レベルを上げたい(1)
……あれ。私、どこにいるんだろう?
ぐるりと辺りを見回すと、見慣れた景色が広がっていた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
グイッと誰かが私の手を引いた。ハッとして隣を見る。
上目遣いで私を見上げる幼い女の子と目が合う。
「ううん。何でもないよ。変な夢でも見てたみたい」
私はその子に微笑みかける。そして、ぎゅっと抱き締める。
その子は不思議そうに首を傾げて、それでも私の背中に手を回した。
「ねえお姉ちゃん。どこに行っちゃったの?」
その言葉の意味が理解できなくて、私は何も答えられなかった。その子は続ける。
「れな、お姉ちゃんがいなくて寂しいよ。れおが泣いていてれなには止められないの」
淡々と話すその子に対し、私はなんだか恐怖を感じて、その子から離れた。だけど、その子は相変わらず首を傾げて不思議そうに、私に問う。
その子の顔が、ぼやけて見えない。
「お姉ちゃん。帰ってきてくれるの?」
「帰り、たいけど……もう帰れないよ」
私は何を言っているのだろう? 帰れないって、どういうこと?
もう一度辺りを見回してみると、さっきまでの見慣れた景色はなく、真っ白な世界の中に私達はいた。
ここどこ?
「お姉ちゃん。れなたちをおいてどこに行ったの?」
その言葉が私の胸をズキリと刺してくる。その子を見るのが怖い。
私は背を向けて走り出した。頭がはっきりと動かない。どこを走っているのか、全く分からない。
けど、とにかく離れたかった。
「お姉ちゃん」
耳元で声が聞こえる。
ごめんね。ごめんね。ごめんね。ごめんね。
ただただ謝ることしかできない。
ふと顔を上げると目の前にその子がいた。
私は、立ち尽くした。
「……お願い。れなに会いに来てくれる? 1回でもいいの。お姉ちゃんに逢いたい」
「…………」
その子の顔の前にあったモヤが晴れて、今はっきりと見えた。涙を流して、私を見ている。
私は、たとえ叶えられなくとも。
嘘になってしまうかもしれないけど。
「勿論だよ、麗奈。絶対会いに行く」
私の妹を安心させるために、自然と言葉にしていた。




