8.異変
頭がズキズキと痛む。
これは夢であろうか。
—はやく、はやく目覚めなよ
このままでは大変な事になってしまうよ?
何が?何が、大変だというのだろう。先の大戦以上に大変なことなど、何も…
ズキッ
違う!この痛みは現実だ。
ハッと目が覚める。
夜着は寝汗でぐっしょりと濡れていた。
目を覚まさせるためにも湯に浸かりたい所だが、このような夜中に侍女を呼びつけるのも忍びない。
「着替えるか」
着替えた後、眠りにつく頃には、もうあの忠告のことなどすっかりと忘れ、ただ頭の痛みの余韻のみが残っていた。
————————-同刻、とある執務室
男は仕事をしていた。
もともと周りのものが真っ青になるほどの仕事量を日頃からしている男ではあったが、本来このような真夜中に仕事をしなければいけないことなど滅多になかった。
まあ、自業自得とも言える。
ふと、何かに違和感を覚え見ていた書類から顔を上げる。
(何か異変が…?)
「誰か。いないかい。」
「お呼びでございますか。」
「城内に変わりはないかい?侵入者が入ってきたりなどは?」
「いえ、特に変わりはございませんが。どうかなさいましたか。まさか、襲われたりなどなさいましたか!?」
「いや、それはないよ」
室内の様子を見ればわかりそうなものだが、相変わらずどこか抜けている護衛役である。ちなみに、男はこの気のいい護衛役を、名をとって裴侍司と読んでいる。
「夜中にすまないね。下がっていいよ。何か異変が起きたら報告するように」
「御意」
(気のせいなのだろうか?寝ずに仕事をしていたからかもしれない。緊急のものは終わったし、もう休んで明日やろう)
———同刻、神堂
何か異変を知らせるように、ほのかに全体が発光していた。
しかし、堂の中は神聖とされ、衛兵は堂外で見張りをしているため、気づいたものは誰もいなかった。