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第6罠 箱罠にクッキー入れて置いてみた

 異世界生活6日目。

 コッコの鳴き声よりも気になるのは、レーラの寝姿だ。

 ショートパンツに大きめのTシャツで、部屋にあった抱き枕に足を絡めて眠っている。Tシャツははだけているし、どう見ても無防備すぎるのだ。

 昨夜どうしても我が家のベッドで寝てみたいと3人が言って聞かないので、じゃんけんで勝ったレーラが昨夜は泊まることになった。


 ミティとゴッシュは自分たちの家に帰っていったので、広い家に2人きり。

 コッコの足を縛った結界は人にも有効なのだろうか、と思い始めていやいやと首を振る。

 防犯のこともあるし今度試してみる必要はあるが、まさか今のシチュエーションで考えることではないだろう。


「うーん……、おはよ、ティム」

「お、おはよう、レーラ」


 急に声をかけられてドキリとする。変なことは考えてないからね……?


「すごかったぁ……、こんなに気持ちいいんだね」

「ぅえ!? あ、あぁ、ベッドか」


 ダメだ、どうにも心臓に悪い。というか今のはレーラが悪い。


「本当に今日だけだからね、レーラ」

「えぇ!? 何で!?」

「いや、一緒に寝るのはやっぱり……」

「あ! ティム、何かしたんでしょ」


 ふふ、と笑うレーラが、何だか今朝は少し大人っぽくて。


「私は、ティムだったらいいよ」


 ……余計に泊められないよ。そんなこと言われたら。


「あー、ティム、真っ赤になってる。ふふ、冗談よ。本気にした?」


 女の子って、怖い。


 朝食を作ってくれた後、レーラがお弁当としてサンドイッチを持たせてくれた。


「領主様はとても優しい方だけど、失礼のないようにね。これ、グランさんと一緒に食べて。」

「うん、気をつけるよ。お弁当ありがとう。レーラのサンドイッチ美味しいから、グランさんも喜ぶと思う」

「気をつけて、行ってらっしゃい」


 出かける前に、コッコファームの様子を見に行く。

 昨日工夫した自動卵回収穴は上手く機能したようで、窪みにきちんと卵が集まっていた。

 ただ、量が増えてきたから窪みのエリアを少し広くしておこう。

 コッコの数はすでに100羽を超えていた。餌場としていたロラン草もすごい勢いで増えているものの、コッコの増殖率を考えると足りなくなる可能性はある。

 鑑定先生で確認すると、プレミアムコッコは雑食でよく食べるので、色々な種類の餌を用意した方がいいということだった。

 

「約束の時間までまだ少しあるから、森に行くか」


 鞄を肩にかけて、森に走る。

 何でも食べるみたいだし、と目につく草や虫を片っ端から回収していく。

 採りすぎるとまたレーラに怒られちゃうと思い、回収した残りに結界をかけて魔力を込めてみると、急に草がみるみる伸びた。


「うわ、これ便利だな。次は採る前に増やしてから採ろう」


 コツを掴んだ後は、回収作業も早かった。増やしてから元の量まで採取することを繰り返したので森の資源もなくならずに済みそうだ。


 30分程でアイテムボックスにたんまり回収し、帰ろうとしたところでふと思い出した。


「そうだ、新しい罠を使ってみよう」


 箱罠を設置する場所を探していると、ちょうど良い木のうろを見つけた。ここなら箱罠の欠点とも言える箱の部分が見えにくくなるので、うっかり入ってくれるかもしれない。


「餌は何を入れようかな……。何がかかるか分からないし、とりあえず今採った草や実を置いてみるか。」


 何種類かの草やベリーリュの実を置いてみるが、考えてみれば森にあるものばかり置いていてもあまり興味が惹かれないかもしれない。


「森にないもの……、そうだ、昨日買ったクッキーと焼き菓子はどうかな」


 後で考えればおかしいのだが、その時は時間がないこともあってあまり考えずに罠に甘いお菓子を仕掛けた。

 ――まさか、あんなことになるとは思わずに。

 

「すみません、お待たせしました」


 急いで森から帰った俺は、森から採ってきた草や実をコッコファームに設置して、結界内を十分に魔力で満たしてから冒険者ギルドに向かった。


「あぁ、時間通りだ。問題ない」


 馬車を用意してくれていたグランに感謝を伝えると、領主様が用意してくれたのだから直接会って言えと言われた。


 馬は、普通にいるんだな。異世界って出てくる動物みんなモンスターだから、普通の動物がいると安心する。


「馬車の馬はどこかで飼育しているんですか?」

「馬?そりゃなんだ。こいつはスレイプニルだぞ。速いやつは足が8本あってな。こいつは6本だから、まぁ中くらいだ。速いほど値がつくんだが、気性が荒いから飼育にはあまり向かんな」

「じゃあどうやって、馬車を」

「好物のキャロッティを使うんだ。餌で誘き出して、食べている間は大人しいからその間に繋ぐ。進むときは目的地の方向にキャロッティを吊るす。簡単だろ」


 どうみても馬だと思ったのに。本当だ、足が6本ある。キャロッティは人参にそっくりで、嬉しそうに食べている姿は人を襲うモンスターには思えなかった。

 こんなことで話し込んでいると遅れてしまうとグランに怒られ、慌てて乗り込む。馬車の内装は落ち着いたダークブルーの基調に銀の装飾が上品だ。椅子のクッションも分厚く、長旅でも疲れない配慮がされているようだった。


 馬車が進み出すと、思ったよりも速いスピードで景色が流れていく。振動はあまり感じないため快適だ。


「もうすぐ、隣のサパン村が見えるぞ」


 グランが指差す方を見るが、林業が盛んというだけあって鬱蒼とした森が続くばかりだ。


「森を抜けたら、そこがサパン村だ。ココイ村の隣にも森はあるが、サパン村の森に比べれば小さいもんだ。広い分、ワイルドボアやレッドベアなんて強い魔獣に会うこともあるからな。スレイプニルの足でさっと抜けてしまうのが勝ちだ」


 意外と怖い森なんだな。グランさんがいるから安心はしていられるけど、何かあったときに結界をかけられる心づもりはしておこう。


 森を抜けると、木製のロッジのような建物がちらほらと見えてくる。まばらに立ち並ぶ民家と、中心部にギルドや店が集められた配置は、ココイ村と似ているようだった。


「案内したいところだが、今日は急いでいるからな。一気に通り抜けるぞ」


 サパン村を抜けると、さっきの森から急に雰囲気が変わり、一面の草原が現れた。

 ゆったりと動かない白い点があちこちにあり、目を留める。


「グランさん、あれは……岩ですか?」

「岩みたいに見えるか? あれはスロウシープだ。大人しい性質で動きもゆっくりしているから、タバラ町はあの毛を刈って織物をするんだ」


 羊だったのか。あまりに動かないから岩かと思ったけど、あんなに大人しいなら撫で放題だな。


「毛刈りのやり方が下手だと突然蹴られるらしいけどな。タバラ町の服や絨毯は質がいいから、興味があったら行ってみるといい」


 タバラ町か、覚えておこう。ここまで結構遠いので、いつ来れるかはわからないけれど。


「タバラ町を抜ければ、目的地のノルン街まであと少しだ」


 タバラ町からノルン街に近づくにつれ、建物が増えていく。

 ノルン街に入ると、さすがに人口の多さを感じさせる密集度だ。中心部と思われる広場の周りには10階建てくらいの大きな建物も多くあった。


「すごい、建物がたくさんですね。ココイ村とは全然違う」

「ココイ村は一番辺境のど田舎だからな。王都はこれの比じゃないくらいもっと都会だが、ノルン街まで来るとだいぶ賑わっているだろ?」


 広場を抜けて正面奥の豪邸が、アーベスト領主のお屋敷だ。

 スレイプニルの馬車を降りると、到着を待っていただろう執事の出迎えがあった。


「グラン様、ティム様。お待ちしておりました」

「ティムです。お招きいただきありがとうございます」


 グランとともに挨拶をすると、一歩前に出た執事がグランに小声で話す。


「ランドール様が奥でお待ちになっておりますので、長旅でお疲れのところ恐縮ですが」

「ああ、すぐ行こう」


 通されたのは、煌びやかな調度品が並ぶ応接間。馬車の色合いと同じダークブルーに銀が映える装飾はアーベスト家の色なのだろうか。

 応接間も統一された色使いに、貴族の格式高さを感じた。


「あぁ、よく来てくれたね」


 にこりと柔らかな微笑みをこちらに向けるのは、アーベスト領の領主様だ。歳はグランと同じ頃だろうか。胸元に僅かにフリルを纏わせた純白のシャツに、濃紺に銀の刺繍で飾られたジャケットを優雅に着こなしている。


「ランドール・アーベストだ。といっても、私はしがない貴族の4男でね。後を継ぐでもなく王都から離れたここアーベストを父から任されて自由にさせてもらっているだけだ。気軽に接してほしい」

「ティムと申します。どうぞよろしくお願いします」

「固くならなくていいよ。グランとも昔からの親友でね。一緒にパーティを組んでいたときにはよく助けてもらったんだ」

「そうなんですか、同じパーティで冒険を」

「昔の話はいいだろランド。ティムを連れてきたぞ」


 普段と同じ口調で話し愛称で呼ぶグラン。仲がいいなら初めから教えてくれればいいのに。


「いいじゃないかグラン。ティム、といったね。話はグランから聞いているよ。その年でコッコの巣を見つけてこれるとは大した能力だ。ぜひ、話を聴かせてほしい」


 メイドがお茶やお菓子を並べてくれ、ゆっくり話そうと微笑むランドール。

 拙い説明ではあるが、コッコの巣を見つけるまでの冒険と、コッコの巣の中での出来事を順番に話していった。

 一番盛り上がったのはゴールデンコッコが現れたときだ。大きさは? 毛の質感は? 触ったのか? とランドールの質問が飛び交う。グランと反応が同じだ。

 横で頷きながら聞いているグランは、2回目の話なのに楽しそうだ。根っからの冒険好きなんだな。

 

 ゴールデンコッコからもらった金の卵を鞄から出してランドールに見せる。


「……いい色だ。まさに純金だな」


 しげしげと眺めて、ランドールは3つとも買い取ろう、と言った。しかも、1個金貨1200枚で。


「サイズも大きめだし、質がいい。ちょうど今月娘が10歳の誕生日でね。節目の年に金の卵で祝うと幸運が訪れると言われているんだ。探していたから、間に合ってよかったよ」

「そうですか、お役に立てたようで良かったです」


 依頼達成料と、金の卵3個を合わせて金貨4000枚。金の卵をランドールに渡すと、執事が恭しく金貨を持ってきた。カバンにしまう振りをしてアイテムボックスにしまうと、ランドールに気づかれる。


「その鞄、マジックバッグかい? 容量が見た目よりも多いようだけど」

「あ、あぁそうなんです」

「希少な物を色々と持っていると狙われやすいから、あまり目立たないように使ったほうがいいよ」

「ご忠告ありがとうございます。気をつけます」


 危なかった。鞄のせいにできて良かった。ゴッシュ、ありがとう。

 まさかこんなに金貨をもらうとは思っていなかったから、鞄の大きさを失念していた。


 話はコッコの飼育に変わり、コッコファームを始めたことを話す。


「なんと、コッコを飼育とは……。足が速く捕まえることすらできないから、誰も出来なかったことだな。コッコ肉が出回れば、近年の肉不足を補う大きな一手となるだろう。ティム、期待しているぞ」

「よければ、コッコファームで育てたコッコ肉を召し上がってみませんか。鞄に入れてきていますので、どうぞ」


 マジックバッグと思われているからいいかと、鞄の中から昨日ドッポに捌いてもらったコッコ肉5羽を取り出す。領主様に渡すと話したら丁寧に包んでくれたのでなかなかの大きさだ。


「昨日捌いたばかりで新鮮ですので、どうぞ」

「おお、では今日さっそく食べてみるとしよう。うちのコックは優秀でね。あぁ、ちょっと呼んでくれないか」


 近くに控えていた執事にコックを呼びに行かせる。

 すぐに走ってきたコックに肉を渡すと、コックは目を輝かせた。


「この肉……!! 普通のコッコ肉ではないですね!? 見ただけで上質なのが分かりますよ。ランドール様、これは一体どこから……?」

「やはり分かるか。これはティムが育てているコッコの肉だ。今後販売するそうなので、今日はそのコッコ肉の味を確かめたい。腕を振るってくれるか」

「はい!! もちろんです、ランドール様! このような役目を与えていただき光栄です!!」


 コックが泣きながらコッコ肉を抱きしめて厨房へ戻っていった。

 コッコじゃなくて、プレミアムコッコだからね。分かる人には分かるんだろう。


「せっかくだ、もうすぐ昼だし昼食を食べていかないか。グランもさっきのコッコ肉、食べてみたいだろう?」

「く……っ、肉で釣るとは卑怯だな」

「よし決まりだ。ティム、もう少し、楽しい話を聴かせてくれないか」


 そこからは、異世界に来てからの話をした。ココイ村のこと、良くしてくれているミティやレーラ、ゴッシュのこと。ジャックウルフと一角ラットのこと。

 それまでのことは覚えていないと話すと、何でも力になるから言いなさい、何なら養子に来るかとまで言われてしまった。

 初めて会った俺にそこまで言ってくれるなんて、ランドール様は優しくていい人だ。


 昼食の用意ができ、食堂に案内される。席に着くと、ナイフとフォークが並べられておりお皿にナプキンが置かれている。メイドがナプキンを広げてくれ、マナーが分からず周りを見ながら真似をした。

 フルコースが出てきそうな気配に緊張するが、それよりも厨房から流れてくる美味しそうな匂いにお腹がギュウと鳴った。


 前菜は、表面だけ軽く炙って薄く引いたコッコ肉に、新鮮な生野菜を和えたカルパッチョ風。

 鮮度がいいので生で食べた時の風味が良く、一緒に和えてあるハーブの香りが鼻に抜けて爽やかだ。

 乳白色のコッコスープは骨ごと煮込んで旨みがよく出ている。

 テリーヌやフリットもとても美味しく、さすが領主のお屋敷で雇われているコックだと思わせる味の数々。試食という意味もあり、様々な調理法での味わいが比べられるよう考慮されている。

 メインは、コッコ肉にガーリケの風味をきかせたコッコステーキだ。じゅうじゅうと鉄板に乗せられて出てくると、湯気を上げながら食欲をそそってくる。

 ナイフを入れると、肉汁が鉄板に溢れてじゅう、と音を立てる。皮はパリッと焼かれ、肉はふんわりと柔らかく、一口入れただけで極上の幸せだ。


「美味い、いや美味すぎるな……。なぁグラン、この肉で戦争が起きたりしないだろうか」

「物騒なこと言ってくれるな、ランド。戦争する前に俺はこの肉で死ねる」

「ティム、このコッコ肉、うちの屋敷に定期的に卸してもらうことはできるか」

「は、はい。輸送さえクリアできれば可能かと」

「そこはスレイプニルの馬車を出すから問題ない。1羽いくらで販売するつもりだ」

「価格は、商業ギルドと解体職人のドッポさんと相談して決める予定です」

「絶対に、この肉を食わせてから価格交渉したほうがいい。普通のコッコ肉で値段をつけてはいけない代物だ」

「は、はぁ……、ありがとうございます」


 アーベスト家に月4回20羽ずつ、計80羽の定期納入を約束し、帰りの馬車に乗り込む。

 価格はいくらでもいいと言われたが、商業ギルドと相談してから他と同じ値段でいいと話した。


「ティム、話が決まるまで絶対にセレンに話すなよ。領主様の屋敷でコッコ肉のフルコース食べて帰ってきたなんて知られたら、俺が殺される」


 販売までに先に食べたと知られるのが怖いということか。

 

「大々的に試食会でもしちゃいましょうか。もちろん、コッコが増えてからですけど」

「いいじゃないか。普通のコッコよりもとんでもなく美味しいとみんなにも知ってもらえば、少し高くなっても買い手は尽きないだろう」

「みんなに食べてもらいたいから、正直あまり高級品にはしたくないんです」

「1羽まるっとじゃなくて加工や調理して販売するのはどうだ? まぁ美味いから1羽あっても食っちまうんだが、それなら価格は抑えられる」

「食堂とか、屋台ですよね」

「ココイ村はあまり観光客も来ないし、外食するような店はほとんどないからな。まぁティムがどこまで商売したいかだ」


 料理かぁ、と考えて、今朝レーラに持たされたサンドイッチを食べそびれたことを思い出す。アイテムボックスの中なので出来立てのままだが、グランと一緒に食べてと言われたんだった。


「あの、これ今朝レーラにお弁当に持たされたんですけど、グランさんと一緒に食べてと言われていたので」


 おずおずとサンドイッチを渡すと、グランの胃袋は底なしなのか嬉しそうに食べてくれた。

 絶品フルコースの後に出してごめん、レーラ。


「いや、これめちゃくちゃ美味いぞ。コッコの卵のサンドイッチということは、これもティムのところで産まれた卵か」


 そうか、昨日回収した無精卵を使ったから、もしかしてそれもプレミアム……。


「卵も、販売しようと思っているのですが」

「残念だったなランドール、卵も食べたのは俺だけだ」


 卵は出さなかったから契約しなかったけど、これは卵もと言われそうだな。


「コッコの話をしているうちに、もう森が見えてきたぞ」

「本当だ、もうすぐサパン村ですね」


 行きは遠いように感じたけど、帰りはあっという間だった気がする。

 疲れたのか、満腹感が眠気を誘ってグランと2人、ぐっすり眠ってしまった。


「着きましたよ」

 

 スレイプニルを運転してくれていた御者が起こしてくれる。

 空はもう暗くなり初めていた。感謝を伝え、グランと別れる。


 急いで戻り、コッコファームの様子を見に行く。

 中に入ると、朝入れておいた草や虫は食べ尽くされており、コッコが大量に繁殖していた。


「これ、何羽だ……? 200、いや300はいるか」


 大量に卸しても問題ないくらいの数は揃ってきたと言えるだろう。

 餌は、また採ってきたほうが良さそうだ。

 もう暗くなってくるし、急いで採ってこないと。


 森に走っていき、また結界で増やして採取を繰り返す。

 アイテムボックスに大量に放り込んで帰ろうとしたところで、今朝設置した箱罠を思い出す。


「この近くに設置したんだっけ……」


 罠を設置した場所はオレンジに光って見えるから探しやすい。奥の木の根元に反応を見つけ、何か入っているかなとゆっくりと近づく。


 辺りはすっかり暗くなってきた。早く帰らないと、夜の森では何と出くわしてもおかしくない。

 木のうろの奥に、ぼんやりとライトグリーンの光が見えた。


 ガサ、と動く気配がしたので、咄嗟に箱罠に向けて結界をかける。


「……捕獲、できたのかな」


 中を見ると、ライトグリーンの体に長い耳。うさぎのような見た目に、額には赤い宝石がついている。


『……ダレだ、オマエ』


 喋った!?


「ティムだよ。……君は?」

『……カーバンクル、知らないのか』

「……カーバンクル」

『ココにあった、あまいやつは』

「……あぁ、クッキーのこと? まだあるけど、食べる?」


 アイテムボックスからクッキーや焼き菓子を出してあげると、カーバンクルは前足を上手に使って食べた。お腹空いてるのかな。大きさも小さめのうさぎくらいで、可愛い。


『コレ、もっとあるか』

「また買ってくればたくさんあるよ。お腹空いてるなら、うちに来る?」

『……オマエのケッカイ、いたくない。いたいこと、しないか?』

「そんなこと、しないよ。……ねぇカーバンクル、良かったら僕と、友達になってくれない?」


 カーバンクルはキョトン、とすると急に笑い始めた。


『オマエ、めずらしいな。ニンゲンはみんな、オレをみるとアタマのほうせきをとろうとするのに』

「ひどいね、こんなに可愛いのに。僕まだ、この世界のこと何も知らないんだ。教えてよ」

『……ナマエ、つけろ』

「え?」

『トモダチ、なってやるから。オレに、ナマエ。つけろ』


 名前、名前かぁ……。


「じゃあ、カーバンクルだからクルルはどうかな」


 言い終わった瞬間に、結界と罠が消える。


「これで、オマエとオレはつながった」


 しゅるり、と泳ぐように奥から出てきたクルルは、宙に浮いたあと俺の右肩に乗った。


「よろしくな、ティム」


 こうして、甘いもの好きのカーバンクルが、俺の新しい相棒となった。

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