石油の未来を考えてみた
専門知識に乏しい素人の論考です。誤りその他御座いましたら感想欄にて御指摘ください。異論も御気軽にどうぞ。
石油の未来は明るい。それが私の結論です。
殆どの読者様には推定お初にお目に掛かります。骨の髄から理系気質の癖に小説を始めてしまったので苦労している Katz と申します。
こうして理系全開の短編エッセイなら良いんですけどねぇ。
チョイト一本のつもりで書いて、いつの間にやら三本目。気が付きゃ短編連ねて放談。これじゃ小説が進むわきゃないよ。分かっちゃいるけどやめられねぇ。等と無責任男がスーダラしている今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今迄は日本と世界のエネルギー源を脱炭素の観点から模索していました。今回はその流れに挑戦状を叩き付けるかの如き主張をぶちかましてみます。
まずは大前提。石油は地中から掘り出す物です。だから化石燃料と呼ばれます。
私も学校でそう教わった記憶があります。そして日本では石油が殆ど埋まってなくて、だから99.7%を輸入に頼っていて、調達失敗のリスクを抑える為に大量の備蓄が必要で。石油化学コンビナートとか太平洋ベルト工業地帯とかの話題ですな。
社会や学校で培った常識は大概嘘だった。現在放映中アニメの主題歌の一節です。はい、正にコレだったんですねぇ。
私が石油生産の常識を最初に引っ繰り返せたのはいつだったかな。十年くらい前でしたっけ。
以下その内容を紹介しますが、ネタは複数あります。宜しければ最後まで御付き合い下さい。
まず一つ目。
もう十何年も前になりますか。石油系の油を超効率的に生産する藻が発見されました。割と地味なニュースに留まった気がします。
これは日本の研究者が沖縄で発見しました。その後アメリカがかなり凄い横槍を入れたとかいうオマケ付き。しかもその横槍の話をマスコミは全く報道しませんでした。世界情勢の紹介をネタとする長寿スナイパー漫画で取り上げた位じゃなかったかな。
ボトリオコッカスとかオーランチオキトリウムとかの話題です。まぁ細かい名前は良いんですが。この辺の経緯について、今は綺麗さっぱりリセットされてるのでしょうか。ちょっとネットサーフィンした位ではわかりませんでした。
良く々々調べると、こいつらの油は厳密には石油と少し違うっぽいです。ガソリンや軽油を置き換えるには研究が必要じゃないかな。目処は付いてるようですが。更に言えば、エチレンとかベンゼンとかは含まれない模様。
エチレンとかベンゼンとか聞いた途端に難しい顔をしないで下さいよ~。
エチレンは、ポリエチレン袋、通称ビニール袋の原料として重要な物質です。いや本当は様々な化学工業製品の原料として基本的な物質なんですけども。詳細は高校化学を参照ください。
ベンゼンはいわゆる亀の甲として、こちらも理系高校生を悩ませる物質ですな。有名処ではシンナーの原料の一つだったり、TNT火薬の原料だったりします。メガトン級って爆弾の単位を聞いた事はありませんか?アレはTNT火薬百万トンと同じ位の爆発力って意味です。
要するに、石油の用途ってエネルギー源だけじゃないんですよ。様々なプラスチックや薬品の原料としての用途もあります。私の考える石油代替品の大問題がこれ。これについての議論はあんまり見ませんねえ。精々がバイオプラスチック位です。
しかしこういうのは大気中に出ないから大丈夫。と言いたいんですが、プラスチックはゴミになったら燃やしちゃうんですよね。残念ながら。
プラスチックの完全リサイクル、未だ夢の域を出ていないようです。研究は進んでるみたいですがね。
私も昔ちょっと調べた事があります。その時の情報では、プラスチックのリサイクルは非常に厳密な分別が前提条件だったと思うんですが。今はどうなんでしょうか。
この方向については私は今一つ興味が湧かなくて。今の日本ではこの辺を突っ込んでもあんまり意味が無いんですよね。上層部が馬鹿だから。
実情としては、今の日本で分別して回収されたプラスチックゴミは、え~と7割方を燃やしてるんですかね。何てったって良く燃えますから。これでプラスチックのリサイクル先進国だなんて世界に自慢するのが日本の化学業界の上層部です。良い恥晒しだから止めて欲しいんですが。
嘗ては中国が日本のプラスチックゴミを買い漁ってリサイクルしました。まだ中国の人件費が安かった時代で、分別を人海戦術で実現できたからだったようです。今でもやってるんでしょうか。そういえば最近、中国はプラスチックゴミの輸入を禁止しましたっけ。
因みに当時の中国の買い漁り方が日本側の迷惑を顧みないやり方だったんで問題になりましたが、それはまた別の話。
と言う訳で、プラスチックの完全リサイクルはちょっと考えたくないようなお寒い状況にあります。
諦めるしかないのか?いえいえ諦める必要はありませんでした。
燃料のみならず原料としての石油まで含めて、常識を引っ繰り返す技術がありました。これが二つ目の石油ネタです。
石油は合成できます。しかも割と古い技術でした。
キーワードは人造石油。
人造石油の歴史は面白い。日本もその流れに関わっています。日米開戦の話に絡んでいて、日本の化学は当時まだ三流だったとか、ドイツの科学は世界一ィィィ!とか、その技術の導入で軍と民間の主導権争いがあったとか、ついでに言うと原子の構造(原子核の周りを電子が回っている)が次第に明らかになってきた頃だったとか、そこから派生して原子核の構造を変えれば金を作れるという現代版錬金術が最先端科学の真実味を持って語られた時代だったとか、そう言った時代の空気を背景にして水からガソリンを作るという海軍相手の詐欺事件が発生したとか。実に興味深い話題がテンコ盛りです。
時代は下り、日本においては人造石油は忘れ去られました。それも強制忘却させられてる感が無きにしも非ず。
これは全くの私の当て推量ですが、海軍の詐欺事件がトラウマになって、戦後教育で人造石油を強制忘却させる流れにされてませんかね。この事件、何しろ記録がほぼ残ってないようですから。よっぽど恥ずかしい黒歴史なんじゃないかな。海軍の伝説的人物である山本五十六が騙されたって話らしいし。
尤も、真っ当な話なら、人造石油の主な原料は石炭です。石炭から採れるコールタールを変質させるとか、石炭を蒸し焼きにしたコークスから合成するとか。いずれにしても石炭液化が主な目的だったりします。
石炭から石油を作ったってねぇ、地球温暖化防止の観点から脱炭素を目指すという目標に照らしたら何の意味もありませんねぇ。う~ん残念。
かと思いきや、そうでも無いんですよ、実は。
注目すべきはその詳細です。何がどうなるから石炭が石油になるのか。
ここから先を論じるには化学の知識が必要です。が、そんなに難しい話にはなりません。多分。けれども話題は少々あっちこっち飛び回ります。途中で目が回っちゃったらゴメンナサイ。ゆっくりとお付き合い願います。
コールタールを変質させるのは、今回はちょっと参考になりません。忘れましょう。
使えそうなのは、コークスから石油を作る方法です。
80歳以上の方ならば、木炭自動車の原理と言えばピンと来るかも知れません。先の戦争中、ガソリンが不足した為に、木炭を燃料として走る自動車が使われました。これは日本だけじゃなかったようですな。日本よりも先にヨーロッパ各国で作られていたようです。
木炭が燃料と言っても、蒸気機関じゃありません。ガソリンエンジンです。ではガソリンの代わりに何をエンジンに噴き込んだのか。ここで化学の知識が出てきます。
夏場は川原や山などでバーベキューを楽しんだりしますよね。その時は木炭を燃料にするでしょう。遊び終わって火を消す時、炭火に水をぶっかけて、ボフッという音を聞いた事は無いでしょうか。あれ、水素ガスが発生して、それが爆発してるんです。
木炭とかコークスってのは炭素の塊です。炭素(C)が高温になると、水(H2O)から酸素(O)を奪って一酸化炭素(CO)になります。酸素を奪われた水は水素(H2)になります。こうして一酸化炭素と水素が発生して、この水素に炭火で着火して爆発。とまぁそういう仕組みになってます。
この原理を利用したのが水素ガス発生装置。この話は水素エネルギーの時にも書きましたっけ。似たような反応を天然ガスでも起こす事が出来て、そうやって生産された水素はアンモニアとなり、窒素肥料となって畑に行くって話でした。
なお木炭自動車で重要なのは水素ではないそうです。一酸化炭素の方をエンジンで燃やすらしい。そして人造石油の主役も一酸化炭素です。
こうして作った一酸化炭素と水素の混合気体を、合成ガスとか水性ガスとか呼びます。触媒を使って上手に操ると、一酸化炭素と水素が繋がっていきます。これが石油と全く同じ成分なんですな。C1化学と言うらしい。
しかもこれ、それほど特殊な技術でも無いようです。その歴史も決して新しい訳ではありませんし。人造石油を生産してる会社も幾つか存在してるようです。しかし原料が石炭とか天然ガスなんですよ。だからその値段が安い=石炭や天然ガスを豊富に産出する国ならば商業ラインに乗るって話です。
そう考えると日本での人造石油はちょっと難しい。石炭なら日本にもありますが、埋蔵量が少ない。採掘コストも高過ぎます。それに何と言っても、化石燃料を原料にする石油では脱炭素になりませんし。
ならば化石燃料以外を原料にすればいいではないかと考えました。要するに炭素です。炭素さえあれば何とかなります。
そこで注目したいのが木炭。
全く知られてませんが、日本の炭焼き技術は世界一です。昔はソ連が日本の炭焼き技術を導入したなんて話もあったんですよね。人力を前提とした炭焼きでは工業にはなりませんが。
一番の壁はコストでしょう。日本では木材生産コストがバカ高い。高過ぎて林業は壊滅しちゃいました。とてもじゃないけど燃料の原料になんか使えません。
ここは技術開発に期待するしかありませんね。人件費の高い所でコストを下げるなら自動化しかありません。林業の完全自動化。私は夢じゃないと思ってます。
林業を自動化するとなると何が必要でしょうか。森林の手入れ、その判断と実務。下草刈りに枝打ちに間伐。伐採と乾燥と製材。伐根と植林。発生する木材や廃棄物の運搬と、処理場までの輸送。
最後の輸送に関しては、自動化の基盤は既にあると言って良いでしょう。はい、自動運転技術です。
自家用車を自動運転して未来の自動車像を確立しようと宣伝に躍起になっている自動車業界ですが、私はまずトラックに応用して物流に革命を起こす方が先だろうと考えています。
自動運転に加えて、荷物のコンテナ化、その積み下ろしの自動化、それに適合する物流基地の規格化、更には工場などの配達先もその規格に合わせて整備、そしてコンピュータ通信との組合せによる在庫管理の自動化。ここまで行けば物流の現場で人手が必要なのは事故対応だけになります。管理者が少し居れば十分でしょう。
余談ですけども、長距離輸送に関してはトラックよりも鉄道の方が有利なんじゃないですかね。運転手一人当たりの荷物量が全然違いますし、鉄道の自動運転はとっくの昔に実用化されてますし。でも日本の鉄道の貨物輸送は壊滅的だそうです。どうも国鉄の分割民営化が、欲深い大馬鹿のやらかした大失敗だったらしいですな。知らんけど。
それはさておき。
森林の手入れについては、今後のロボット開発に期待するしかありませんね。現状では民間活力を利用する訳にはいかない経営状況です。国が金を出す必要があります。
そこで前の、アンモニアエネルギーやマグネシウムエネルギー技術の国有化の話に繋がります。これで稼いだ外貨をロボット開発に投資したらどうかと。
直截的にベーシックインカムに充ててもらうのも良いんですけどね。あぶく銭ってのはすぐに消え去るでしょう。アンモニアにしろマグネシウムにしろ、恐らくはいずれ各国に真似されますよね。
ならばロボットに投資して生きた金にして欲しい。ロボットからのアガリを国民にバラ撒く方が先行きは明るいと考えます。ロボットそのものもさる事ながら、ロボットは運用次第で様々な産業応用も可能ですから。ロボットを前提とした殖産興業とかね。面白いと思うんですよ。
最終的には日本人口の3倍以上の青狸、じゃなかった猫型、ではなく人型ロボットを量産して、秘書ロボットと家事ロボットと産業労補人として無償配布。日本人は働く必要が無くなります!
私の思考はいつもここに辿り着きますな。働きたくないでござる!
閑話休題。
技術的には全自動林業で良いとして、問題は量です。幾つかの数字を組み合わせて試算してみました。
ざっと2憶トン。これが日本の石油の輸入総量です。
ざっと0.35億トン。これが日本の森林の、1年当たりの増加量です。全然足りません。しかも炭に焼けば目減りします。
ざっと0.28億トン。だいぶ少なくなりました。これはプラスチックや薬品の原料としての石油消費量です。具体的にはナフサと呼ばれる成分ですね。ナフサに限れば希望が見えそうです!
人造石油の原料として炭を作るのが目的ならば、木材の必要はありません。間伐材だろうが下草だろうが、植物ならば何でも良いのです。上記の0.35憶トンから少しは増やせるかも知れません。
更には有機物系のゴミも使えます。生ゴミ、紙ゴミ、プラスチックゴミ。プランクトンでも構いません。例えば下水の余剰汚泥など。何でもかんでも蒸し焼きにすれば炭になります。
プラスチックに関して言えば、リサイクルよりもずっと楽じゃないでしょうか。炭素だけ取り出せれば良いんです。分別不要。取り敢えず蒸し焼きにしちゃえば事は足ります。
まぁ実際にはちょっと難しいですけども。水分が多いと乾燥にエネルギーを使うし、変な成分が混じってたら問題が出る可能性もあります。研究が必要ですな。それでも頑張る価値はあるんじゃないでしょうか。
最後にもう一つ。もっとロマン寄りの話、と言えるかな?
国を挙げて夢を追い掛けるプロジェクトが始まりました。大気中の二酸化炭素を直接取り出す研究です。総理がぶち上げた2050年カーボンニュートラル宣言からスタートして、今年から国家プロジェクトになりました。
実は世界の動向を見ると日本は一歩出遅れた感があるんですがね。それでもやらないよりはずっと良いでしょう。
原理的に可能なのかと言う疑問に関しては、大丈夫、小学生でも理解できる現象があります。
石灰水に息を吹き込むと白く濁るという実験を覚えてらっしゃいますでしょうか。普通の空気でも同じ事が起きます。時間は掛かりますが。
この白濁の正体は炭酸カルシウムです。え~と、炭カル入りゴミ袋って奴、あの炭カルです。
石灰水の実験では、二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムが発生します。炭酸カルシウムは水に溶けません。だから白い濁りとなって現れます。
この炭酸カルシウムを高温で焼きます。すると二酸化炭素が取れて生石灰になります。生石灰を水に溶かせば石灰水となります。うむ、振り出しに戻る。
以上を繰り返せば、空気中の二酸化炭素を集める事が出来るって寸法です。
この技術の利点は、森林の増加量を超える炭素を集められる可能性にあります。生物に頼らない手法なので、生物の成長を待つ必要はありません。いずれは燃料としての石油すらも国産ですべて賄える量を確保できる、かも知れません。
しかしこのままでは少々問題がありますな。焼く為にエネルギーが必要とか、時間が掛かり過ぎるとか。そう言った問題を解決するのが専門家の研究と言えるでしょう。
そして十分な濃度と量の二酸化炭素を集める事が出来れば、前に取り上げた水素やマグネシウムとの合わせ技を使えるでしょう。水素と混ぜて条件を整えると水性ガスになります。マグネシウムを燃やせば純粋な炭素になります。その先は上述の通り、人造石油ですな。
以上、石油を再生可能エネルギーにしようぜという話でした。