表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#壊れた地球の歩き方 【コミカライズ全3巻発売中!】  作者: ヤマモトユウスケ@#壊れた地球の歩き方 発売中!
第二章【なにわダンジョン解放編/大悪党に連れられて】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/266

28 再戦決定



 デートついでに、僕らは五百メートルの高さまで登っていた。

 なにわダンジョン第三階層、天井に張り巡らされた太いパイプに取り付けられた、鉄網製の工事用足場みたいな場所だ。


「……あの、お兄さん。ここ、めちゃ、こわい」

「大丈夫だよ、地下だから風はないし落ちたりしないよ。ほら、命綱もつけてるし」


 ぷるぷる震えるナナちゃんの腰には、縄と金具を組み合わせて作ったハンドメイドの命綱が装着され、手すりと繋がっている。

 はしごで五百メートルを上がるのは面倒だったけれど、そこはそれ、身体スペック任せで無理やり登り切った。

 踊り場ごとに休憩しながらでも、三時間かかった。


「……むり。私、この網の上を進むのはむり」


 ナナちゃんが断固としてNOの姿勢を取ったので、太陽を見に行くのは僕だけになった。

 意外なことに、近づいても少し眩しいくらいだ。

 この広大な地下空間を照らす光量は明らかにないので、やはり、太陽の代わりになるよう、ユウギリの魔法がかけられているのだろう。

 ぐるぐる巻いたうずまきの周囲に、三角形の突起を取り付けた、デフォルメした太陽型のネオン看板。

 金属製の太い支柱がいくつも並んで、巨大看板を釣るしていた。

 巨大だとは思っていたけれど、サイズはちょうど百メートルだった。計測には『建築』スキルの経験が活きた。

 真下には、闘技場が……ユウギリの居城が見えた。

 ちょうど、コロシアムでは、だれかが試合中らしい。

 しかし、試合。試合か。


「……アダチさんの依頼は、僕らを嵌める罠だったし」


 目標の再設定が必要だ。

 つまり、だれかに頼まれたとかじゃなくて、僕がどうしたいのかの問題。

 大きなところでは、キャンピングカーで悠々自適の生活を送りたい、というものがある。

 そのためには、まず。


「ひとつ、秋までに古都に帰って、収穫祭に参加すること。

 ふたつ、大阪の竜を倒して集団暴走(スタンピード)を未然に防ぐこと。

 大阪では、このふたつがマストだなぁ」


 ひとまずは、大阪での目標を立て直す。


「……キャンピングカーで日本一周。

 できれば、みんなと一緒に。

 その好き勝手を通すためには、さて、どうすべきか」


 旅行を想像してみる。

 ナナちゃんが写真に思い出を残してくれるだろう。

 カグヤ先輩は、きっとおいしい料理を作ってくれる。

 レンカちゃんはきっちりと計画を詰めてくれるし、ヤカモチちゃんは持ち前の明るさで僕らを盛り上げてくれるに違いない。

 えちち屋ちゃんやアキちゃんや、もしかするとミワ先輩も一緒に来るかもしれない。

 こんなに人数がいるなら、キャンピングカーどころか、キャンピングトレーラーが必要だ。


 日本を取り戻す。


 荒唐無稽な目標だ。

 でも、僕が目指す光景は、その荒唐無稽さの先にある。


「竜をぜんぶ倒して、道を整備して、街を再開拓して、流通を復活させて……か。

 どれくらいかかるかなぁ」


 十年程度じゃ済まないだろう。

 別にいいか。

 何十年かかっても、きっと僕らは笑っていられる。


 僕には力がある。『複製』というスキルは、世界の多くを救う。

 救えるから、救いに行く。いままではそんな風に思っていた。

 けれど、それは違った。

 僕はヒーローじゃない。

 ただのイコマだ。


「よし。今回も邪道でいこう」


 苦笑しつつ、眼下を見下ろす。

 巨大なコロシアムとネオンの群れが、ぎゅうぎゅうに詰め込まれている。



 ●



 アダチさんへの再挑戦申請は、しかし、あっさりとは通らなかった。

 ユウギリの居室で、巨大な竜女は顔をしかめて首を横に振った。


『いやじゃ。再挑戦の結果など、目に見えておろう。

 貴様は勝てぬ。『複製』は強いが、Aランクを超えるほどのものでもなかろ』


 十位以内であれば、チャンピオンへの挑戦権を得られる。

 ただし、ユウギリの許可があれば、だ。


『それに、貴様。ここ何日か、街に出て治療を行なっていたようではないか。

 剣闘士は廃業し、そこなるメスのメスになったのかと思っておったのじゃが?』


 ユウギリはナナちゃんを指さした。

 僕はナナちゃんの専属メイドではあっても、メスではないのですが。

 むっとした顔で、ナナちゃんが言い返した。


「メスのメスっていう表現は正しくないよ。

 たしかに現状はメスのメスだけど、ベッドの上ではちゃんとオスだもん。

 つまりメスのオスメスなんだけど、最終的には私の方が優勢だったから、メスのオスメスのメス。

 そして、私以外にも少なくとも二人はメスがいるから、メスのメスのメスのオスメスのメスで、ようするに――」


 ナナちゃんは首をかしげて僕を見た。


「――どういうこと?」

「その場のノリでてきとうに喋るのやめようね」


 ともあれ。


「僕がチャンピオンに再挑戦する方法はないのか?」

『なくはないが、わらわはいやじゃ。

 間違いなくつまらん出来レースじゃ。

 無謀な再挑戦なぞ、面白くないに決まっておる。

 ほれ、さっさと出ていかぬか』


 なくはない? どういう意味だ?


 ユウギリの居室を追い出された僕らは、情報収集の過程で怪我を治してやった剣闘士に、詳しい話を聞くことができた。

 エキシビジョンマッチという仕組みがあるらしい。

 チャンピオンに挑みたい戦士が、勝てば褒美を得られるとか。


「やめたほうがいいと思うぞ」


 若い剣闘士はメイド姿の僕を拝みつつ、真剣な顔で言った。


「前に挑んだ若い女の子はな、殺されちまったよ。

 武器も防具も、全身の骨もぐちゃぐちゃに砕かれて、コロシアムの正面に飾られたんだ。

 チャンピオンが強さを見せつけるためのエキシビジョンなのさ。

 ……恩人がそんな目にあうところは、見たくねえ」


 ううむ。困った。

 挑めなければ、攻略のしようもない。


 しかし、あくる日のこと。

 僕らは不機嫌な表情のユウギリに呼び出された。


『二度見る価値がある、と言われたのじゃ。

 そんなわけがなかろうに』


 だれに言われたのだろう。アダチさんかな。

 ぶつくさ言いつつも、ユウギリは僕とアダチさんのエキシビジョンマッチを成立させた。

 日程は明後日の十四時から。

 明後日で、すべてを終わらせよう。



二章終了までは毎朝七時更新予定です。


わりとサクサクいくと思います~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆を押して作品を応援しよう!!

TOブックス様から書籍一巻発売中!!

TOブックス様のサイトはこちら
― 新着の感想 ―
[一言] やったぁーーー!再開!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ