はぐれ精霊(4)
『じゃあ、契約結んでくれる?』
『契約?』
『僕は今までこの木から神力を受け取っていたんだけど、この木を離れることになるだろ? だったら代わりに誰かから魔力を受け取らなくちゃいけない』
『受け取るのって魔力でもいいの?』
『特定の者から受け取る魔力なら。契約をすると、魔力を受け取ることもできるから、旅に出る精霊は主に契約を結ぶんだ』
へぇー。そうなんだ。
『契約ってどうやってするの?』
『あ。その前にレイカを実体にする必要があるね。ちょっとそこにしゃがんでくれる?』
私は言われるがままその場にしゃがむ。ホムラ君は私の頭の上辺りに手をかざして、目を瞑る。
『――神力を与える。この者に力を』
おおおっ! なんか身体が温かく感じる! そして力が溢れてくるような気も……!
ドキドキしながらその時を待つ。
『獲得条件を満たしました。天村麗花にスキル『実体化』を付与します』
来た『実体化』!
『ホムラ君! スキル『実体化』手に入れたよ!』
『そうか!』
ホムラ君は笑う。なんだか最初にあった時より笑顔が見えて嬉しいな。
私は立ち上がって、ホムラ君にピースサインをする。
『んで、どうやって実体化するのかな?』
『強く思ったら実体化できる。僕も実体化するから先に見てて』
『りょーかい』
ホムラ君が目を閉じる。口が若干動いたと思ったら、ピカっと少し光ってホムラ君の姿がはっきりとした。
はっきりとしたっていうのは、透けなくなったって事ね。
『おおー』
『そんなにすごいものでもないから。レイカにも簡単にできるさ』
私も目を瞑って、実体化と呟いてみた。想像するのを忘れずにね。
すると、身体に若干の違和感を感じた。なんだかムズムズして、くすぐったくも感じる。
目を開けてみると、まず感じたのは風だった。風が私に当たっている。
私の身体を見る。
透けてない! ちゃんと見える!
手を出して、目の前にかざしてみる。
前が見えなくなる! ちゃんと実体化してる!
当たり前なことがこんなに素晴らしいことだったなんて……。大切なものは失ってから分かるって言うけど本当だね。
嬉しくて顔を上げると、ホムラ君がにっこりと微笑んでくれた。
私は無意識に歩く。
そして、ホムラ君をぎゅっと抱き締めた。
「お、おい! 何をする!」
ホムラ君の声だ……。思念でしか聞いていなかったけど、実際に聞くとこんな声なんだ。可愛らしい声。
そして、温かい。熱を感じる。そして、触れる。
久しぶりに人の温もりを感じたからなのか。それとも私の心が弱くなっていたからなのか。
「レイカ……どうしたの? どこか痛いのか?」
次から次へと涙が出てくる。手で拭っても止まらない。ホムラ君に涙が落ちないように彼から離れようとする。
しかし、ホムラ君が離さなかった。
力が入らなくて、しゃがみこむ。ホムラ君は優しく頭を撫でてくれる。
「大丈夫だよ……。僕がいるからね」
彼の温かさに、もっと涙が出てくる。しゃくりを上げながら、私は夢中で泣き続けた。




