第14罠 襲い来るのは人か魔物か
異世界生活14日目。やっと2週間だ。
今日は肉屋の開店日なので、早起きをして店の準備に向かった。
開店は朝10時だけれど、まだ5時過ぎなのにすでに行列ができている。
空間移動で少し遠くに降り、店の裏口に向かうと村人から拍手喝采を浴びてしまった。
「ティム! ありがとう!!」
「俺ら夜中から並んでるんだ! エールも3日我慢したんだ、今日食えなかったら死んでも死にきれねぇぜ!」
「ティムティムミート万歳!! 俺らの食卓の救世主!!」
……何だか想像以上にひどいことになっているな。
試食会のときに、急遽肉を追加して捌いてもらったのを思い出した。
昨日大量にお願いしてストックは500羽あるから、まずは200羽出して様子を見るとするか。
冷蔵庫に肉を入れていると、ソアラとリアラ、エリオットが出勤してきた。
「おはよう、ってまだ早くないか!?」
「何言ってるんですか店長! 開店日なんですよ? 皆楽しみで早起きしちゃいました」
「いや、それでも契約は1日8時間だろ? 早く出た分は給料を上乗せするから、エリオット計算しておいてね?」
「はい、承知しました」
店内を綺麗に掃除し、調理メニューの準備も多めに追加しておく。
行列が予想以上なので、各メニュー200食は準備したが足りなくなるかもしれない。
「皆、今日は忙しくなると思うけど、売上に応じてボーナス出すから頑張ってくれるかな」
正直、3人で余裕だと思っていたがこの行列だと人手が足りないだろう。店のスペースから考えて、人を増やしても動きにくくなるだけではあるけど、調理と販売は別じゃないと間に合わないかもしれない。
ソアラが注文を取り袋に入れ、リアラが奥で調理、数字に強いエリオットが会計をする流れでとりあえずいくことにした。
あとは俺が肉の補充や列整理、トラブル対応など全体を見ていくことで3人には販売に集中してもらう作戦だ。
午前8時、列は広場まで伸びていた。何度か列整理に説明に行き、割り込みや問題を起こした場合は販売できないこと、通行人の邪魔にならないように2列で乱さずに並ぶこと、列の最後尾の人には最後尾の札を持ってもらうことを説明した。
「もう、150人くらい並んでいますよね? ココイ村皆が集まってるんじゃないですか?」
「いや、どうやら噂を聞きつけて別の街から買いに来ている人もいるみたいだ。見ない顔が結構いるだろう?」
「あ、ほんとだ。そうですねぇ」
開店30分前には、行列は300人を超えていた。どこからそんなに人が現れたのか、確かに明らかに上質な服装をした執事のような人や、荷物の多い行商人のような人も多く並んでいる。
……コッコ、ごめんな。俺が肉屋を開いたばっかりに。
2000羽を超えているコッコの群れから、さらに500羽を捕獲する。急いでドッポに解体依頼をし、出来次第店に運んでもらえないかお願いした。
これで、少しは持つんじゃないだろうか。これ以上はもう売り切れということにしよう。
午前10時。いよいよティムティムミートが開店した。
「お待たせいたしました!! 只今より販売を開始いたします!! たくさんありますので、慌てずにご注文ください!!」
ソアラの声が響くと、行列から歓声が上がった。皆、文句も言わずずっと待ってくれていたのだ。
開店前には次々と揚がっていくフライドコッコやコッコ唐揚げのいい匂いが漂い、皆今にも涎を垂らしそうな顔をしていた。
「コッコ肉3羽と、フライドコッコと唐揚げ、カツサンドを5個ずつ!」
「コッコ肉5羽と、料理は全部10個ずつ頼む」
「コッコ肉2羽と、あら胸肉だけも選べるのね。じゃあ胸肉を1羽分お願い。あとフライドコッコを4つ」
怒涛の注文に、大きな冷蔵庫一杯に入れていた肉が、次から次に消えていく。合間を見てアイテムボックスから補充するが、補充する端から肉が売れていった。
リアラはひたすらフライヤーと格闘している。フライドコッコが人気で、1台で揚げるのが間に合わないようだったので、追加で3台フライヤーを作った。
「店長! ありがとうございます」
「俺も揚げるの手伝うよ、下準備していた肉もなくなりそうだから、そっちをお願いしてもいい?」
「分かりました、すぐに準備します」
リアラがテキパキとコッコ肉を切り分けてスパイスミックスが入った袋に入れていく。
200食なんてとてもじゃないけど足りなかったな。追加で20羽を切り分けてもらい、その間にフライヤーでコッコ肉を揚げ続けた。カツサンドは手間がかかるので売り切れ次第終了だ。
開店までに並んでいた300人は2時間かかってようやく一区切りついたようだった。
しかし、最初に買った人たちがやっぱりもう少し食べたいと再度並び始めたので列がなかなか途切れないままだ。
最初に準備した500羽はすぐになくなり、追加の500羽も残り100羽を切っている。
1日で1000羽って、どれだけすごい食欲なんだ……。
いや、中にはマジックバッグを持っていて高そうな服を着た、どこかの貴族の使用人が20羽買って行ったりもしていた。
購入制限かけなかったからなぁ。次からは1人3羽まで、とかにしよう。
お昼になるし、そろそろ交代で休憩することにした。
昼食に、コッコ肉はもうなくなりそうなので、まだ販売していないワイルドボアをせっかくだし食べてもらおう。
キッチンで、残っていたカツの衣を使わせてもらって、ワイルドボアカツを作る。フライヤーで挙げて、ソースをかけて完成だ。パンも余っていたのを使って、結局カツサンドになってしまった。
「みんな、休憩に交代で入って。お昼ご飯用意したから食べてね」
「お昼ご飯ですか!? 食事まで出してもらえるなんて……!!」
「みんなが頑張ってくれたからね。ワイルドボアのカツサンド、たくさん作ったから熱いうちにどうぞ」
「「「店長っ……!!」」」
3人が揃ってこっちを泣きそうな顔で見つめる。
じゃんけんをして勝ったソアラが一番に休憩をすることになった。
「う、うまぁ……っ!! ワイルドボア、めちゃくちゃ美味いですね……!! 肉汁が溢れて、噛むたびに肉の旨みがガツンときます!!」
「ソアラ、あんまり叫ぶな。俺だって早く食べたいんだ」
「だって、美味しいんだもん!!」
――この肉屋、致命的な欠点があった。休憩室がないので、会話がお客さんに丸聞こえなのだ。
「……今、ワイルドボアって言ったよな?」
「あぁ、確かに聞こえた。ワイルドボアのカツサンド……」
「おい、販売はしていないのか!?」
ワイルドボアは現在販売しておりません、販売まで今しばらくお待ちください。
そう、大声で叫ばざるを得なくなった結果、ワイルドボアを販売予定ということが大々的に知られてしまうこととなった。
すぐに村中にワイルドボアの噂が知れ渡り、それはアーベスト領主ランドールの耳にも届くこととなる。
ーー午後2時で、予定していたコッコ肉も料理も、全て完売となった。
「みんな、お疲れ様でした」
「店長、今日の売り上げが金貨515枚と銀貨6枚です。純利益はこの後計算してまたご報告しますので」
「うん、ありがとう、エリオット。お金の計算を任せられてありがたいよ。ソアラとリアラも、疲れただろ? 本当にお疲れ様」
「いえ、私は大丈夫です」
「私も!! これくらい大丈夫ですよ、店長!」
みんな疲れているだろうに、最後まで笑顔で頑張ってくれた。
せめてものお礼にと、ワイルドボアの肉を切り分けて、3人に渡す。
「これ、良かったら家で食べて。リアラは新メニューとかこれで考えてくれたら嬉しいな」
「……ありがとうございます!」
片付けをしてから店を閉めて、本日は完売のため終了しましたと案内を表に貼った。
これで、肉屋の初日は無事終了だ。
まだ時間も早いし、レーラと少し森に行ってみようかな。
そう思いレーラに会いに家に行くと、ミティが甘い匂いをさせて出迎えてくれた。
「ティム! きてくれて、うれしい」
「ミティ、久しぶり。美味しそうな匂いだね」
「チェリルの実がたくさんなってね、ジャムをつくっていたの」
嬉しそうに笑うミティは、最近よくジャム作りに励んでいるんだとか。
瓶に入ったジャムを2つくれたので、金貨を2枚渡す。
「ティムにはいつもたくさんもらってるから、おかねはいいの」
「ううん、もらっておいて。ミティのジャムは、それくらい価値があるものだよ」
ジャムをアイテムボックスにしまうと、奥からレーラが出てきたので森に行こうと誘ってみる。
今日のターゲットは、ランクCの依頼になるフォレストスネークだ。
「えぇ、またあの怖いやつするんでしょ……?」
「うん、怖くないようにするから力を貸してほしいな。そういえば、パーティを組んだことをギルドに言ってないから冒険者ギルドに先に行かないか?」
「うん、まぁ……、それなら行ってもいいけど?」
「良かった、じゃあ行こう」
レーラの手を引いて家を出る。空間移動ですぐに冒険者ギルドの前に出ると、レーラは腕にしがみついていた。
レーラ、意外と怖がりなんだよなぁ。
「これ、やっぱり全然慣れないんだけど!」
「ごめんね、怖かった?」
「う……、別に、謝らなくてもいいんだから」
冒険者ギルドに着き、受付嬢のセレンに声をかける。
「こんにちは」
「ティムさん!! ティムティムミートの開店おめでとうございます! 私も隙を見て買いに行きましたよぅ、やっぱりめちゃくちゃ美味しかったです……!!」
「こらセレン、勝手に受付空にしてるんじゃないぞ」
「あ! ギルド長……! いやあの、誰も来なかったときですよ?」
「……まぁ、俺も買いに行ったけどな。いるなら一緒に買ってきたのに」
「ギルド長がそんなに優しいとか思わないじゃないですか」
「お前なぁ……、分かったもう2度と言わん」
「そんなぁ……!」
相変わらず楽しそうにやっているみたいで安心した。
今日はパーティーメンバーについて登録したいと話してみると、ギルド長のグランが奥で話すかと言うのでついて行く。
応接室で、グランと向かい合わせに座る。レーラは隣で緊張した様子だし、グランはいつもと違って険しい表情だ。
さっきまでとは一転して重い空気の中、グランが話し始める。
「レーラ、ティムと一緒のパーティを組むのか」
「え、ええ。ティムが、組みたいと言ってくれたので」
「パーティーを組むのは基本的には自由だが、ティムの場合スキルが特殊だからな。レーラのスキルは、弓矢だったか。パーティーは責任や危険を一緒に分け合い助け合う存在だ。レーラが、ただティムの能力に惹かれて付いていくだけなら悪いことは言わん、やめておけ。」
パーティーについて、グランが考えてくれていることも分かる。大方、レーラと仲良くなったからだと思っているのだろう。
ただ、言わないといけないことがあるのだが。
「グランさん、私……実は今まで隠していたスキルがあるんです」
「……レーラ、どういうことだ」
「見てもらったら、分かります」
そう言うと、目の前でコッコ肉に擬態したレーラ。
今までレーラが座っていたソファに、綺麗に羽をむしられ肉屋に並んでいそうな丸鶏が、そこにあった。
グランが、驚きすぎて面白いくらいに固まっている。
「なっ……!! レーラが、肉に……!? おいティム、俺には肉に見えるんだが!! これは何だ、スキルでできることじゃないだろ……!?」
「……それが、スキルらしいんですよ。信じられないですよね。僕も最初は目を疑いました。肉屋で疲れてるのかなって」
すぐに擬態を解いたレーラが、驚いて固まったままのグランをニヤニヤと見つめる。
「どうですか? 私のスキル」
「いや、どうもこうも……。何だその変なスキルは」
どうやらグランはまだ目の前で起きたことを信じられない様子だった。
ルアーという囮になれるスキルであること、それを使えば自分の罠スキルがもっと効率が良くなることを説明する。
「ふむ……、全く意味が分からんが……そういうことならこのパーティーは必然だな。分かった、パーティーとして登録しよう」
「ありがとうございます。レーラ、これからもよろしくね」
「う、うん。よろしく」
グランとの話が終わり受付に戻る。
パーティー登録手続きのときに、そういえばと思い王都で依頼を達成してDランクになったことをセレンに伝えた。
「聞いてますよ、ティムさんの頑張り。 Sランクまでまだまだ頑張ってくださいね!」
ギルド間の情報は伝わるらしく、セレンはすでに知っている様子だった。
情報が伝わるなら、ココイ村でも依頼の達成報告ができればいいのに。つい、そんな愚痴をこぼしてしまうと、セレンが言う。
「依頼書さえあれば、ココイ村でも達成報告はできますよ?」
「え、できるの?」
「もちろんです。というか、報告してくれるとうちのギルドにもお金が入るのでして欲しいというか……、あ、いや今のは聞かなかったことに」
「なんだ、それなら王都に行かなくていいんだ」
毎回王都まで行っていたのは何だったのか。そういえば、最初は依頼を探しに行ったんだっけ。
モリウスから依頼を受けるのなら王都は関係ないってことか。
「じゃあ、ランクアップは? 王都のギルド長じゃないとできないんじゃ」
「そんな訳ないですよ! ココイ村の冒険者はグランさんが認めればランクアップしていますよ」
そうなんだ……最初からココイ村で相談すれば良かった。
「これからは依頼書をここに持ってくるので、お願いします」
「こちらこそ、ティムさんの達成報告を楽しみに待っていますね!」
ほっとしていた俺を、グランさんが楽しそうに見ていた。
絶対知ってたんだな、王都のこと……!
「ティム、王都で大変だったのか? ココイ村はいいだろう、頼りになる優しいギルド長がいるからなぁ」
「……そうですねぇ。少なくともドラゴンを殺したと自慢してくるギルド長はいないので」
聞き方がわざとらしいので、わざとらしく答えてみる。
2人で顔を見合わせて……、思いっきり笑った。
依頼書を出してもいいということなので、セレンに持っている依頼書を全部見せてみる。
まだ90枚以上あるので、どれから進めるかセレンにも相談できるとありがたい。
「すっごくたくさんありますね……。Cランクなら、やっぱりお勧めはワイルドボアですねぇ。美味しいですし」
「ワイルドボアならもう育ててるので、他のモンスターで」
「……育ててるんですか? 本当に? もしかしてさっきの噂は本当……?」
「ええ、食べます? ワイルドボア」
冗談で言ったつもりだったが、セレンにがしりと腕を掴まれて、はたと思い出した。
この人、お肉大好きだった……!
ワイルドボアの肉を渡すと、とてつもなく拝まれたのでもう今日は相談はやめることにした。
「レーラ、森に行こうか」
シュアティレイクの森は、湖の近くの開けた草地ではランクの低い小型モンスターばかりがいる。
しかし森の奥に入っていくと、ツタが生い茂り草の丈が腰まであるような、光が届きにくい薄暗い森へと変わっていく。
今日狙っているフォレストスネークは、そんな草の間を這い回り小型のモンスターを丸呑みする肉食のモンスターだ。
地面を這い回るので落とし穴で良さそうだが、姿が見えづらいので突然襲われる可能性もある。
噛みつかれれば強い毒を持った牙で、命を落とす冒険者もいたのだとか。
今のは全てエレノアとモリウスに聞いた話だ。
ちなみに、意外と美味しいらしい。食べたくはないけど。
自分とレーラに結界を纏わせ、ダメージを受けないようにする。
「……本当に、大丈夫なのよね?」
心配しながら周りを見渡すレーラ。周りにはまだ何もモンスターの気配はない。
レーラの周りに大きな落とし穴を設置。ついでに、まだ使ったことのない網という罠を試しに設置してみる。
網は面白いことに、落とし穴のように地面だけではなく、空中やあらゆる方向に設置できるようだった。
範囲を指定してそこに引っ掛かかるのを待つのも、空中に設置してそこから急に網を落とすこともできた。
「これ、すっごく便利じゃないか……!」
俺が網で遊んでいる間に、レーラが匂い玉を発動し、同時にフォレストスネークの好物とされるロールリスに擬態した。
匂いが辺りに漂い、周囲の空気が騒めく。
ロールリスがあんなに美味しそうな匂いがするはずはない、でも匂いの正体はあそこじゃないかと、様子を伺いながら近づいてきたのはポイズントードだ。
湖があるからだろうか、湿地帯ではないがカエルもいるのかと思って見ていると、舌をレーラに伸ばそうとして前屈みになったまま落とし穴に落ちていった。
そのポイズントードを追いかけるように現れたのが、フォレストスネークだ。
鎌首を持ち上げ、二股に分かれた舌を出してシュー、と鳴きながら周りを観察している。
シュルシュルと近づいて来るのを見ていると、思ったよりも体長が大きい。道理で頭も大きいと思った。
ロールリスは簡単に丸呑みできてしまう口の大きさで、さすがにレーラも恐怖で固まっている。
どんどん近くまで迫って来ており、落とし穴まであと少しだと思った。
その時、フォレストスネークが突如大きく首を持ち上げ、ジャンプするように飛びかかったのだ。
咄嗟に、レーラの前に仕掛けてあった網を前方に飛ばす。
向かって来る頭に正面から網が飛び、驚いたフォレストスネークに被さってそのまま落とし穴に落ちていった。
「ティム!! もう少しで食べられるとこだったじゃない!!」
「間一髪、だったね。間に合ってよかった」
「よかった、じゃないわよ……あぁ、スネークに睨まれるトードの気持ちがとてもよく理解できたわ……」
慌てて戻ってきたレーラを宥めて、頑張ったねと褒める。
こんなにスムーズにターゲットを捕まえられたのはレーラのおかげだし、ルアーのスキルってすごいと思う。
1人だと、確実に食べられているとは思うけれど。
フォレストスネークとポイズントードを捕獲し、亜空間に収容する。
新しい罠のこともわかったし、今日は収穫が大きかったな。
「じゃあ、帰ろうか」
「……それ、怖いんだからゆっくりね? あと、手を握っておきなさいよ。私が居なくなったら大変でしょ?」
「了解。これでいい?」
「え、ええ……。ゆっくりよ? いい?」
俺の手をぎゅっと握って離さないレーラ。
空間移動するときは目を瞑って俺にしがみつくので、こういうときだけは可愛いなと思う。
この後、モリウスにフォレストスネークを持って行ったら、フォレストスネークではなくキングフォレストスネークじゃないかと言われた。
Aランクのキングフォレストスネーク……そんなこと聞いていない、キングがいるなんて。
肉色で獰猛らしいので、新たにキングフォレストスネークゾーンができた。他のと一緒にすると食べちゃうらしいからね。
緑色に金線が入った体は、明るいところで見るととても綺麗だった。もっと暗い場所が好きなんだろうなと思って、木や草を増やしてみる。
モリウスはとてもご満悦だったけど、この依頼書どうしようかな……また明日、グランさんに相談してみよう。
疲れて自宅に戻り、またレーラにベッドを奪われた。
今日はさすがに早朝から働いたのでベッドで寝たいし、何ならお風呂にもゆっくり浸かりたい……。
よし、作ろう。
思い立ったときにやってみるもので、自宅の横に露天風呂付きのベッドルームを建ててみた。
内風呂と露天風呂に、広々としたキングサイズのベッドが豪華な高級ホテルのような一室。
間接照明に観葉植物も置いて、冷蔵庫もさりげなく設置してみたので風呂上がりに冷えたエールも楽しめる。まだ子どもだから飲めないけど。
「すごいじゃないティム!! これなら2人でも余裕で寝れるわね、ねぇねぇあれは何?」
……あれ、レーラがお風呂に入ろうとしている……?
「いやいやレーラ、待って! ここは俺が使うために……」
「えぇ? ティムったら。いいの、言わなくても分かるわ。私が今日頑張ったから作ってくれたんでしょ? 優しいのね、そういうところは嫌いじゃないわ」
露天風呂が初めてのレーラに、説明しながら一緒に入る。
いやいやおかしいだろ。
俺は今、子どもだ……子どもだから大丈夫……。
そう言い聞かせながら、また眠れない夜を過ごすのだった。
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