1話
ギイィィ。
ドアが開く。
少し古びたような扉が語る様にその中の光景も中世往事の不可思議さを見せている。扉横には壮大で荘厳な時計塔が建てられており、そのせいもあって若干だがこじんまりとして見える。
まぁ、実際小さいのだけれど。
窓から少し入り込んだ蔓は本来であればグリーンカーテンとして外を覆うはずなのだがこの様子では中途半端な手入れしかされていないのかもしれない。しかしよく見ると上の方だけ入り込んでいた。勿論窓は開いている。若干黄ばんだり破れかけたり若しくは表紙が剥げかけてる本が並び、所々に空白を見せる棚。
中央の設備されている机には本が幾つか積み上げられていて、紙やら何やらも散らばっている。
アンティークな雰囲気を漂わせて室内は誰かの足音と至る所に取り付けられた時計がカチ、カチ、と同じタイミングで鳴り響いている。扉が閉まると開けた時には気づかなかったが、取り付けられた小さなベルがチリン、と音を立てた。
「いらっしゃい。時計屋ワンダークロックへ!」
出入り口の扉の先に女の子がやってきて出迎えてくれた。
見た感じだと160cmそこらの身長っぽい。
この地域じゃ珍しい黒髪の少女が紙を挟む木製のバインダーを抱えてやってきた。
この店の看板には、
【時計屋・ワンダークロック】と書かれていた。