて死んじゃった人をたくさん見て来たけどさ。

 はははは、あははは、それでも生きる事って。

──とっても、素晴らしい事なんだと思うんだよ



「ペイル、いつになったら理解出来るのか」

 私の女主人、イザベル様は、私が恐らく折れてしまった自分の鼻を気にしている事にイライラしながら、まだ足りない私への「教育」に、次はどうしてやろうかと肩を怒らせながら、思案を獰猛に巡らしているご様子でございます。


「申し訳ありません」

 私の身の丈は、ご主人の腰元くらいしかなく、そんな私が頭を下げれば……

 ゴスッ──

「謝れば済むと思うな、この馬鹿者」

 ちょうど、イザベル様の膝が、綺麗に私の鼻柱にピタリと収まります。

「痛い! ……です。あ、あああ」

 もんどり打って倒れ、尚も恐怖に主人を見上げた私の顔にスッと「踏みつけ」が入ります。

 

 イザベル様も若き日々には、尚武のリーザス人の嗜みを体現し、徒手の部門で立派な成果を出されたとか、これでも……手加減しているのだとも仰られる。


「貴方の痛みなんて、一瞬の事ですペイル」

 真っ直ぐ指を差し、私が「仕出かした」粗相を示される。

 イザベル様の家、ルクレール家の家宝……

 王家から下賜された陶器が、復元の見込みの見られない程に残念な姿に変わっている。


「だからあれほど気を付けよと」

 ギリギリと奥歯を鳴らしながら、私の「緑髪」を掴み、私を引き摺りながら、その惨事を目に焼き付けよとうつむく私の顔を上げる。


 ダーネリア地方の出身者を「肥やし臭い田舎者」と笑い、就職活動も露骨に差別され、労働局ギルドから門前払いされる私達の状況下で、こうしてお屋敷勤めの機会を下さったご主人に対し、私は十全なご奉仕を以てご恩返しをしなければならないのに、今日もこうしてイザベル様のお手を煩わしている始末。

 

本当に駄目な

本当に駄目な私


 申し訳なくて、情けなくて、本当に悲しくて、涙が自然に降りてきます。けれども、ご主人の怒りは未だ収まりません。

 何故なら本日、家宝を下されたご本人がもう直ぐ、このルクレール家に訪れる事になっているのだから。


──この国の「明星」が堕ち


 屋敷の一番門外、敷地に面する路地に平伏するルクレール家の一同。それこそ、召使いの末端の飯炊き婆までもが皆、神妙に貴人の訪れを待っている。

 本来であれば、ここまでの大貴族であるイザベル様の家人が、下人の様な卑屈な態度を取る必要などないのだが、全てが私、ペイル・ペイルの粗相が原因なのだ。(ごめんなさい、みんな)


 私の首を落として晒せば済む、訳もないが、言い訳くらいにはなるかも知れない。

 粗にして野だが卑に非ず、とでも形容すれば良いのだろうか、ご主人は事あるごとに暴力を奮われるが、貴人の行いから「筋」が逸れる事はない。

 これが、リーザス・フォレスト王国の重鎮の在り方なのだろうか。


「頭が高いぞ痴れ者」

 屋敷に訪れた馬車を見ようと、ちょこっと顔を上げた私を目敏めざとく主人が見つけ、腕力で砂利道に接吻キスさせられる。


「お前は反省も出来ないのか」

 主人の腕力で窒息寸前で解放されたら、ちょうど目の前にお客様の馬車が横付ける。


「起立せよ」

 イザベル様の声が緊張を帯びていた。

 本来、訪れるはずの馬車ではなかった事もある。然しながら、事態は思いもよらない方向へと向かう。


──使者は告げる

──未曾有の惨事の報告と共に


……………


「イザベル退役守護職は、現任のキイ守護職のフォローを頼みます」


 リーザス・パレスに集まった歴々。

 病で臥しているリーザス三世陛下の代わりに、上座に腰を下ろすのは王位継承第二位、アレイシア第一王女。

 えらくアレイシア様の立ち位置から離れているはずなのに、彼女が使っている、もう、この上もなく上品な「香水」のお香りが、ああ……


「キイ殿に使いを出さなくてはな」

 本当はさ、せっかくのチャンス。でも畏れ多く、アレイシア様のご尊顔など拝する事など一度も出来ずにいましたよ、どうせね、私は。


「習わし通り、魔道士官を任命し、守護職の元に遣わせる」

 私の様な下女がなぜに、このような尊い方々がおわす場に引き出されているかは分からず。ただ、朗々ろと響くアレイシア様のお声に平服したまま震えるだけで……


「私の言ってること、分かってて?」

──ゴチ!!


 アレイシア様のお声がけと、我が主の「ゲンコツ」で、千年もの眠りから醒めた様な錯覚に陥った。



…………


「意気地のない奴だ」

「この弱虫め」

「お前の兄ならとっくに終わっている」


──お前の兄なら

──お前じゃなければ


「だから言ったのだ」


──お前になど、一度も期待したことはない




「あ、キィさま? お紅茶ですよぉ」

 かぐわしい飲み物の「立った」香り。

 それが、私の目を醒まさせてくれた。


「ありがとう、ペイル、そこに置いておいてくれ」

 見たくもない夢だった。

 連日の激務が、私を苦しめる為、見たくもない幼少の記憶を幻として、押し付けたのだろうか……


「そこだ、資料の角だ、こぼさないでくれよ」

「畏まりました!」

 鮮明に覚えていた部分もあったが、ほとんどは思い出せぬ「もやの向こう」。

 聞いた話によると、現在、余り仲の良くない厄介な隣国では、夢に忍び込んで、相手を疲弊させる術があるとか、ないとか……


「夢に忍び込む魔道は厄介です、対抗するにはリディアの学舎で修行を積む必要がありますよ、キィ様」 

 ペラペラとよく回る口。

 お喋りが好きな田舎者。

 先日、リーザス・パレスからの使者として、我が砦に住まわしている、ペイル3級魔導技官である。


「リディア聖国には、一大きな七つの派閥があって……」

 緑髪に濃いめの緑色の瞳。

 元々も貴族階級であり、特にリーザス王家の祖と親しい間柄であったシュテラーダ家の者たちと違い、いわゆる「緑髪、緑目の後継者」らは、リーザスが一地方としてリディア聖国に所属していた頃から「下男、下女」として雑事を任される身分であり、はるばる北の大地からこの南方にまで、下働きとして従軍、若しくは建国後に流れ着いた人々の末裔である。

「末席ではありますが、七番目の大魔導師ユアス様が私共“緑の民”の始祖であり……」


 第二王女の弔い合戦の先鋒を「使者」として告げておきながら、その相手国であるリディア聖国の昔話を愉快そうに喋るこの「トンマ」な魔導技官とやらが、武の誉れ高いシュテラーダ家に役立つとは、キィ自身も1ミリ思っていない。

 然しながら、国許に正式な伺いを立てる、相手国の使者を饗す、吉凶を(形式的に)占う等、以外にやって欲しい雑事があり、武力を最上の理だと信じて疑わないリーザスの若武者たちの中に、使いっ走りの魔導技官になど、なりたい者などいないのが現状。

 実は盟友ルクレール家の内々な「お願い」でもあり、まぁ、やむを得ないのかなと、シュテラーダ家当主としては渋々と思うのであった。


「ああああ、すすす、すみませーーーーーんん!!」

 キィの小さな考え事は直ぐに、大きな金切り声で中断された。

 あれほど慎重にと告げたのに……

 あああ、机上の資料が全て「紅茶塗れ」だ……

 義姉上あねうえも遠慮は要らぬと仰っていた、やれやれ……

「この、馬鹿者がぁああああああああああ!!!」


 リーザス王国の西の護り、シュティール砦の天守から威勢のよい怒鳴り声が城下に響く……が、道行く人々がそれを聞いても「いつもの日常」からはみ出る事なく、彼らのそれぞれの目的に精を出していたのだった。


…………


「お見舞い、ですか?」

 意図しない依頼に、コクンと一つ首をかしげるペイル。シャラシャラと、髪と同じ色の翡翠のイヤリングが音を立てた。

「あ、これですか?これは、この星を見つけた神様が喜びで流した涙だと言われる緑耀石エメラルド。ではなく、縁日で買ってもらった翡翠石です」

 いちいち話を脱線気味に話す面倒くさい小娘だなと、彼女の雇い主として、この緑髪を遊ばせておく訳にも行かず。

「パレス・ホスピタルですか? 私、通してもらえますかね?」

 ロイヤルファミリーから、上級官吏までしか診てもらえないと言う、リーザスVIP御用達の病院。私の様な田舎者なんかが行っても「門前払い」ではないかと……

「私の友人が今、看護棟で長めの療養をしていてね、これを渡して欲しいんだ」


「…………」

 ペイルは、蝋で封をされた桜色の封筒を渡された。この色を見れば、相手は疑いを持たずに受け取ってくれると言い、珍しくキィはニコリと笑顔を見せた。

「……承知致しました、キィ様。して、ご友人のお名前は」

 ペイルは、先ほどのキィの笑顔の意味を恥ずかしさと共に知る事となった。

「野暮だなペイルは、きれいな桜色の封書を君なら、いったい誰に送りたい?」

 きっと今、渡された封書と同じ顔色をしているのだろうと、自分の浅薄さを呪ったペイル・ペイルであった。


四千文字程度で申し訳ないっす。

ずっと休んでいた「リハビリ」にはこれくらいで……

続きも頑張って書きますね☆

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