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第10罠 イエローカリーコッコ食べてみた

 異世界生活10日目。

 昨夜、夜中にそっと店舗のフルリノベーションを済ませて帰ってきたので寝不足だ。

 コッコたちは相変わらず早起きなので、どんなに遅く寝ても夜明けとともに起こされるのは変わらない。


 明るくなって、完成した店舗を見たらみんな驚くかな。

 そういえば店名を考えていなかったと夜中に気付いて、それが1番時間がかかったんだ。

 お肉屋さんだから、ミート……。コッコの名前を入れると、これから他の肉も増えると変だしなぁ。

 ココイ精肉店……何か固い。ココイ村以外に売る場合もあるだろうし、地名は入れないほうがいいな。

 1時間悩んで、夜中の変なテンションのまま『ティムティムミート』と看板に描いて飾ったのは、後の祭りで。

 

 一晩明けて人が行き交う頃になれば、新しい外見の建物と共に村中にその名前が知れ渡っていた。

 決して下ネタではない、と……。村の子どもたちに笑われても、それだけは主張したい。


 店舗が出来たので、ソアラたち3人を呼んで設備の説明をしないとな。

 張り切ってフライヤーも広めに作ったし、大きな冷蔵庫も設置した。肉を切り分けるためのスライサーや、ひき肉用にミンサーも。

 セキュリティも自分が許可した人間しか入れないようになっているし、泥棒が侵入しようとしたら落とし穴に落ちるようにしてみた。

 ……ちょっと、やり過ぎただろうか。

 

 コッコファームの様子を見に行くと、白いコッコたちに混じってまたピンクやイエロー、ブルーが増えていた。

 コッコは既に1000羽を超えているので、その中に数羽というと少ないのかもしれないが。

 色を選んで捕まえるのがなかなか難しく、100羽くらい一気に落とし穴に落としてからピックアップする作業を繰り返す。

 ピンクやブルーの色分けゾーンを見に行くと、どの色も明らかに数が増えて二桁になっていた。


「やっぱり、同じ色だけ集めるとその色のコッコが増えるのか」


 味が気になるのは、イエローカリーコッコだ。

 カレー、異世界に来てから食べてないもんなぁ。

 やっぱり食べたくなる味だし、何ならイエローゾーンに入るとカレーの匂いがほんのりするので途端に食べたくなってくるのは仕方がない。


 フライヤーも試してみたいし、と理由をつけてイエローカリーコッコを2羽捕獲する。

 ランドールへ店舗開店の挨拶も兼ねて定期納入も持っていこう、と思いコッコも多めに50羽捕獲した。

 亜空間に収納し、ドッポの店に解体をお願いに向かう。


「おはようございます」

「おぉ、ティムか」


 ドッポは朝から解体用のエプロンをつけて準備万端といった様子だ。


「見たよ、1日で店があんなに綺麗になるとはな。これは忙しくなると思って朝から準備していたところだ」

「助かります、じゃあさっそく50羽の解体をお願いしたいのと、これを」


 プレミアムコッコに加えてイエローカリーコッコを出すと、ドッポは目を丸くした。


「これは……、コッコなのか」

「はい、色が違うコッコが生まれたので、味を確かめたくて。まだ数が少ないので販売はできないのですが」

「何だか……嗅いだことのない香りがするな。スパイシーというか、ううん……」

「ドッポさん、カレーは食べたことありますか」

「何だねそれは? 聞いたことがないな」


 やっぱりココイ村にはカレーはないみたいだな。

 20羽はランドールに持って行くことを伝えてお願いすると、1時間後にまた来るように言われた。……解体めちゃくちゃ早くなってないか。


 ファミィがこちらを見て微笑む。ちょっと頬が赤い気がするのは気のせいだろう。


「おはようございます、ティムさん」

「ファミィさん、おはようございます。朝からすみません、毎日のようにお世話になってるし」

「いえいえ、こちらはティムさんのおかげで売上も上がっていますし。……私も、ティムさんに会えるのは嬉しいです」


 照れたように笑うファミィは、いつにも増して可愛い。そんな表情もするんだな。


「ええと、あの! 僕も、ファミィさんの……」

『アマイモノがダイスキだぞ!!』


 俺の言葉をかき消すようにネックレスから響くクルルの声。


「え!? 今の声……」

「あ、いや! 僕も、ファミィさんの甘い物が大好きだーって!」


 咄嗟に声色を真似て誤魔化す。

 クルルのバカ、せっかくいい雰囲気だったのに……!


「じゃあ、僕はこれで。また肉を取りに来ますね」

「は、はい……」


 1時間あるので、商業ギルドに行って店舗の完成を報告することにした。


「おはようございます。ジェミィさんはいますか」

「ティムさん、おはようございます。呼んで参りますので少々お待ちください」


 奥からジェミィがすぐに現れる。


「おはようティム。あんた、またやってくれたね。一晩でなんだい、あの建物は」

「ジェミィさん、完成したんですがどうでしょうか?」

「どうもこうも、築50年のボロ屋がまるで新築じゃないか。壊したような音も聞こえなかったし、朝になったら急にできているだろ。村中がティムティムミートの話で持ちきりだよ」


 ……う、その店名。こうやって言われると何か恥ずかしいな。


「あれは、僕のスキルで作ったので。試食会の会場も同じように作ったんです」

「あの試食会の会場もだったのかい。ずいぶん前から準備したのかと思ってたけどねぇ。そういやティムはまだここに来て10日ぐらいだったね。あんた大工のほうが儲かるんじゃないかい」


 大工か。元建設関係だったから、異世界に来てまで同じ仕事はなぁ。


「うーん、それはちょっと。今は肉屋ですので」

「まぁいいさ、清潔感のある白い壁に、赤い肉モチーフの看板がよく目立ってて、いいんじゃないかい。あの正面のショーケースに肉が並ぶんだろ?」

「はい、あとはショーケースの右側のコーナーで、調理した商品を販売する予定です」


 開店が楽しみだね、と笑うジェミィ。初めは怖い人だなんて思っていたけど、最近は笑顔ばかり見せてくれるようになった。


「それで、昨日紹介していただいた3人に店舗に来てもらおうと思いまして」

「そうだね、準備は早いほうがいいだろう。」


 すぐに3人を呼んでくれたため、ジェミィにお礼を言ってから4人で店に向かった。


「すっごいですね! 一晩でこんなすごいお店ができちゃうなんて!」


 ソアラがぴょんぴょんと跳ねながら笑顔で話しかけてくる。

 リアラとエリオットは緊張した面持ちで俺の少し後をついて歩いていた。

 すぐに店の裏口に着き、3人に説明する。


「じゃあ、これから3人を結界に登録します。右手を扉に当ててもらっていいですか」

「……こうですか?」

「えぇ、そうです。……よし、登録できた。これでここには僕たち4人しか入れないようになりました」


 店舗に不審者が侵入しないために、3人を結界に登録して他の人間は入ろうとすると落とし穴に落ちるようにした。


「そんなこと、できるんですか」

「ちょっと、特殊なスキル持ちなので。落とし穴に誰かが落ちた時には僕に連絡してください。絶対に出られないので」

「……わかりました」


 店内に入ると、3人にとっては見たことのない設備の数々。

 まずは巨大冷蔵庫から、説明する。


「これは、肉を保存する冷蔵庫です。鮮度が保てるので、ショーケースに入らない分の肉は外に出しておかずに必ず冷蔵庫にしまってください」

「大きいですね。開けてみていいですか……ひゃあ、冷た……っ」

「氷魔法ですか? すごい魔力がないと、こうはいかないでしょう」


 リアラとエリオットが冷蔵庫の冷たさに驚いている。

 肉用にチルドの温度がいいと思って0度~3度に設定してあるからな。


「中の温度が上がらないように開け閉めは素早くお願いしますね」

「承知しました」


 次は調理スペースの説明だ。揚げ物が多いので大きめのフライヤーを3台設置した。油は試食会のときに大量に購入していたので、すでに入れている。


「フライヤーは、ここにスイッチがあるので時間を設定してください。時間が経つと中のバスケットが上がってくるので、油を切って販売用の袋に入れます。なるべく熱々の出来立てを食べたいですよね? なので、作りおきはなるべくしないで注文を取ってから揚げるようにしてほしいです」

「3つありますが、商品によってフライヤーを使い分けるのでしょうか」

「リアラさんいい質問です。商品によって、例えばフライドコッコのスパイスが油に移るので、同じ商品は同じフライヤーで揚げるほうがいいですね」

「わかりました」


 そんな感じで一通り説明を終える頃には1時間が経っていた。

 3人とも説明をすぐに理解してくれ、試食会で作ったメニューもレシピを覚えてくれていたので問題なくできそうだ。


「フライヤーを実際に使ってみましょうか。ちょっとドッポさんのお店にコッコ肉の解体をお願いしてきたので取りに行ってきますね。皆さんはここで待っていてください」


 3人を店に置いてドッポの店に向かう。


「すみません、肉の受け取りにきました」

「おぉ、ティムか。できてるよ、持って行きな」

「いつもありがとうございます。あ、そうだ。ドッポさん、ワイルドボアって持ち込んでも大丈夫ですか」

「いや、問題ないが。……もしかしてワイルドボアも育て始めたのか」

「まだ少ししかいないんですけどね。じゃあ、そのときはお願いします」

「お、おぉ。楽しみにしておくよ」


 自分の店に戻ると、先ほど捌いてもらったイエローカリーコッコを1羽出してみる。


「店長何ですか、それ」

「コッコの肉ですよ。少し変わった色のを手に入れたので、今日はフライヤーの使用も兼ねて試食にしましょう。……っていうか、店長って」

「3人で今決めたんです! やっぱり店長って呼ぶと、カッコイイじゃないですか!」

「う、うん……。好きに呼んでもらって構わないですけど」

「あと、その敬語もやめにしましょう! 店長なんですから年とか関係ないです!」


 ソアラがニカッと笑って、他の2人もふふ、と笑っている。


「うん……、じゃあ、そうするよ。これからよろしくね」

「はい、店長よろしくお願いします!」


 ジェミィが選んでくれた3人は、笑顔が素敵な信頼できるスタッフだ。

 

 イエローカリーコッコをリアラに切り分けてもらう。肉は中までほんのり黄色く、スパイシーな香りが漂ってくる。

 小麦粉として使っているポト麦粉を軽くまぶして、そのままフライヤーで揚げた。


「フライヤーの温度もいい感じだね。……うわ、カレーの香りがすごい」


 熱を加えることで、急に増してくるカレーのスパイシーな香り。

 ……これは、食欲がそそられるやつだ。


 3人を見ると、フライヤーの中のコッコ肉に目が釘付けになっていた。


「も、もう揚がりましたかね」

「いや、もう少しじゃないか」

「は、早く!! 食べたい!!」


 フライヤーのタイマーが鳴ってバスケットが上がってくる。揚げ加減もちょうど良さそうだ。


「お皿に盛って、皆で食べようか」


 やったああああ!! とばかりにテンションの上がる3人。お肉、そんなに好きなんだね。

 

 熱々の、揚げたてのイエローカリーコッコ。いや、プレミアムイエローカリーコッコ。

 どうしてか、俺が育てるとプレミアムがつくらしい。美味しいからいいんだけど名前が長い。


「いただきまーす……、うわ、カレーの味めっちゃする!」


 一口食べると、口の中いっぱいに広がるカレーのスパイスの香り。俺、今チキンカレー食べてる。そう錯覚するくらい、カレーの風味が濃い。


「うっっっっまぁ!! 何ですかこれ! こんな味初めて、なのに不思議とやみつきになる味!!」

「……すごく、美味しいです。ちょっと辛いのがいいですね」

「食欲が食べる程増していく、そんな魅力的な味です。食べる手が止まらない、あぁもうあと少ししか……!」


 ……うん、喜んでもらえたようで良かった。これは増やしてぜひ売りたいな。

 生肉で味がついていると皆びっくりするだろうし、最初はフライドカリーコッコとか、揚げた状態で売るのがいいかも。

 

「これは、まだすぐ商品にはできないんだけど、その内加わるかもしれないから楽しみにしてて」

「はい! 店長の下で働けて幸せです!!」


 コッコの骨をしゃぶりながら言う台詞じゃないけどね、皆。


 開店準備は順調に行きそうなので、各自の分担を決めて準備に取り掛かってもらうことにした。

 ソアラは店の広報と持ち帰り用の袋やお皿の調達、リアラは調味料や肉以外の食材調達、エリオットは商品の価格設定と売上帳簿管理。原価計算とか得意みたいなので経理のことはエリオットにお願いした。

 俺は肉の調達とファームの管理をメインにさせてもらうことにした。

 ワイルドボアも今後入ってくること、今後肉の種類を増やすために外に出ることも多いので、基本店のことは任せたいと正直に話してみたところ、3人とも力強く頷いてくれたのできっと大丈夫だろう。


 

 3人と別れ、今度はランドールの屋敷に空間魔法で移動する。

 急に行っても会えないかもしれないが、コッコ肉の納品だけなら執事にでも受け取ってもらえるはずだ。

 少し離れた場所に降り、歩いて行って屋敷の正門にいる門番に声をかけた。


「すみません、ティムと申します。コッコ肉の納品に伺いました」

「コッコ肉、もしやこの前の」

「はい、ランドール様から週1回の納品を承っておりますので、本日納品に伺いました」

「そうか、確認してくるからここで待っていてくれ」


 門番が屋敷の使用人に声をかけてすぐ、中に入るように言われる。

 屋敷の中に入ると、またも奥の応接間に案内された。


「ティム!! 急に来るとは驚いたが、会えて嬉しいよ。馬車もないのにどうやって来れたんだ?」

「ランドール様は、エレノア様をご存知でしょうか」


 ジェミィの昔話から、きっとグランとエレノア、ランドールの3人は仲が良いはずだ。


「エレノアか。あぁ、よく知っているさ。グランと3人でよく一緒に冒険したものだよ」

「先日、エレノア様が冒険者ギルドに来られまして。空間移動を教えていただきました」

「あぁ、エレノアは王都に唯一の空間魔法使いでね。あれでよく助けられたものだ……って、今教えてもらった、と言ったか」

「はい。実は僕も空間魔法のスキルを持っているんです。先日は、マジックバッグと嘘をつき申し訳ありません。なるべく人に言わないほうがいいと聞いていたものですから」


 ランドールがはぁ、と頭を抱えてため息をつく。


「まったく、とんでもない才能だね、君は。結界魔法に空間魔法か……。ココイ村に置いておくには惜しい人材だな」

「数日中に肉屋を開くことになりましたので、今日はそのご報告に。あと、先日お約束しましたコッコ肉の納品に参りました」

「あくまで、その才能は自分の好きに使いたい、というわけだな」

「自分の能力についてはまだ分からない部分も大きいですので。今は、できることから精一杯取り組む所存です」

「では、コッコ肉を受け取ろう。……エレノアのことだ、すぐに何かあると思うぞ」


 クックッと笑うランドールの顔は、まるで悪戯を考えている少年のようで。


「……あの、何かお分かりのことがあれば教えていただければ」

「いや、分からんよ。あいつは、いつも突拍子もないことばかりするからな」


 突拍子もないこと、が何なのか分からないまま、結局ランドールは楽しそうな顔をするだけだ。

 アイテムボックスからコッコ肉20羽を取り出して、ランドールに渡す。


「それと、これはまだ数が少ないのですが、新しいコッコ肉が手に入りましたのでお試しください」

「む? これは何だ、普通のコッコ肉より黄色いが」

「イエローカリーコッコ、という品種のコッコです。既に味がついていますので、そのまま素揚げやローストにされるのが良いかと」

「既に味がついている、だと?」

「食べていただければわかります」


 不可思議な表情を浮かべながら、ランドールがコックを呼ぶ。先日コッコ肉のフルコースを作ってくれたコックだ。


「ランドール様、この肉は……!?」

「新しい品種のコッコ肉だそうだ。味がついているのでそのまま焼くか揚げるかしてくれるか」

「……っ、はい! 今すぐお持ちしますのでしばしお待ちください!」


 イエローカリーコッコを持ってコックは厨房へ消えていった。

 程なくして、熱々の揚げたてイエローカリーコッコ肉がテーブルに並べられた。


「……ほう、この香りは」

「ランドール様、カレーはご存知ですか」

「いや、嗅いだことのない香りだ。……いただくことにしよう」


 部屋に充満するカレーの香り。部屋の外まで漏れ出ているようで、嗅いだことのないスパイシーな香りに使用人たちもそわそわとし始めていた。

 ランドールが、手羽元を一口豪快に齧り付く。じゅわぁ、と溢れる肉汁と一緒に立ち込めるカレーの匂い。


「……っ!! 何だ、この刺激的な、それでいて食欲をそそる味は……っ!!」


 横にいたコックに、ちょっと食べてみろと指示をするランドール。

 おずおずと一口食べたコックが、……泣き崩れた。


「揚げただけなのに、こ、こんな完璧な味付け……! うぅ、コックは、必要ありまぜんねぇぇ……」


 次々とただの揚げた肉を口に放り込んでいくランドールを見ながら、使用人たちが悲しそうな顔をしている。

 ……もっと増やしてから持ってくるべきだったね。


「ティム、これはいつから販売するんだ!?」

「いえ、まだ数が少ないのでちょっと」

「もっと頑張って増やせ。見ろ、アーベスト家の皆の悲しそうな顔を」


 いや、それあなたが一人で食べたからですからね!?


「美味しさが分かっていただけたなら良かったです。普通のコッコの卵ならありますけどお求めになられますか?」

「あるだけ全部もらおう」


 さすがに全部は渡せないので100個を渡した。毎日集めている無精卵はコッコの数とともに増えていて、今朝は80個もあった。毎日溜まっていくので100個渡してもまだ100個以上ある。


「では、今日はこれで。またお願いします」

「あぁ、待っているよ」


 自宅に戻り、やっぱりもう少しカレー味が恋しくなりイエローカリーコッコを1羽捕まえた。

 少し増えて、残り14羽だ。販売にはまだまだ遠いなぁ。

 ゴッシュが捌けるので、そのままミティたちの家に向かう。


「あ! ティムーー!!」


 遠くからレーラが大きく手を振ってくれる。ミティも顔の横で小さく手を振っている。


「最近忙しそうで寂しかったのよ? 今夜は一緒にご飯食べれそう?」

「ティムいないの、さみしい」

「ありがと。そう言ってもらえて嬉しいよ。今日は、変わったコッコを持ってきたんだ」


 そう言って、生きたままのコッコを見せると2人がびっくりして飛び退いた。


「生きてるじゃない! 前は入れられないって言ってたのに」

「きいろいコッコだ、かわいい」

「入れられるようになったんだ、エレノアさんって人に教えてもらって」

「ティム、エレノアってまさかあのエレノア様か……? いや、まさかな」


 後ろからゴッシュに声をかけられる。

 そのまさかの、エレノアなんだけどね。


 プレミアムイエローカリーコッコは3人にも大好評で、ゴッシュはまたもコッコとエールの繰り返しにハマっていた。カレーと合うよね、分かる。

 レーラは、ちょっと物足りなさそうで。揚げるだけでいいとかつまんない、だってさ。

 食べた後に、誰が作っても同じように美味しいってすごいわねって言い始めた。そういう目線もあるのか。


 食後に、ミティが作ったベリーリュのジュースを出してくれた。甘酸っぱくて、スッキリする。

 サパン村に行ったとき、甘いものはないって言われたけど、ココイ村ではこうやって普通に甘いものが出てくるんだよな。

 ファミィのパティシエスキルには驚かされたけど、甘いものってそんなに珍しいんだろうか。


「ミティは甘いものが得意だよね。」

「うん、どうしたの?」

「甘いものって普通に売っているのかと思ってたんだけど、違うのかな」

「あまいものは、ちょっとしかないの」


 やっぱり、甘いものって貴重なのか。


「ミティが作るような甘いジャムは他では食べれないわよ」

「そうだな、王都でもデザートは生の果物くらいだぞ。ミティのジャムを初めて食べたときはびっくりしたけどなぁ。あとは、ほらドッポさんとこのファミィちゃん。あの子の作るクッキーとか見たことないお菓子が今大人気でな。何でもジェミィが目をつけて王都に売り出す計画が出てるらしい。最近ずっと売り切れで買えないんだけどな」


 それ、買い占めたの俺です……。というか、大人気なのか。王都で人気が出てしまったら、クルルに食べさせる分がなくなってしまうじゃないか。

 やっぱり、パティシエスキルがすごいってことだな。


「ミティのその才能、もしかしてスキルが関係してたりする?」

「……ティムだからはなすけど。こんふぃずーる、っていうのがあるの」


 ……コンフィズール? 何だろう、パティシエみたいなやつかな。

 鑑定先生に聞くと、ジャムやキャラメル等の砂糖菓子を専門にするお菓子職人のことみたいだ。

 キャラメルか……、生キャラメル、美味しいんだよなぁ。

 キャラメルって確か生クリームを煮詰めて作るんだよな。これも牛乳か……。


「そうか、やっぱり。話してくれてありがとう。それ、すごいスキルだよ。ミティのスキルは、僕にはすごく必要なんだ。……力を貸してくれないかな」

「……っ!! わたし、そんなこと、いわれたの、はじめて……」

「いいなぁ、ミティ。私もティムに必要だ、なんて言われたいなぁ」

「レーラだって、もしかしたらすごいスキルがあるんじゃない?」


 冗談めかしてレーラに聞いてみると、レーラがドヤ顔でこっちを見る。


「聞いて驚くわよ、私はね……ルアーよ!! 何かわかんないけどね!!」

「ル、ルアー……? 何だよそれ」


 ルアーって、囮って意味らしい。……もしかして俺と組むとすごく便利だったりする?

続きが読みたいと思った方はブクマ・評価をどうぞよろしくお願いします。

感想や誤字報告もありましたら大変ありがたいです。


読んでいただきありがとうございました。

ブクマや評価、感想ありがとうございます。

大変励みになります。

お知らせとして、来週から忙しくなるため毎日ではなく不定期更新になります。

気長にお付き合いいただければと思います。

今後ともどうぞよろしくお願いします。

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