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リーンカーネーション 輪廻の扉  作者: あさのてんきち


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外伝「メリアの歌姫②」

外伝っ響き、良いですよね

我がバイブル「グイン・サーガ」、第一冊目の外伝は「七人の魔導師」……でしたっけ?

アイちゃん達は七人ですが、「アイ・マイ・ミィ・マイン・ユウ・ユア・ユアズ」が偶々七つで、設定のパクリ等もありません(汗)

私の愛しい小さな宝石

目に入れても少しも痛くないほど

あなたを愛している

ずっとずっと

この私の手をキュッと握ってくれている

大切な温もり

必ず必ず

護って行けると信じているから

だからどうか

愛しいあなた

お姉ちゃん大好きって

もう一回言ってくれないかしらね

ねえ?



リーンカーネーション 輪廻の扉

外伝 メリアの歌姫②



「うわーん! お姉ちゃんを離せよぉお!!」

「逃げなさいって、来ちゃだめ! お願い逃げて!」


 ……姉妹が、柄の悪い男達に押さえ込まれている。

 二人を捕える為? と言う感覚では、恐らく彼らの暴挙は測れない。

 明らかに良からぬ悪意が、見て取れる。簡単な語句を用いれば、それは「※暴力」と呼ぶのが妥当だろう。


「大人しくしろよ嬢ちゃん達、大人しくしていれば痛くしないぞ」

「そうさ小娘! 今すぐ抵抗を止めるんだ、あはははは」

 男達は恐らく、メリア皇国の辺境警備隊か、若しくは「過去にそうであった」者達と思われる。

 彼らは、意地悪くも「痛くしないぞ」などとのたまわっているが、姉の口元からは明らかに、その暴力からによる出血が見られ、身体には出来たばかりのあざが幾つも見て取れる。

 彼らが何者であったとしても、年端の行かない女性の身の上では抗いようもない、屈強で野蛮な餓狼の群れ。


「ちっちゃなお胸が可愛いでしゅね、むふふ愛おしい……」

「離せ! 嫌だ、エッチな事するなぁあ」

「お願い、妹には何もしないで、私が私が……」

 卑怯にもとおを少しばかり過ぎた妹に、その野獣たちは奇声を上げて、ワラワラと群がる。

 その余りの絶望的な様に、二の句が告げず、悔し涙を滲ませる姉。

 ギリギリと奥歯を噛み締め、男達を睨み付ける事しか出来ない。


「おう、おう……お姉ちゃんの方は随分とやる気がある見てぇだな」

「チビを縛り上げろ、どうやらキチンと分らせないと行けねぇな」

 羽交い締めに、動きを封じられたまま、グループのリーダーと思しき男の前に押し出される姉。


「くくく、こう見ても中々に色っぽいじゃねーか」

 身に纏っている物は一枚布。

 所謂「部族民」と呼ばれる人々が好んで用いる、乾燥地向けの民族衣装。

 一枚布の下には、女性なら胸と下腹部をそれぞれ隠す下着を身に付けている。


「そうら、そうら、脱ぎ脱ぎいたしましょうね」

「むふぅう、溢れんばかりのメスの香り、間違いなく此奴こやつは美味じゃな、あはは」


 油臭い、下賤な笑い声が辺りに響いた。

 姉妹にはきっと、救いは訪れない。


 そう、ここはメリアの南西部

 人の里からは馬車を乗り継ぎ

 幾日をかけ

 やっと彼らが住む乾燥地帯に

 辿り着く事が出来る


 亜人たちがひっそりと

 本当に息を潜めて暮らす小さな

 世界から残された箱庭


 でも近年

 メリア皇国の治安の悪化と共に

 この亜人たちの最後の住まいにも

 苦しみが姿を変えて

 舞い降りて来る


 ただ平穏に暮らしたいと願う

 亜人の二人姉妹も例外ではなかった


「ああ、神様…… いえ、誰でもいいです。どうか……」

──どうか、助けて下さい


 力任せに押し倒され。

 無念の絶望の最中に、絞り出した最後の一言。

──どうか妹を

──助けて


…………


ああ、西の空に広がるのは

冬を告げるイワシの雲の群

ああ、寒空がやってくる


人々が望まぬ

白き世界の足音

私達が生命を繋いで抗い続け

護り続けたこの世界を


氷の乙女達が

踏みしめ閉ざして行く

彼女らの笑い声が聞こえる

「ブリザード」


愛し合う君と僕も

一瞬で

全てを失う

氷雪の歌


…………


 そこに居た全ての者が

 まず最初にその耳を疑った


「う、歌姫だああぁ」

「コーラス隊も居るぞ! コーラス大隊だ!!」

「馬鹿な、こんな辺境に!!!」


 その次は目を疑った。


 レプリカではあるが、魔導儀器と呼ばれた「楽器型」アーティファクトを装備し、楽隊である事の所縁であり、皇国のカラーである「白色」を基調とした楽隊服を纏い、そして、彼女らが忠誠を誓うメリア皇帝より賜った白銀のブレスレットが左腕に煌めく。

 皆、キリリと口を真一文字にし、サクサクと荒地を行進して来る姿は、まるで伝説のテンプルナイツのそのものであった。


 そして最後に自身の悲運を呪った。


「ぎゃあああああああああ!!!」

「ぐぎゃああああああああ!!!」

 歌姫達の合唱は既に始まっていた。

 その歌に呼応して、乾燥地域の夏空が一瞬にマイナス二百五十度の氷点下にひっくり返る。


「だずげてぐれーーーーーーー」

「ぐるしいいいぃいいいーーー」

 野党達は、断末魔を上げて次々と絶命して行く。

 せめて身につける衣服の一つでもあれば……姉妹に暴力を奮う為に放り投げてしまっていた。


「賊を掃討せよ」 

 中心に居た一際目を引く美人。

 歌姫と呼ばれる存在。

 彼女が自ら指揮する部隊。“コーラス第三大隊”に命令を発する。


「女の子は助けて上げて欲しぃの」

 その彼女の脇から、まるで生えて来た様な「ちょこん」とした存在。

 副官なのだろうか? 一際若い少女の命令。

 いや、頼み事と言うべきなのだろう……

 それを聞いた隊員達は、メリアの略式礼を行いつつ、事態が飲み込めず震える亜人姉妹に「暖を」取らせて行く。

 気がつけば空は元の、初夏の陽気を取り戻していた。


…………


「お姉ちゃんを助けてくれて、ありがとうございます」

「ありがとうございます。まさか高名な、ヴァゼリア大隊に助けて貰えるなんて」

 姉妹二人は、まるで折り目が入った「折り紙」の様に、ペコペコと頭を下げた。


「良いのです。辺境であってもここはメリア皇国の版図。悪事は裁かれるべきです」

 凍傷で動けない悪党達の生き残りを横目に、そう断言する「歌姫」ヴァゼリア。

 南方の要塞をドラゴン達に奪われ、北方の国境地帯を一部、宿敵であるリディア聖国に切り取られている今、軍備の再編成。国内の治安維持も重要な施策であり、模擬訓練を兼ねて南西地域を哨戒していた「歌姫大隊」が……ちょうど「通りかかった」のだった。


「お姉ちゃん、この子、可愛かーいいね」

「ううう、うにゃぁあん……」

 妹のカーミラが、頻りに「なでなで」をしている妹の方。

 希少種である「サーバルキャット」の獣人である。

 ブラウンのショートボブにピョコンと突き出した二つの「お耳」。

 カーミラの様な何にでも興味を持つ世代でなくとも、虜になりそうな容姿を持つ。


 別名サヴァンと呼ばれた彼女らは、野党が行う亜人狩りに於いて、人気も相当な上位に位置している。

 そう、野党達の狙いは恐らく、この妹の方。


「妹の他に、サヴァンをこの辺りで見かける事はありません」

 姉は、割にありふれたジャガーの亜人。

 血の繋がっていない姉妹……と言う事になるのだろう。


「私たちは、西の果てにあると言う蜃気楼砦ミラージュキャッスルを目指しています」

「知らないかな、レヴィちゃん?」

 自己紹介は既に済んでおり、姉はクレア、妹はレヴィと言う。


 姉と妹は互いに目を合わせた。

 コクンと首を傾げた後、ヴァゼリア達に向き直った。


…………


届かない地平の彼方で

僕らをずっと待っていてくれる

空の向こうの存在


思い出にある絵空事

小さき頃に思い描いた夢の形

その全ての具現化

夢の続き


蜃気楼

蜃気楼

おお、蜃気楼


あなたは笑うのだろうか

僕は旅に出ようと思っているんだ


あの世界の果てに

僕の欲している物がすべてある

そんなふうに思えて仕方がないんだ


だから

So long goodbye

※暴力とは

辛い料理で有名な「四川料理」をハバネロなどの激辛調味料で味付けし、出来立てのアツアツをお水なしで戴く(戴かされる)、この世の地獄をそう称します。

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