12.
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ズキズキと頭が痛む。その感覚に、眉間に皺を寄せながら目を開くと、民家が目に入る。川を中心として、左右に長屋がひしめいている。その長屋は特徴的で、柱の一つに、菊、秋桜など、それぞれ違った花の紋様が彫られていた。誕生日なのであろうか、祝われている老人の姿が目に入った。
(ここはどこだ?)
このようなところに見覚えはなく、攫われたかと疑ったが、体に拘束されている気配はない。それどころか、身体自体が、
と、
急に目の前の情景が変化した。川は氾濫し、長屋がおしながされている。逃げ惑う男の子の姿も見える。
自分も逃げなければと思ったが、先程途切れた思考のうちで、夢だと気づく。
しかし、恐怖には勝てず、ギュッと目を瞑ったときだった。
(まだ目覚めて居ないの?もうそろそろタイムリミットだよ。本当に目も当てられない事態になってしまう。)
そんな声が聞こえたと同時に、意識が暗闇に飲み込まれた。
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明るさを感じて目を覚ます。何か大事なことを忘れている気がした。しかし、それが何かを思い出せない。ただ思い出さなければいけないと言う焦燥感が募る。
皇后は嘆息した。
「最近何かと疲れることばかりだ。気疲れからくるただの気のせいであろう。」
そう独り言を言うと共に、着替えをしようと立ち上がった。
—-コンコン
「おはようございます。皇后陛下。入ってもよろしいでしょうか。」
このような時間に訪ねてくることは滅多にない。何か急用でも入っただろうか。
「構わぬ。」
「失礼いたします。お召し物をお持ちいたしました。」
「そ、そうか。礼を言う。」
朝の着替え時にはすでに替えの衣が置いてあることが常であるため、皇后は少し動揺した。
「もし良ければお召し替えをお手伝いさせていただきます。」
「そうか、た、すか、、る?ん?お主今何と言った?」
「お召し替えの手伝いを、と。」
皇后は咄嗟に窓の外を見た。気持ちがいいぐらいの晴天である。
今度は侍女の額に手を当てた。熱くはない。
よし、夢の続きか。
「皇后様?如何なされました?昨日は侍医を呼ばれたということで、やはり今日も体調がお戻りではないのですね。ただいま侍医をお呼びいたします。」
現実逃避もここまでである。侍医を呼ばれてはたまったものではない。皇后は慌てた。
「いや、体調は問題ない。」
「そうですか、ではお召し替えを。」
当然のように手伝ってくれようとする侍女に対し、皇后は焦った。
「いらぬ!」
やってしまったと思った。せっかく理由は分からぬが、歩み寄ろうとしてくれていたのに。
侍女は少し悲しそうに顔を歪めたものの、
「かしこまりました。では、もしまた人手が必要でしたらお呼びください。」
と素直に引き下がり、部屋を退出しようとした。
その背中に、
「言い方がキツくなりすまぬ。慣れておるし、一人で着替えられると思ったのだ。お主の心意気は嬉しい。礼を言う。」
と声をかけた。
「お褒めいただき光栄でございます。」
と言って下がっていった侍女の顔は、気のせいか笑んでいたように感じた。




