表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#壊れた地球の歩き方 【コミカライズ全3巻発売中!】  作者: ヤマモトユウスケ@#壊れた地球の歩き方 発売中!
第二章【なにわダンジョン解放編/大悪党に連れられて】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/266

2 来客



 夏の日差しが降り注ぐ八月の古都は、再開拓真っ盛りと言えるだろう。


 瓦礫を取り除き、改修が望めない危険な建造物を崩落させたりして、少しずつだけど廃墟から街へと変化しつつある。

 他府県からの避難民も日に日に増え続けている古都で、目下一番の問題は――。


「シンプルに『古都』か『奈良』で良いと思うんだけど」

「取り戻した、という意味では旧県名がいいでしょうけれど、カグヤ様。

 一歩『先へ進む』意味も込めて、新しい名前を付けるのは有意義だと思いますの」


 宮跡内部、古都食堂。

 テーブルのひとつを貸し切って、レンカちゃんに呼び出された僕らは侃々諤々(ゆるふわ)の議論を行なっていた。

 僕ら――つまり、(イコマ)、カグヤ先輩、ナナちゃん、ヤカモチちゃんの四人である。

 ミワ先輩、アキちゃんは急用だとかで、フジワラ教授は長期の古都外遠征中で不在。


 本日の議題は『新しく作り直される古都の街を何と呼ぶか』だ。

 今まではずっと『古都』で通してきたけれど、ヒトが新たに拓き、住む街になるのであれば、新しい名前が欲しいのだという。


「いっくんは、なにがいいと思う?」

「ありきたりですけど、『NEO平城京』でどうでしょうか」

「どこがありきたりなのよぅ」

「なぜでしょうね、悪の組織感がありますの」

「NEOってイマドキ聞かない単語だし」

「お兄さん、ネーミングセンス死んでるよね」


 散々な言われようである。

 むっとした僕は隣席のナナちゃんに言い返す。


「じゃあ、ナナちゃんはなんて名前がいいのさ」

「……古都ドウマン、とか。

 あの竜の名前を付けるってのは、どう?」


 思わず黙ってしまった。

 意外な名付けだけど、悪くない――ように思える。


「アタシは嫌いじゃないけど、敵の名前を付けるのは、どうなのかな。

 嫌がる人も多そうだけど……」

「いえ、むしろ良いのではないかと。

 古来より名前には力があると考えられているわけですから。

 『ドウマンを倒した場所』であり、『祟りが起こらぬよう敵を祀る場所』だと考えれば、日本文化の面からもしっくりくる名付けだと言えますの。

 あくまで、わたくしたちが新しく拓く街の名前としてならば、元からある呼称が消えるわけでもありませんし」

「なるほどね。

 じゃあ、間を取って『NEOドウマン』でどうか」

「いっくん、せめて『平城』のほうを残そうよ、そこは」

「ていうかなんで間をとれる気でいたの?

 イコマっちの案は対立候補ですらない枠だし」

「お兄さん、ちょっと黙ってようね」


 本当に散々な言われようである。


「子供ができたら、名前は私が付けるからね」

「はわ、その、ナナちゃん?

 私、それはちょっと気が早いんじゃないかなって思うよぅ」

「そうですわ。子供に名前を付ける前に、まずは子供を作るところから――。

 子供を作る!? そんな、いやらしいですわ!」

「こ、こづ……イコマっちのえっち! すけべ!

 そんな……キャベツ畑でなんて!?」


 なぜ僕がなじられることになるのか。

 あとヤカモチちゃんはナニとナニがどう混じってるの?


「まあともかく、良い名前だと思いますの。

 将軍マコちゃん様、もといイコマ様が竜を倒した証として、ここから再び始まる古都に竜の名前を奉じる――というのは、センセーショナルですし。

 ミワ様はどう思われます?」


 レンカちゃんが、僕の背後に呼び掛けた。

 椅子に座ったまま振り向くと、褐色肌で悪人面な美人と、槍を携えたスポーティなショートカットの女の子が立っている。

 ミワ先輩とアキちゃんだ。


「おう、悪くないんじゃねえの?

 今までにねえ由来なのがいい。

 昔と同様の名付けをすると、旧家だの政治家だのなんだのが『我らにも統治権があるはずだ』とか言い出しかねないからな。

 その点、古都ダンジョンボス、邪竜ドウマン由来なら、権利はイコマと連合軍のモンだ」


 と、ミワ先輩。


「班長はひねくれた見方をしていますが。

 私はよい名前だと思いますよ、みなさん」


 と、アキちゃん。


「かっこええ名前ですやんか。

 ボスの名前を街の名前にするっちゅうんは粋ですなぁ」


 と、二人の後ろに立っていた小太りのおじさん。

 にこやかな笑顔を浮かべているが、夏の日差しにやられたのか、汗だくである。


「……いや、だれ?」

「ナナ、お客様に失礼ですわよ。

 ミワ様、そちらの方が『急用』だったのですね?」


 ん、とミワ先輩が頷く。


「そういうこと。

 詳しい話は直接聞いてくれ」


 薄い頭髪のおじさんが、へこへこ頭を下げながら前に出た。


「そう、そうなんですがな。

 いや、ワテはアダチいうんですが、お願いがあって参った次第でしてな」

「あー、じゃあ僕らは居ないほうがいいかな。

 ナナちゃん、『複製』業務の続きを――」


 席を立ちかけた僕の肩を、ミワ先輩の両手がすっと抑えた。


「待て、イコマ。

 むしろおまえがいなきゃ始まらねえタイプの話だぜ、コレは」


 僕がいないと始まらない話?

 なんだそれ、と思っていると、汗だくのおじさん――アダチさんが急に真面目な顔になって、がばっと宮跡の土の上に四つん這いになって、頭を下げた。

 ――って、土下座!? なんで!?


「そう、そうなんや!

 古都の英雄、イコマはんにお願いがあってきたんです!

 どうか、ワテの娘を……タマコを助けてくれまへんか!?」



新キャラ


・アダチ

 汗だくのおじさん。小太り。娘がいる。


 自分が関西弁で話すのでわかるんですが、関西弁キャラって「やりすぎ」なくらいにしないと通じないんですよね。

 特に敬語絡ませると……難しい。


 ★マ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆を押して作品を応援しよう!!

TOブックス様から書籍一巻発売中!!

TOブックス様のサイトはこちら
― 新着の感想 ―
[一言] 関西弁と関西弁キャラのセリフには、大きな壁があると聞く(_’ なお、大阪弁、京都弁、奈良弁などは厳密には違うという噂があります(_’
[一言] ネオ… ○○ー○様か…母を求める赤い総帥か…それともセルフパロディの全裸総帥か…(ここまで全部一緒) 世界単位で地球の覇権を争うロボットファイトか……(レディーゴー) 素晴らしいネーミングセ…
[気になる点] 最期の敵は平安京のセイメイ? [一言] 大阪は信太の狐だろうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ