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さて、見事にメイドとなったクーネリアだが、その働きぶりは思いのほか悪くなかった。
いや。
正直、望外によかったと言っておこう。
掃除に洗濯、食器磨きに手紙の仕分け、果てはベッドメイキングまでなんでもこなせたのだからたいしたものだ。
実際のところ、王城で働くメイドさんたちともなるとそれぞれ専門職を持っていてなんでもかんでも雑用をこなすわけではない。
しかしクーネリアはそれこそ下級の雑役メイドのようにあらゆる業務を手早く片付けていった。
その嵐のような働きぶりは気品にこそ欠けるが実務としては効率的で、仮にも魔王に衣装だけ被せた着ぐるみメイドだとは到底思えない。
そう言えば家でも朝食を作ってくれたし、何か妙に生活力があるんだよな……
「ふふ。妹さん、がんばっててかわいいね」
現在、俺とレーンは庭の手入れをしているクーネリアを二階の窓から眺めている。
高い枝を切ろうと大きな苅込ばさみを手にピョンピョンしてスカートをヒラヒラさせているその姿にレーンもご満悦だ。
本当はもう少し近くで監督していたいのだが、ずっと後をついて回っていたらクーネリアに怒られてしまった。
曰く、『仕事の邪魔』だそうだ。
そんなに前向きなことを言われてしまうとさすがに罪悪感に苛まれるのでこうして距離を置いて見学している、というわけだ。
「普段からあれくらい健気なら俺もうれしいんだけどな」
「でも仲が悪いってことはないんでしょ。ティーセットを割った時もゼノは怒らなかったし、ジェームス様に許してもらえるようにこうして作戦を考えてあげたしね」
「あ、ああ。それはまぁ、そうだけど……」
すみません。
じつは全部俺が仕組んだことです。
そう白状してしまえたらどんなに楽だろう。
しかし今はレーンの裸パンチを回避するための作戦行動中だ。
全部仕込みだったなんて言えるはずがない。
「それにクーネを見てたら分かるよ。お兄ちゃんのこと信頼してるんだなー、って」
「レーンにはそう見えたのか?」
「だってクーネがティーセットを割った時最初に助けに行ったのはボクなのに、あの子ってばゼノしか見てないんだもん。でもしかたないよね。見ず知らずの騎士なんかよりお兄ちゃんの方がいいよね」
どうだろう。
それは単に俺がルーシアの執政顧問代理でジェームス王の直臣だからでは?
「って言うか、ごめんなさい。ボク、賢者様を呼び捨てにして失礼な言葉づかいを……」
そう言えばいつの間にかいつも通りの喋り方に戻ってしまっていた。
でもやっぱりこっちの方がしっくりくる。
「別にいいじゃないか。俺だってレーンって呼び捨てにしてるし、こっちの方が喋ってて楽しいだろう?」
「そう、だね。今みたいに喋ってるとボクにもお兄ちゃんができたみたいだよ」
レーンはそう言って照れくさそうにはにかんだ。
癒やされる。
やっぱりレーンに男を演じさせておくのはもったいない。
ぜひとも我が家に妹として就職してもらいたい。
「レーンみたいな兄弟なら大歓迎だぞ。いっそクーネと代わってみるか?」
「そしたらボクあの子に嫌われちゃうよ。せっかく今もゼノに言われた通りメイドさんをがんばってるのに、その隙にお兄ちゃんを盗っちゃったらかわいそうだよ」
偽妹を演じなくてよくなるならそれはそれで喜びそうな気もするけどな。
「それじゃあがんばってるかわいい偽妹のためにご褒美をあげないとな」
「ご褒美?」
「ああ。レーンも手伝ってくれ。たぶん自分じゃ選べないだろうから、な」
俺の意図が読めないレーンは不思議そうな顔をした。




