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あの賢者タイムをもういちど  作者: 妖怪筆鬼夜行
二章『湯けむりの向こう、約束の場所』
46/91

2-5

「――そういうわけで回廊を守る土壁の出入り口は一つだけ。必然これを突破して内部に突入するわけですが、問題は回廊そのものの破壊が可能かどうかです」


 クーネリアについて考え込んでいた俺は、指揮官の言葉が俺に向けられているものだと不意に気づいた。

見れば全員の視線が俺に集まっている。

いけないな。

ちょっと集中を欠いていたようだ。

変に思われないように俺はすぐに言葉を返す。


「それについては問題ありません。回廊の乗っ取りは難しいでしょうが、破壊自体は俺とソードワース卿が確実に行います。ただし、拠点(きょてん)内部を制圧したらその後の警戒は厳重にしてください。魔王軍の後続部隊が回廊を抜けてくるかもしれませんし、場合によっては逆包囲もあり得るので」


軍議の流れ自体は一周目と変わりなかったようなので内容も把握している。

しかしそれに対する俺の答えは一周目とは違う。

クーネリアが魔王軍の戦術を変更したという前提でこちらも最大限の警戒態勢を取る。


「逆包囲。土壁の内からではなく外から敵が来る、と?」

「あくまでもこれが罠である可能性を考慮しての話です。ほかにも何らかの策略が巡らせれている可能性を常に念頭に置いて作戦にあたってください」

「わかりました。賢者様がそうおっしゃるのなら全軍に徹底させましょう。私も迂闊(うかつ)な行動で部下を失いたくない」


 俺の進言に指揮官は嫌な顔をせずに了承してくれた。

彼が下手に勇猛果敢な猛将ではなく実利主義的な智将だったことは幸いだ。


「あと一応四方に斥候(せっこう)を飛ばして敵の伏兵を探させてください。アデラ高原は見通しがいいのでそれだけで奇襲攻撃は防げます」

「すぐに行かせましょう――おい。騎兵隊に索敵に数名出せと下知しろ。人選は任せる」

「はっ。ただちに」


 さて、これでとりあえずの不安には予防線を張れただろう。

あとは大門を破るために陣形を転換するだけだ。


「それでは大門側に兵力を集めてください。ただし、各所に物見(ものみ)を置いて大門以外から敵が脱出しないか監視を。用意が整ったら攻撃を開始します」

「了解――全員聞いた通りだ。以上で解散。各隊陣形転換掛かれ!」


 指揮官の号令で本陣にいた部隊長たちが飛び出していく。

それぞれの持ち場に帰りすぐさま部下を引き連れて大門のある南側へと集結してくれるだろう。

とは言え丘陵地帯に散開した完全武装の兵士三百五十名が全員移動するまで今少し時間が必要だ。

ましてや総攻撃の準備を整えるとなるとなおさらのこと。

それまでに俺もやるべきことをやっておこう。


「レーン。俺は少し席を外すからこのままここで待機しててくれ」

「いいけど、ゼノはこんな時にどこ行くの?」

「ちょっと野暮用(やぼよう)だ。すぐ戻るから心配しないでくれ」

「わかったよ。ボクは戦闘中の役割とか細かいことを相談しておくね」


 図らずもレーンが指揮官の相手を買ってくれるらしい。

心の中で感謝しつつ俺は指揮所の天幕から退出する。

その際、肝心(かんじん)な相手を連れて行くことを忘れない。


「クーネ。ちょっとお兄ちゃんとおしゃべりしようか」

「??」


 俺が声をかけるとクーネリアの前髪から微かに覗いた瞳に射抜かれた。

どうやらあからさまな誘い方を不審がられたらしい。

まぁ、いい。

あまり深刻な雰囲気で話しを始めるとクーネリアを思い詰めさせてしまうかもしれない。

今はあくまでもフランクかつドライに接した方がお互いのためだろう。


 そうして俺はクーネリアを(ともな)ってこの場を後にした。

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