11.
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—————-夜
「そういえば、今日は寇戀麗とすごいやりとりをしていたけれど、大丈夫だったかい?」
いつものごとく、神出鬼没に現れて開口一番そう告げられる。
その事についてつっこむのも馬鹿らしくなった皇后は、質問にだけ答える事にした。
「すごいやりとり?いや、和やかに終わったが、お主は何を見ておったのだ。」
「え?いや、今日は用事があって、お茶会の途中までしか見ていないんだけど、和やかに終わったのかい?寇戀麗とのお茶会で!?」
ふむ、成程、今日は一日中ストーカーはされていなかったと言うことか。
日頃は口に出せない悠舜への愚痴を、昼間に言っておけばよかったと後悔した皇后である。
「何をそんなに驚いておるのだ。」
「接によって寇氏の領土は被害を受けたからね。彼女は確かに悪い噂はそこまで聞かないけれど、自分の家の領土が被害を受けたのに、その原因となる相手に対して、黙っているような性分でもないはずだ。」
まるで、彼女のことをよく知っているかのような物言いに、皇后は今まで疑問に思って口には出さなかったことを聞いてしまった。
「お主、監視や密偵をすることが仕事ではないのか?普通高位貴族の令嬢の性格など、そう正確に知れるものではないと思うが。」
「…様々な人の監視をしていると、自然とわかってくるものだよ。」
なるほど、陛下直属の密偵なのであればあり得ない話ではないのかもしれない。うまく煙に巻かれたような気はしなくもないが、これ以上聞いても無駄だろうと思い、口をつぐんだ。
「それよりも和やかに終わったってどういうことだい?」
「言葉のままの意味だが、何か問題でもあるのか?」
さっきから話が堂々巡りしているなと思いながらも答える。普段冷静沈着な彼が、それほど動揺するほどにおかしなことだ、ということだろうか。
「いや、和やかに終わったのであれば、何よりだよ。」
今日はやたらと色々なことを、目に見えてわかるように隠そうとするものである。
腹が立ち、一瞬簪を投げてやろうかと頭に手を伸ばしたものの、初対面の時に完全な不意打ちでも無理だったのだから、今回も無駄足になるだろうと思い、嘆息することで、怒りを落ち着けた。
「ところで———-」
と、話題を転換しようとしたときに、頭がひどく痛みを主張した。
ぐらり、と体が傾き、倚子から倒れそうになったところを、流石の反射神経で悠舜が支えた。
「どうしたんだい?」
ガンガンと痛む頭に、患部を抑えたままうめいて答えられずにいれば、
「やはり、君、何か持病を抱えていて、隠しているのではないのかい?今侍医を呼ぶから。」
そうは言っても、悠舜は監視役である。姿を他のものに見られるのは不味いのではないかと思い、そのことを伝えると、
ふ、と笑った気配がした。
「やっぱり君は、何も変わっていないね。昔のまま、昔の君のままだ。」
その声を最後まで聞くことなく、意識が落ちた。
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皇后の意識が落ちたのを確認してから、悠舜は人を呼ぶ。
「侍医を呼んでくれ。」
「御意」
その命を受けて裴侍司は、侍医を呼びにいった。
ふと、悠舜は彼女の体に触れていると違和感を感じた。
(この違和感をどこかで感じたのだが…)
と思ったものの、結局思い出すことはなく、侍医が来る気配がしたことから、全てを侍医に任せようと、人に見られる前に立ち去った。




