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レーンの質問に虚を突かれた俺は、思わず考え込んでしまった。
そもそも俺がプリニャンカのことを嫌いなわけがないのだが、レーンの質問の意味はそういうことではないだろう。
つまり異性としてタイプなのか、と聞かれているのだ。
正直、返事に困る。
「もしゼノがあんな感じでにゃんにゃん言う子がいいなら、ボ、ボクも言ってあげても、いいよ?」
「え?」
「ゼノがプリニャンカを庇ってるのはあの子がにゃんにゃん系の女の子だからだよね。だからご主人様なんて言ってるんだよね?」
おいおい。
にゃんにゃん系女子だって?
なんて誤解だ。
いったいどういう分析をしたらそういう結論になるんだ。
これは早めに間違いを正しておかなければいけないだろう。
「いや。俺はべつに――」
「聞いて。ボクはね、これからの冒険でどうしてもゼノの助けが必要なんだ。だから、ゼノがボクとの旅を続けてくれるなら、ゼノだけのためににゃんにゃんしても、いいよ?」
「ぅそー?」
そんなことがあってもいいのか?
いや。
いいに違いない。
だってレーンが自分でそう言っているのだから。
しかし、だ。
ここで『おねがいします』、などと反射的に飛びついてしまうほど俺は浅はかではない。
そんな単純な男ではないのだ、俺は。
「……よし。それならまずレーンなりのにゃんにゃんを試しに一回やってみてくれるか?」
入れ食いじゃないか、と思ったそこのあなた。
分かっていない。
これは正式契約前のお試し、試供期間だ。
つまるところ、レーンは、俺が魔王討伐任務を放り出してプリニャンカについて行ってしまうのではないか不安なのだ。
だからにゃんにゃんしてでも引き留めようとしてくれている。
だからこそレーンの申し出を受け入れる前に、実際ににゃんにゃんしてもらうことに意味がある。
と言ってもレーンのポテンシャルを疑ってのことではない。
むしろその逆、レーンの可能性を最大化するために必要なのだ。
どういうわけか?
説明しよう。
まず大前提として、レーンはあれでけっこう恥ずかしがり屋だ。
もちろんエルミュットの騎士としては普段から堂々としているが、性別を隠している以上、人前で女の子することには慣れていない。
ましてにゃんにゃん語ともなれば難易度が爆上がり。
そうなると、レーンの申し出を受け入れてから『じゃあにゃんにゃんしてください』と言ったところで『部屋で二人っきりの時に、ね』などと逃げられてしまうのが目に見えている。
まぁ、それはそれでいいのだが、しかし恥ずかしがっている時のレーンの可愛さ補正の高さは見逃せない。
普段凛々しいレーンだからこそ恥ずかしがらせることでさらにギャップ萌えが加速するのだ。
実際、レーンはちょっと戸惑っている。
「こ、ここでするの?」
「大丈夫。ほかには誰も居ないから」
「で、でも……」
「あー。俺、レーンのかわいいところを見せてくれたらコロっと落ちちゃうかもしれないなー」
「お、落ちちゃうんだ……」
落ちたな、レーンが。
俺自身をエサにしたことでもはやレーンには体当たりするしか選択肢がなくなった。
これこそが俺のねらいだ。
「じゃあえっと……ボクのこと、大事にしてほしいにゃん?」
「ふふふ。思った通りこれは、なかなか……」
レーンは案の定、照れながら両手をモジモジさせている。
これだよ、これ。
誰かに見られるかもしれないという緊張感に耐えながら必死になっているレーンのこの照れ感。
普段なら公共の場でこんなことはやってくれないレーンだが、俺を引き止めるために『騎士』と言う殻を、『勇者』と言う世間体を、そして何より『男らしく』という呪縛を脱ぎ捨てて一生懸命がんばってくれている。
そう。
この一歩を踏み出させるために俺は即オチを耐え忍んでいたのだ。
しかしまだだ。
レーンの可能性はまだこんなものではない。
「もう一声。もう一声だ、レーン。あとちょっとで俺は賢者タイムまっしぐらだ!」
初手にしてあの破壊力。
ならばニノ太刀のさらなる切れ味を期待せずにはいられない。
実際、レーンも身を乗り出して上目づかいをアピールしてくる。
「これからずっと、ボクのことかわいがってほしい……にゃん」
よし決めた。
これからはレーンを毎日かわいがろう。
そしてずっとずっと大事にするのだ。
その思いをレーンにも伝えようとして――
「お前ら何やってるにゃん?」
突然の本家にゃんにゃん語に心臓をぶっ刺された。
「う、うわぁぁぁぁ」
プリニャンカの突然の登場に驚いたレーンが恐るべき速さで物陰に身を寄せた。
そして顔を隠してぷるぷるしている。
これはこれでかわいいが、しかしダメージの方は大きそうだった。




