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リーンカーネーション 輪廻の扉  作者: あさのてんきち


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第十六話「リディア聖国(中)」

月明かりのない

暗い夜中の静けさの中に

耳を傾けて

ゆっくりと目を閉じてみる


風の音が聞こえますか

虫の声が聞こえますか


実はそれらは

暗き闇夜があなたを虜にしたいと

啜り泣く声に

相違なく


二度と常世に

戻れないように

優しく

時すら止まったように

執拗に

優しく

あなたの思いを深く閉じ込めて

しまいます



リーンカーネーション 輪廻の扉

第十六話「リディア聖国(中)」



「赤色か…… 果たして」


 ユアスは、危機を回避するべく、ほぼ無理やりに選択した跳躍経路ワープルート……

 プロメテウスの通称「観音開き」モニターに、フローチャート表示された航路図の数々、阿弥陀あみだクジに似たその経路図の中で、取分け濃い赤色で表示された一本の線、正しく今、移民船が航路として採用している「それ」を苦々しい表情で眺めている。


「……黄色イエローにすらならないな」


 彼女自身も本来、移民船の制御装置系AIをインストールされた再生計画リペアプランの一翼であり、航宙の玄人として、船が正しく最良の演算を行い、超光速で宇宙の海原を疾走している事を少しも疑ってはいない。


 例えば、大型の流氷が漂う海原を木造のガレー船で航海するイメージであり。

 また例えば、首都高速の車の流れをオートバイで全力ですり抜けて行く、あのイメージに近い。


 ……確かに、状況は切迫していた


 あの時、移民船の主砲斉射で、宇宙怪物たちを一見、薙ぎ払い、押し返した様には見えたが、宇宙クラゲ共による包囲網はほぼ完成しており……

 その後方には、通称「大口ビッグマウス」と呼ばれた上位の宇宙怪物が陣地形成を終えており、一旦、彼等の射程に入ってしまえば、護衛艦を失ってる単艦のプロメテウスに、勝ち目どころか、逃れる術も選択する事ができない。


 然しながら……


 もう少し、上手くはやれなかったものかと、ユアスは、彼女らしい皮肉屋な笑顔を晒している。


「艦長なら何と言ってくれたかな」


 傍らで、骸と化している上司。

 信頼していた存在の長きにわたる消失は、宇宙を駆ける美しい旅路でさえも、色褪せたモノクロの写真展のように、印象に残らない、間の抜けた時間の羅列に変えてしまう。


「…………」


 そしてユアスは、まるで眠りについたような表情を浮かべ……

 休眠状態スリープモードに戻りながらも、その無機質色な双眸で、必死にモニターが映す計算式をぼんやり眺めているのであった。


…………


「アイちゃん決めたよ! あそこにお家を作るのんだ!!」


 プロメテウスから切り離された「揚陸艇ポッド」が、惑星アイルの緑色の大気に同化しつつ、ゆっくりと降下している。

 南方に雄大な山脈、東方は肥沃な大地が幾筋もの大河を擁し、北方には天然の良港となりそうな入り組んだ地形が見える。


「西は、たぶんステップ地域だね」


 窓から嬉しそうに世界を眺めている、天然元気合法幼女、アイ・フォルゼ・ラーツェルは、指を差し差し揚陸艇に降下地点を指示している。


「マスターにも、直ぐに下りて来てもらうんだ♥」


 ガラス張りになっている天井から、降りて来た空を見上げる。

 昼間の大気に、一つだけ鮮明に見える明星。

 衛星軌道上に“周回待機”している、移民船のその姿を…………


「アイちゃんが一番乗りだぁあ!! リアル、リ○ワールドだぞぉおおお!!」


 待ち切れないアイちゃんは、手動で揚陸艇のガラス窓を開放し、まるでプールか何かに飛び込むように、ひょいと身体を空に投げ出した。


「初めまして世界! 私はアイ。あなたに会えて嬉しいよぉおおお」

 

 空の、空気の固まりに両手を伸ばし

 降下を続ける揚陸艇と同じ速度を保ちながら

 ゆっくりと近づいてくる大地の形を目に焼き付けながら

 嬉しさの余りに、流した涙を大気の色に混ぜ込みながら


「私とマスターのお星様!!!」

 抱き締めるように、世界と一つになった瞬間だった。


…………


「警告! 警告! 航宙航路上に重大な支障あり。繰り返す。航路上に重大な支障あり。跳躍を強制終了致します。各クルーに於いては、各々の区域の制御AIの指示に従い…………」



後日、もう少しこの十六話は書き足す予定です。時間が取れず、申し訳ありません。

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