7.
皇后は、男-悠舜-の事について何も知らなかった。
ある日、急に現れたのである。その時に咄嗟に持っていた簪を投げてしまったのはご愛嬌である。
まあ、普通に扉から入って来たわけでもないものが、何者と聞いて素直に答えるはずもないし、答えたことを信用できるわけでもないので、未だに何者かを本人に直接聞いてはいない。
しかし、あらかたの検討はついていた。
(まあ、普通敵国、しかもつい最近まで戦争をしていた国の皇后など、信用できるはずもないか。)
要は監視だろうと考えているのである。監視対象に姿を見せる理由については、本当に全く理解することができないが。
(あの男を監視対象に使うとは、今上陛下はよほど人手に困っていると見える。それとも、無能なのか?)
悠舜のせいで何やら他の人も冤罪を被っているような気はしなくもない。
————事実は二重の意味で違うのであるが、それを彼女が知るには少し時間を待たなければいけない。
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「相変わらず、素直で可愛い。接で育ったのに、その性格は何も変わっていない。
話し方が少し変わってしまったけれど、それも背伸びをしているようで可愛いなぁ。」
はたからみたら、明らかにドン引きもののストーカー発言をする男である。
幸いにもこの男は回廊を歩いているわけではないので、この発言を聞いた者は誰もいなかった。
悠舜は、ある部屋の天井の上で止まり、そこに降り立った。
「やあ、ただいま帰ったよ。陛下。ふふ、やっぱり楽しいね。
君はどうだい?」
謎に謎を深めたために意味のわからない展開になってきました…ちゃんと回収する予定の伏線ではあります。