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第5罠 プレミアムコッコとエール

 異世界生活5日目。

 ……あれ、コッコの鳴き声ってピヨピヨだったっけ……?


 いつもの盛大な鳴き声が聴こえない代わりに、すぐ近くでピヨピヨと可愛い鳴き声がする。


「うわ!! もう孵ってる!?」


 驚いて思わず叫んでしまうと、ミティとレーラが部屋に飛んで入って来た。


「わぁ! かわいい」

「……ティム、孵るまで20日かかるって言ってなかった?」

「……そうなんだけど。何でだろ」


 孵化寸前の卵だったのかと思い、檻の中で雌コッコが温めている卵を確認したが、孵る様子はなかった。


「……もしかして、結界のせい」


 昨日、鑑定先生に言われるままに魔力を込めたが、成長促進作用がまさかここまでとは。

 雛にはもうこの結界では狭くて暑いだろうから、大きさを広くして環境を整える。

 ……せっかくだから、魔力も込めておくか。


「おなかすいてないかな? 黄色くてふわふわでかわいい」

「そうだな、餌を採ってこないと。何を食べるのかな」


『鑑定:コッコの雛 孵化したばかりの雛。好物はロラン草の柔らかいところ、グリーンワーム、レインボーバタフライの幼虫、ポト麦』


 ロラン草に、グリーンワーム……。

 聞いたことないものばかりだけど、頑張って集めてこよう。


「雛が食べそうなものを森で探してくるね。すぐ帰ってくるから」


 鞄を肩にかけて、森に走る。鑑定を頼りに、森の中を探していくとロラン草はすぐに見つかった。

 グリーンワームはロラン草の葉っぱの裏についていた。

 レインボーバタフライは、虹色の蝶かな。珍しそうだけど、昨日コッコと森を歩いていたときに見た気がする。


 木漏れ日の下に花がたくさん咲いている場所があった。7色の花だけでも綺麗なのに、そこに7色の蝶が飛んでいたんだ。

 花が咲いている場所の葉っぱを調べると、思った通り幼虫がたくさんいた。


「あとは、ポト麦かぁ……。」


 麦だから、森にはないかもしれないな。誰か育てていないか、聞いてみよう。


「ただいまー」

「お帰り、早かったな」

「ポト麦だけないんだけど、ゴッシュ知らないかな」

「何だ、ポト麦ならココイ村の特産品だ。うちにもたくさんあるし、毎日食べてるパンはポト麦だぞ」


 最後のポト麦をゴッシュがくれたので、これで4種類揃ったな。

 お腹が空いて鳴いている雛たちに、採ってきた餌をあげると、喜んで食べてくれた。


 ようやく、自分も朝ご飯だ。レーラがパンとゆで卵でサンドイッチを作ってくれていた。


「いつもありがとう。今日もとっても美味しいよ」

「ティムが美味しい食材をくれるからよ」


 卵サンドにかぶりつきながら、一人暮らしになってもレーラの料理は食べたいなぁと思った。


 食後に部屋に戻ると、あげた餌はすっかりなくなっていた。というより、さっきまで雛だったのにもうコッコになっている。

 ……成長、早すぎないか。

 呆然と見ていると、目の前の雌コッコが卵を一つ産んだ。有精卵だ。

 ……これ、もしかしてめちゃくちゃ増えるスピード早いんじゃ……。

  

 とにかく家と土地だ。急がないと、すごいスピードで増え続けてしまう。

 俺は冒険者ギルドに走った。


「すみませーん、ティムです」

「おはようございます、お急ぎですか? ギルド長なら奥にいますよ」

「ありがとうございます!」


 迷わず奥の部屋に行くと、驚いたグランが麦茶をこぼした。


「何だ朝から慌てて。にしても、昨日は何で急に帰ったんだ? まだ話の途中だったのに」

「ゴールデンコッコの話はまたゆっくりしますから、今は話を聞いてください」


 コッコの卵の孵化に成功したことと、育てるための家と土地が欲しいことを手短に説明する。


「……何かまた、すごいことになってるな」

「急がないと、どんどん増えてしまうので。家と土地について教えてもらえませんか」


 グランに聞いたところによると、家や土地については商業ギルドの管轄になるそうだ。

 グランが商業ギルド長に連絡し、今から一緒に会ってくれることになった。


「よお、急で悪いな。こちらが新人冒険者のティムだ。この前のコッコ肉はこいつのおかげでね。ジェミィも食べたか?」

「グラン、あんたはいつも急だね。この前も、あんないい肉こっちに卸してくれたら数倍の値段で売れたのに。勝手なことしてくれて」


 ジェミィ、と呼ばれる商業ギルド長は、黒と紫の高そうなショールに身を包んだ高齢の女性だ。

 小柄な体格だが、纏う雰囲気は力強く、ちょっと怖そうな感じがする。


「いや、急だったから話も通さずにすまなかった。まぁあれは冒険者ギルドにティムが買い取ってほしいと言うからな、仕方なくだな」

「ほぉ。じゃあティムとやら、今度からはきちんと商業ギルドに相談するんだよ。そうだ、商業ギルドに登録しときなさいな。それならあんたが販売できるからね、それがいい」

「どうせ商業ギルドに売上の1割を納めるから、儲かる算段だろ」

「グランがそういうこと言えるのかね、喧嘩するなら話は聞かないよ」


 どうやらあまり仲が良くなさそうだ。雲行きが怪しくなってきたので、間に入って家と土地の話を相談した。


「ふうん、それで家と土地がね。今すぐって、家はすぐには建たないよ」

「土地だけでもいいんです、家は建てなくても借りたりはできませんか」

「金は持ってるのかい?」

「いや、あの、手持ちはあんまり」


 あ、でも、と咄嗟に金の卵を2個、ジェミィの前に出す。1個で金貨500枚って聞いていたし、売れたりしないかな。


「あんた、それは……!! ゴールデンコッコの卵じゃないか! しかも2個も……!」

「商業ギルドで買い取ってくれたりはしませんか」

「んむむぅ……、金貨1000……、いや、2000で売ってくれんかね?」

「金貨2000枚!?」


 びっくりした。すごい額だ。


「ゴールデンコッコの卵は貴族に人気でねぇ。最近は全然見つからないから、今は市場価格が跳ね上がってるところさ」

「それなら、家と土地は」

「そうさね、金貨2000枚もあればココイ村のどこでも好きなだけ買えるねぇ」


 場所を選ぶのに、外に出る。ココイ村の端っこ、森と村の境界に近い場所を勧められた。見渡す限り、端から端まで全部使っていいそうだ。


「中心部からは少し遠いが、ここならコッコが大量にいても村人が困らないし狭くなれば森の方に広げればいい。開拓すれば土地は自分のものだからね」


 ミティたちの家とも近いし、ここなら良さそうだな。

 問題は、家だけど……。


「ここって、家は」

「ないよ」

「ないって……」

「元から借りれるような家なんてこの村にはないのさ。住みたい家は自分で建てる。必要なら大工は紹介するから、頑張って建てなさいな」


 そういうことか……。

 商業ギルドに戻って土地の契約を済ませ、土地代金貨1200枚を差し引いた金貨800枚を渡された。

 商業ギルド登録も行い、登録料として金貨1枚を払う。冒険者ギルドのほうが良心的だったんだね。


 登録したことで、広場に店も出せるし家をお店にしてもいいと言われた。

 商売は自由だが、必ず商業ギルドに販売している物と売上を報告すること、売上の1割を納めなかった場合は即登録が抹消され二度と入れないことが説明された。

 どっちも怖いな、ギルドって。


 家に急いで戻り、3人には土地を買ったことを説明した。驚いていたが、家はないので今後もまだしばらくは泊めて欲しいとお願いすると、もちろんと笑顔で了承してくれた。


 孵ったコッコたちを見ると、8羽ではなく雛も混じって15羽になっていた。慌てて外に出し、結界をコッコカーの形に変えて運ぶ。


 先ほど買った土地に、設置型の結界を作ってみる。イメージするのは、コッコが出られないくらいの壁を四方に。

 見た目も大事なので、白木のウッドフェンスをイメージしてみると、高さ3メートルのウッドフェンスを横幅50メートル一気に真っ直ぐ作ることができた。四方を同じように作って、扉を付ける。

 上からモンスターに襲われても悪いので、天井として木の葉っぱで覆われるようなイメージで大きな木を数本設置。

 やっぱり元の環境に近いほうがコッコも安心して暮らせるだろう。コッコの巣になるべく近いように、地面にも結界を巡らせて草や花を生やしてみた。


 ……思った以上に、何でもできるな、結界魔法。

 これ、家も建てられるんじゃないだろうか。


 家、家……。

 先程作ったコッコファームから少し離れた場所に、手をかざす。すぐ近くにすると、コッコの鳴き声がすごいだろうからね。

 あんなに大きなウッドフェンスが出来たんだから、家だってできるはず。そう思いながら、力を込めてみる。


 ……家が、建った。しかも一瞬で。


 イメージするだけで設置できるの、すごく便利だな。あと、小さい犬小屋で試してみたけど消したくなったらすぐ消せる。で、一度作ると覚えてるのかまたすぐ設置できる。

 

 一瞬でできてしまった家に、とりあえず入ってみる。

 建築関係の仕事だったからか、間取りとかサイズ感のイメージがピッタリすぎてもはや怖い。

 イメージしたのは、よくある家族向けの新築一戸建て。一人暮らし用でもよかったんだが、つい3人と一緒に住むイメージで作ってしまった。

 水道も出るし、電気もつく。どうなってるんだこれ……?


「……ということは! あった! お風呂だ!!」


 異世界に来てから、薪で沸かしたお湯を体にかけるくらいしかできていなかった。

 お風呂か。作れるなら、露天風呂とか最高だな……。

 一気に夢が膨らむ。結界魔法最高。


 外に出て、コッコたちを完成したコッコファームに放す。もちろん俺以外は出入りができないようになっている。ずいぶん広いが、魔力を込めてみると濃度が増したのが分かった。


「中にいると分かるもんだな。コッコたちも活き活きしてる」


 どんどん増えるコッコに対して餌が不足する心配があったので、朝採ってきたロラン草やグリーンワーム、レインボーバタフライ、ポト麦の残りをファーム内にさらに結界を張って栽培・飼育してみることにした。

 あとはこまめに様子を見に来て、都度出てきた課題に対応していくだけだ。


 コッコファームが上手くいけば、コッコの数を減らさずに村人に安定供給もできる。俺も、美味しいコッコ肉がいつでも食べられるのは嬉しいしね。

 ただ、自分で捌くのはやっぱり怖いので解体職人のドッポさんにまたお願いに行かないとな。

 あとは販売ルートの確立。そこは商業ギルドに相談してみよう。他にも村や街があるようだし、余ればアイテムボックスに入れておいていつでも新鮮な状態で販売もできる。

 よし、頑張るか。


 コッコファームと家のことがひと段落ついたところで、後で行くとグランに言っていたことを思い出した。コッコたちが元気に走り回っているのを見届けて、冒険者ギルドに向かう。

 ゴールデンコッコの卵を、先に商業ギルドに2個売ってしまったのでちょっと申し訳ないなと思いつつ、扉を開けた。


「こんにちは、ティムです」

「あっ、ティムさん! ギルド長、ティムさんですよ」


 奥から出てきたグランが、がしりと俺の肩を掴む。


「いい土地が買えて良かったなぁ……?」

「あ、ありがとうございました……」

「それで、金の卵は」

「はい、ありますよ」

「まだあるんだな?」


 ヤクザにカツアゲされているような気持ちでゴールデンコッコの卵を3個、グランに渡す。


「これで全部か、本当に?」

「全部ですって! 本当です」

「そうか……、まぁ座れ」


 奥の部屋に通されて、ポト麦で作ったというポト麦茶をいただく。香ばしくて美味しい。

 お茶で和んでいる場合ではなく、グランの顔がとても怖い。


「領主様にな、報告に行ってきた。そりゃあ喜んでな。長年誰もできなかったのにどんな奴だという話になった」

「は、はぁ……」

「明日、一緒に来い。嫌だといっても連れて行くからな」

「えぇ!? どこにですか」

「決まってるだろ、領主様のお屋敷だ。お前が今日金の卵を商業ギルドに売っちまったからな。買い手がついて市場に出回る前に欲しいんだとよ。直接、お前が渡せ。」


 明日か、コッコの世話があるのに、あまり離れたくないんだけどな。


「それって、どれくらいかかりますか」

「馬車で3時間くらいだな。夕方には帰ってこれるさ」


 1日か。それくらいなら大丈夫かな。


「分かりました。ご一緒します」

「おう、逃げるなよ」


 領主様ってどんな人なんだろう。ちょっと緊張する。


 あの後グランに聞いたところによると、ここココイ村はアーベスト領の辺境にある村だ。

 同じ領内の近くには林業のサパン村、織物が有名なタバラ町、領主の住む街として市場の中心を担うノルン街がある。

 ココイ村からサパン村、タバラ町を抜けてノルン街へと道が真っ直ぐつながっているため、明日は他の村や街の様子も知ることができそうだ。

 

 コッコファームに戻ってみると、ファーム内のあちこちに卵が落ちていた。拾ってまわると、36個。


「結構な量、産むんだな。これなら少しもらっても大丈夫だろう」


 無精卵が20個あったのでアイテムボックスに入れ、有精卵は孵化用の結界を作って温めるようにした。

 選別するようになって気付いたんだけど、無精卵はアイテムボックスに入るんだ。命って不思議。

 これ、毎日集めて選別するのは大変だな。こういうときは、と思いついて地面の結界を少し変える。


 ファームが割と広いので、10カ所に分けて窪みを作った。

 どこで卵を産んでも、傾斜で自然と窪みに転がって落ちる仕組みにする。

 窪みの部分だけ温湿度を上げるようにすれば、孵化に適した環境となり、雛が孵れば窪みから出られるというわけだ。

 あとは定期的に10カ所の窪みを確認し、無精卵が溜まっていれば回収すればいい。

 ファーム中を毎日くまなく探すのは大変だからね。


 コッコが36羽に増えていたので、6羽を捕獲してドッポさんに捌いてもらうことにした。

 が、これが意外と大変だった。自分の結界内なのに素速く走り回るコッコに落とし穴をしかけて落ちるのを待つ。

 賢いコッコたちは広々とした結界内で落とし穴に近づくわけもなく、悩んだ結果50メートル一列に作った落とし穴を徐々に壁の端に近づけて作り続けるという追い込み漁のような方式で捕まえた。

 もっと数が多ければ簡単なんだろうけど、今日のところは仕方がない。何百回も落とし穴を作っては消したので、罠スキルがレベル2に上がった。


『鑑定:罠 Lv.2 箱罠の設置が可能になる。人前に姿を現さないモンスターに有効。箱罠の中にモンスターの好物を入れておくと効果が増す。大きさや形は術者の魔力に応じて調整可能。』


 落とし穴以外も作れるようになったのか! よし、今度森で試してみよう。

 少しずつできることが増えていくのは楽しいな。罠のレベルアップって、想像つかないけど。トラバサミとか、痛そうなのはちょっとな……。箱罠なら箱の中に閉じ込められるだけだし、ちょっと安心。


 ドッポさんのお店に行こうとして、場所を知らないことに気づいた。

 そういえばこの前は冒険者ギルドに来てもらったんだっけ。

 途中まで来て、引き返すのもなと思って周りをキョロキョロとしていると、1人の青年に声をかけられた。


「この前のコッコの肉の少年じゃないか。こんなところでどうしたんだ?」


 薄緑色の短髪に長身の快活そうな彼は、ギルドに感謝を伝えに来てくれていた人の一人だ。

 ドッポの解体屋を探していることを伝えると、案内してくれると言ってくれた。


「ドッポさんのとこってことは、またコッコが手に入ったのか? この前の、めちゃくちゃ美味かったからなぁ」

「それは良かった、今度コッコを育てることにしたので、また良かったら買ってください」

「……今何て言った?」

「いやあの、コッコを飼って育てているんです」

「ってことは、あの美味え肉がいつでも食えるようになるってことか!?」


 ひゃっほーい!! とその場で飛び上がって喜ぶ彼もまた、お肉が大好きらしい。


「楽しみにしてるからな、販売するときは絶対言ってくれよ!」


 ドッポの店の前に着き、彼はとてもいい笑顔で帰っていった。


「すみませーん、ティムです」


 カウンターで声をかけると、奥から出てきたのはドッポではなく、17歳くらいの美少女だった。


「こんにちは、お父さんにご用事ですか?」

「あ、はい……お願いできますか」

「少しお待ちくださいね、今呼んできますので」


 桃色のロングヘアーをハーフアップにし、エプロンをつけて機敏に働いているのはドッポの娘なのだろう。

 赤のタータンチェックにフリルのエプロンがよく似合っている。

 解体屋といってもそれだけで生計が成り立たないのか、お店には調味料や小物類、お菓子やパンも置いてある。

 人気があるようで店内は賑わっており、パンの焼けるいい香りがした。


「すまんな、お待たせした」

「いえ、大丈夫です。こちらこそ急に来てしまってすみません」

「で、コッコが手に入ったのか?」

「はい。それと、ご相談も」


 奥の部屋に通され、娘さんがポト麦茶を出してくれた。


「そうだ、紹介していなかったね。娘のファミィだ」

「ファミィです、父がお世話になっています」

「こちらこそ、大変お世話になっています。よろしくお願いします」

 

 ファミィがお辞儀をして出て行くと、本題に入る。

 ドッポに、コッコファームのことと、今後定期的にコッコを捌いてほしいことをお願いした。


「すごいなぁ、君は。思いもつかないようなことをやってくれるね。私としては、何も問題はないよ。儲けさせていただくんだ、こちらもできる限りのことをサポートしよう」

「ありがとうございます」


 解体料金と販売価格については、商業ギルドも含めて後日話し合うこととした。

 今日捕獲した6羽を、結界で縛ってドッポに渡す。


「これはいいコッコだ、育て方がいいのかね」

「さぁどうでしょう、僕もまだ食べていないので」


 念のため鑑定をかけてみる。


『鑑定:プレミアムコッコ コッコの上位種。卵から魔力の濃い環境に置かれたコッコから産まれる。コッコの5倍の速度で移動できる。脚力が強いため肉質も上質。レア度:B』


 ぶふぉおっっ!!

 お茶を噴いた俺に、ドッポが慌てる。


「ど、どうかしましたか」

「……っ、いや、大丈夫です」


 調べると6羽ともプレミアムコッコだが、最初の8羽だけコッコだったのか、もうよく分からない。成長速度もそもそもおかしかったしな。


 ドッポにさくっと捌いてもらうと、解体料金銀貨6枚を払って、明日領主様のお屋敷に持っていくことを伝えた。


「それはいいですね、大変お喜びになるでしょう」

「では、ありがとうございました。またお願いします」


 帰る前に、ドッポのお店に置いてある調味料やパン、お菓子などをたくさん買い込んだ。アイテムボックスに入れておけばいつでも食べられるし、いつも色々食べさせてもらっているレーラとミティへのお土産だ。あ、もちろんゴッシュにもね。


「たくさんお買い上げありがとうございます! またぜひお越しくださいね」

「はい、ぜひ! また来ます!」


 ファミィが優しく微笑む。可愛いなぁ。また来よう。


 できたばかりの自分の家に戻ると、広々としたリビングの中央にあるフカフカのソファに腰掛けた。


「さすがにテレビはないか……」


 電気もつくしキッチンにはオーブンに電子レンジまであるから、まさかとは思ったけどないものは仕方がない。

 異世界には電気なんてないだろうし、魔法でキッチンに火がつくなら自分でもファイヤー! とか使ってみたいんだけど。

 結界魔法がとんでもなくすごいのは分かったけど、何かこう、一撃でモンスターを倒せるような力とかではないんだよな。

 でも、殺せる力があったとして、自分は使うだろうか。どんな力があったとしても、所詮自分は自分だ。

 自分を守れる結界があって、モンスターを捕獲して育ててみんなに喜ばれる。それだけで十分だ。


 ミティたちの家に戻り、家ができたことを伝える。


「……どういうこと?」


 レーラが珍しく固まるので、見てみたらわかるよ、と3人を連れ出す。

 まだ晩ご飯を作り始める前でよかった。


「うわ、見たことない家だな」

「本当、何で出来ているの? 白い壁は珍しいわ」

「すごーい、大きいおうち」


 中を案内してリビングでくつろいでもらう。

 さっきファミィのお店で買ったポト麦茶と、ファミィの手作りらしいクッキーを出した。


「今夜はこっちで晩ご飯にしない? 新築祝いを兼ねて、いつもお世話になっている3人にお礼がしたくて」

「そんなの気にしなくていいんだぞ、気持ちはありがたいがな」

「コッコファームで育てたコッコを食べてみない? オーブンがあるから、ローストコッコにしようよ」

「いいわね、あれすっごく美味しかったし」

「悪いんだけど、作り方教えてもらってもいいかな? ハーブとかは、買ってきたんだけど」

「もちろん! 一緒に作りましょ。ミティも手伝って」

「はーい!」


 オーブンで焼いたプレミアムコッコは、それはもう肉汁が溢れてコッコとは思えないほど美味しかった。

 ゴッシュは冷蔵庫で冷やしたエールとローストコッコを交互に飲んで食べては、美味い!! と繰り返し叫んでいる。

 冷やしたエール、美味しいよね。少年の体なので飲まないけど、絶対最高なのは分かる。


 コッコも十分美味しいんだけど、プレミアムコッコは食べると体に力が漲る気がするな。

 ……もしかして、変な効果とか付加されてないよね。

 明日領主様に渡す予定だけど大丈夫かな……。まぁ、美味しいからいいか。

 これから販売するなら、知っておいてもらった方がいいだろうしね。


 久しぶりのお風呂とふかふかのベッドで眠る夜。

 久々にゆっくり眠れそうだと思ったところに、思いがけないことが起きた。

 ベッドルームがひとつしかなかったので、じゃんけんで勝ったレーラだけが隣に寝ているのだ。

 ーー眠れる気がしない夜が、更けていく。


続きが読みたいと思った方はブクマ・評価をどうぞよろしくお願いします。

感想や誤字報告もありましたら大変ありがたいです。

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