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(あんた、まさかこんなリスクの高い勝負するつもりなの?)
俺が勝負に乗り気になっていると今まで大人しくしていたクーネリアが必死に背伸びして耳打ちしてきた。
と言っても身長差があるので全然届いていないがそこは気にしない。
どうやらこの勝負を行うのに反対のようだ。
(たしかにリスクはあるがその分リターンもある。ただでさえ予定には無かった出来事に首を突っ込んでしまったんだ。軌道修正するにはちょうどいいだろう?)
実際問題一周目では関わらなかったこの場面に遭遇してしまったことで俺はプリニャンカに敵視されてしまっている。
そんな関係のまま先の時間軸に進んでしまえばまたループ現象に捕らわれてしまうかもしれない。
それを回避するためには多少の賭けは必要だろう。
(そんなこと言って、どうせあたしみたいにメイド服を着せてご主人様なんて呼ばせようと思ってるんでしょ。やらし)
やらしいとは失礼な。
俺は純粋に問題を解決しようとしているだけで邪まな気持ちなんてこれっぽっちもない。
一方的にあらぬ疑いをかけるのはやめてもらいたい。
とは言えプリニャンカにゃんにゃんメイド化計画とはクーネリアもたまには名案を出してくるものだ。
採用である。
(って言うか、あの子本当に犬族なの?)
おっと。
その質問をここでしてくるか。
(あのわざとらしい喋り方、もしかして猫族なんじゃないの?)
(言うな。プリニャンカの種族に関しては今は言うな)
そう。
これはデリケートな問題だ。
一周目の時だって他の仲間たちに納得させるのに苦労したのにクーネリア相手にまで弁解するのは骨が折れる。
とりあえずプリニャンカの頭の上には立派な犬耳が乗っかっているのだからそれでいいだろう。
「二人で何こそこそ話してるにゃん。さっさと勝負を始めるにゃん」
よし。
それではプリニャンカにご主人様と呼んでもらえるようにがんばるとしよう。
「賢者様。どうかよろしくおねがいします!」
「俺たちの仇を討ってください!」
「賢者様なら勝てると信じてます!」
「負けたらどうなるか分かってるんでしょうね?」
俺は声援(一部脅迫)を背に受けつつプリニャンカと正面から対峙した。
テーブルの上にしゃがみ込んだ彼女と、堂々と直立不動な俺。
これから始まるのはご主人様の座をかけた世紀の一戦。
このあと本当に魔族と戦わないといけないのだがこの勝負だけは避けられない。
「それで、その勝負っていうのはどうやって決着をつけるんだ?」
「簡単にゃん。にゃんとお前、どっちが美味い料理が作れるかで勝負にゃん。そこの料理人たちが審査員にゃん」
「なるほど料理対決、と言うわけか」
まぁ、俺もそれなりには作れる方だ。
何せパルメディアは好き嫌いが多いうえに自分ではあまり料理をしなかった。
そのくせ皮肉だけは人並み以上だったので俺の料理の腕前も自然と上がったのだ。
だから料理勝負に挑むことも無謀ではないと思う。
(ねぇ。あの子、あんな感じだけどもしかして料理得意なの?)
(いや。俺が知るかぎりプリニャンカは食べる方が専門だ)
それが勝負のためとは言え自分で作ると言い出すとは。
意外と言えば意外な展開だ。
(だとすればチャンスね。あんたが勝てば元の歴史より早いタイミングであの子と出会った失敗を取り戻せるわ)
(ああ。任せてくれ。ここでプリニャンカをにゃんにゃんメイド――じゃなくて仲間にしてみせるさ)
クーネリアに前髪の隙間から睨まれたので速攻で冗談を取り消し、俺は料理人たちに向き直った。
「そういうわけなんですが、皆さんに審査員をしてもらってもいいですか?」
「え、ええ。それはかまいませんが、こと料理に関しては我々もうそは言えませんよ?」
つまり忖度は無し。
実力でプリニャンカに勝たなければいけないわけか。
「かまいません。勝負なんですからそれが当然です」
あとは時間的な問題だが、カルクトス軍の陣地転換と戦闘準備はまだ当分かかるだろう。
手早く一品作って振る舞うくらいなら間に合うはずだ。
「よし。この勝負受けて立とう。俺の賢者メシがどれほどのものか見せてやろう」
俺は特別気負うでもなくそう宣言し、しかしそれゆえ思わぬ苦渋を味わうこととなったのだった。




