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第二章【なにわダンジョン解放編/大悪党に連れられて】

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5 ローパー



「旅の概念が崩壊しましたわ。

 『複製』ってホンマにすごいスキルやで……」


 というのが、アダチさんの四日間の感想だった。

 元手さえあれば、水も食料も確保できてしまうスキルだから、こういうサバイバル旅では非常に有用なのは間違いない。

 今回はA大村追放後と違って、古都でしっかり準備をしてきていたから、万全である。

 それに、という話でもないけれど、僕のほうもアダチさんには驚いた。


「アダチさんもすごいですよ。

 四日間、一睡もしてないじゃないですか」

「古都で一日、休息させてもろたんで。

 『タフネス強化:A』の恩恵っちゅうやつですな」


 はっはっは、と元気よく笑うアダチさんだけれど、百時間近く眠らずに行動し続けるなんて、余人にできることではない。

 四連徹夜だけならば、できるヒトはいるだろうけれど、それは無茶の結果に過ぎない。

 『タフネス強化:A』は、シンプルに体力が続くから徹夜できてしまうのだという。

 伝説級のタフネス。不眠不休で、軽く半月は動き続けられるらしい。

 首輪に絞められながら、単独で古都までたどり着いた耐久力と持久力は、伊達ではない。

 Aランクスキル――カグヤ先輩の『農耕』と僕の『傷舐め』以外では初めて見た。

 やはり、Aまで行くと破格の性能になるようだ。


 大阪も地上が荒れていた。

 めっきり平和になった古都周辺と違い、モンスターが多いのだ。

 といっても、僕もナナちゃんも、いまやランクBスキルを複数持ち――僕は『竜種:B』によるところが多いけど――戦闘経験も豊富ないっぱしの戦士だ。

 いまさらダンジョン外のモンスターに後れを取るつもりはない。

 舐めてかかる気はないけれど、多少傷を負わされても舐めれば治るので、過度に怖がる必要もないのである。

 だから、ダンジョンの入り口まではすんなりと辿り着けた。


「……え、ここが入り口なんですか」

「はい。奇妙でっしゃろ。

 これと同じのんが、いっぱいあるんですわ」


 アダチさんが苦笑する。

 僕らの目の前にあるのは、斜めの屋根がついた建造物。

 地下鉄へ下る階段とそっくりだけど、明らかに違う点がある。


「『なにわダンジョン入り口』って、わざわざ看板まで付いてるけど、これもユウギリがやったの?」

「やろなぁ。遊び心……なんやろうと思いますけど」


 しかも、紫色にちかちか妖しく光るネオン看板だ。

 なにわっぽいと言えば、なにわっぽい見た目だけど。


「……なんか、やらしい雰囲気だね。

 ――やらしい雰囲気っ!? そんな、いやらしいですわ!

 ハイこれレンカの真似」

「四日も聞いていないからちょうど切らしてたんだ、助かるよ」


 ナナちゃんの雑なモノマネに、適当に返しておく。


「たぶんだけど、そういうコンセプトなのかもね。

 呪竜ドウマンは古都の風景を活かし、ここの主は『遊楽街としての大阪』を強く意識している……とか」


 ともあれ。


「入ってみるしかないよね」

「任せてお兄さん、触手に絡まれているところはちゃんと撮影するから」


 助けろよ、まずは。


「ま、簡単に触手にしてやられる気はないけどね。

 薙刀もあるし、まっぷたつにしてやるよ」


 と、僕にしては珍しくドヤ顔で言っておいた。



 ●



「いいね、お兄さん……!

 もうちょっと足を開いて、そう、そうやって触手に無理やりされてる感を演出……!!」

「助けてよ、まずは……!!」


 ローパーは高さ一メートル半、太さ五十センチほどの肉で作ったドラム缶みたいな円柱の本体と、本体から伸びる大量の触手だけで構成された、シンプルなモンスターだ。

 ねとねとした粘液を全身から分泌し、やや紫がかったピンク色の肉が非常にいやらしい。


 そして数本の触手が僕の四肢に絡みつき、その細長さからは想像もつかない力で拘束を試みてくる。

 一本一本はひょろい見た目通りの力しかないが、束になると『竜種』によるBランク相当のパワーでも振りほどけない。

 一本の触手なら容易くほどけるが、三本の触手ならばなかなかほどけない。

 戦国の逸話通りである。


「いや、なんで僕なんだよっ!?

 普通ナナちゃんに行くだろ、こういうのっ!」

「あ、私に来たの触手はぜんぶぶった斬ったから。

 お兄さんも薙刀持ってるんだし斬れば?」

「ぬるぬるで上手く斬れなかったんだよ!」

「あー……なるほど、そういうことね」


 ナナちゃんは最後にもう四、五枚カメラをカシャカシャ言わせた後、僕と格闘していた触手の群れをスパッと一発で両断。

 間髪容れずに体を翻し、二歩で本体まで接近して、円柱状の肉をまっぷたつにした。

 ネオンに照らされた通路に、黒い粒子が溶けていく。


「私は『薙刀術:B』あるから余裕だけど、お兄さんは違うもんね。

 趣味でぬるぬるにされてるのかと思ってた、ごめんごめん」

「いや、趣味でぬるぬるにされるヒトはいないでしょ」

「でもラジオで『いろんな趣味のヒトがいる』って言ってたし、ホラ、お兄さん女装が趣味だから、そういうプレイもアリなのかなって」

「アリでっせ」

「アダチさん、スゲえタイミングで乗ってこないで。

 ていうか、あれあれ、女装させたのはナナちゃんたちの策略じゃなかったかな……?

 いつの間にか僕の趣味を捏造されている気がするぞ……?」


 あと『オールナイト元・日本』にはいつかクレームを入れてやる。

 はがきもネットもないから、いまは無理だけどさ。


「で、どう?

 プレイは冗談だとしても、わざと触らせたのは事実でしょ?」


 と、ナナちゃんが言う。

 アダチさんが手渡してくれたタオルを『複製』し、革製防具の上にべっとりとついた粘液をふき取りつつ、僕は頷いた。


「ひとつ『複製』できたよ。

 『粘液魔法:C』だってさ」


 絡みつかれた際に複製しておいたのだ。

 久々の新スキルである。



エロダンジョンといえば触手に絡みつかれるヒロインですよね!


だからイコマをねちょねちょにしました(王道展開)


★マ!


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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公でヒロインなら、女装しないとね!(使命感
[良い点] ぬるぬるイコマ助かる 大変助かる
[気になる点] 王道展開ならナナちゃんにしないと… ★マってもしかしてジャイアントロボのマ"みたいな?
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