15.
本当に申し訳ございません!大遅刻ですね。待っていてくださった方、ありがとうございます!
「はい…
あの、洪水があった日は我が村の村長の誕生日でした。そのため、避難先ではあるものの、村の皆で集まって村長の誕生日を日頃の感謝と共に祝うことにしたのです。」
どこかで聞いたような話である。皇后は少し違和感を覚えたが、その違和感の正体は分からなかった。
「私の息子は大変村長を尊敬しておりまして、随分と前から誕生日の祝いの品を用意していたのです。ですが、それを村の家に忘れてしまったと言うのです。息子が取りに行こうとするので、私は当初反対していました。ですが、避難して暫くしても何もないからと、つい…
あの時、許可など出さなければ、私の息子は…!
私が悪いのです。全て、私が…きちんとお国の言うことを聞いていれば…!」
「…そうか、事情はよくわかった。重ねて辛いことを思い出させてすまぬが、そなたの息子の特徴を教えてほしい。」
「むすこは、むすこは、黒い髪に黒い目と、少し日焼けした肌の平凡な子です。ですが私にとっては何よりも可愛い子だった。」
「他に何か特徴のようなものはあるか。つけているものでも、当時着ていた服でも何でもいい。」
「服はボロなので、特徴のようなものは…あ、!腕輪をしていました。金属の、少し細かい模様が入った腕輪です。」
「そうか。私も探してみるとしよう。必ず見つけてくると約束する。」
「ありがとうございます。」
この者に気休めは逆効果であるな。そう思い、それ以上声をかけることもなく、その場を立ち去った。
「なぜ、あのようなことを約束なさったのですか。
今もなお見つからないのであれば、彼の息子はもう「あの者とてその可能性が高いことぐらいはわかっておろう。どのような姿であれ、見つけだせば、少しは報われる想いもあろう。そうでなければ前にも進めまい。」…!
申し訳ございません。心ないことを申し上げました。」
「別に私は構わぬが、他のものの前では気をつけよ。要らぬ敵を作ることになりかねん。」
「はい、お言葉心に留めておきます。私も、一緒に探させていただいても良いでしょうか。」
「……?何をだ?」
侍女はキョトンとした顔をした。
「彼の息子をです。」
なるほど、
「そなたは心優しいな。見ず知らずの者の力になりたいとは。では、頼む。」
「はい!かしこまりました!」
そう言って、侍女は、年頃の少女のように笑んだ、珍しい顔をしたが、もう前を向いていた皇后が目にすることはなかった。
「皇后様の方こそ、見ず知らずの方のために話までお聞きになる。私が力になりたいのは、あなたに対してもです。」




