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第二章【なにわダンジョン解放編/大悪党に連れられて】

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1 暗い部屋の男

ここから二章です。

よろしくお願いいたします。



 男がいる。

 暗い部屋に、男がひとりと、小さなテーブルとイスがひとつずつ。

 男は卓上の小さなラジオのアンテナを伸ばし、つまみを回す。

 ざざ、とノイズ混じりの音声が整って、機械から音が流れ出した。


「はい、というわけで本日も始まりました、『オールナイト元・日本』のお時間です。

 今日もね、ボク、『Sweety惹句(ジャック)』のピージーと」

「同じく『Sweety惹句』のDJヒサヒデがお送りしますー」


 ハスキーでざらついた声の女性ラッパーと、甘やかな声色ながら毒舌がウリの女性DJで構成された音楽ユニット『Sweety惹句』の二人がパーソナリティを務める『オールナイト元・日本』。

 文明崩壊後の日本で、数少ない――ほぼ唯一と言っていい情報メディア。

 暗い部屋の男は、じっとラジオに耳を傾ける。


「オープニングは今まで流したことない楽曲(ヤツ)ですね。

 CDショップの廃墟から割れてないCD見つけたんですよ。

 新音源発見、コレ大ニュースね」

「いやいやピージーさん、音源よりデカいニュースあるでしょ」

「えぇ? なんかありましたっけぇ?」

「すっとぼけんなって、始まる前までめちゃ興奮してたでしょキミ」

「言うなや、そういうこと。恥ずかしいやろ。

 ちゃうんです、ボクもね、あんまり騒ぐとね、アレかな思うてね」

「アレってドレだよ。ピージーさんけっこうミーハーだよね。

 クール気取ってるけど、カッコいい男のコとか大好きだもんね」

「だから言うなや、そういうこと!

 クールでニヒルで媚びへんキャラで売ってんねんから」

「キャラて言っちゃってるじゃん」


 軽快に進むトークと対照的に、男は微動だにしない。


「で、ビッグニュースですね。

 もったいぶってもしゃーないんで、さらっと言いますけども。

 なんと、ダンジョンがひとつ攻略されました」

「よっ! 拍手!」

「拍手! ホンマすごいニュースやで、コレ!」

「日本初じゃないですか?」

「少なくともボクらが持ってる情報では地球初やね」

「そらそうや、私ら海外のことなーんも知らんからね」


 もぞり、と男が動いた。

 黒い瞳がラジオのスピーカーを見つめる。


「私、どうせピージーさんが説明すると思ってたから、あんまり前情報入れてないんだけど、どこのダンジョンなの?」

「台本くらい読んでくれやマジで。

 ええとね、攻略されたのはね、古都奈良のダンジョン」

「おー、ド田舎」

「ド田舎言うなや」

「アレでしょ、鹿と寺と仏像しかないとこ」

「偏見! それ偏見やでヒサヒデさん」

「じゃあ他になにがあるの?」

「えー……と。

 ……さて、ニュースの続きですけども」

「ないんじゃん! やっぱなんにもないんじゃん!」

「言うなて! そういうことは!

 ……まあね、たしかに今まではちょっと、鹿と寺と仏像の印象が強かったけど。

 これから先は『安全』がウリになるわけですやんか。

 ダンジョンのない安全な場所。すばらしい!」

「あー、なるほどね」

「しかもね、センセーショナルなんが、ホラ。

 いっかいラジオで言うたことあると思うんやけど、女人村」

「ああ、はいはい。あったねぇ」

「そこが攻略を主導したんやて。

 なんか、セーラー服の美少女将軍が率いてたらしいわ」

「かっこいいなぁオイ。展開がほとんどマンガじゃん」

「でも実は男やねんて」

「どういうこと!?」


 男が手を伸ばし、ラジオのボリュームつまみを右にひねった。

 暗い部屋に、ノイズの混じった女性二人の声が大きく響く。


「なんか趣味が女装らしいねんな。

 それがエラい似合ってたと」

「はー。なるほどねぇ。まあいろんな人がいますからね」

「趣味は個人の自由ですし、偉業であることに変わりはないですからね。

 そういうわけやから、もし関西、近畿にお住まいの方は、古都に避難するのもアリやと思います」

「ピージーさんも避難したいですよね」

「できたらええけど、こっからは遠いからねぇ。

 ヒサヒデさんの体力で長旅は厳しいやろし」

「あら、私も連れてってくれんの。

 やっさしーこと言うわぁ」

「やろぉ?」

「おまえニセモノか?」

「ちゃうわ!」


 暗い部屋で、男が静かに立ち上がる。


「ともかくね、古都を皮切りに、日本が元通りになっていく……ていうのを期待しちゃう明るいニュースでした、と」

「いやでもコレ、ホントに吉報だよね」

「ね! ホンマにいいニュースやわ。

 その美少女将軍さんも……美少女ちゃうか。

 美少女装癖将軍さん、ラジオ聞いてるかわからんけど、お疲れさまです」

「お疲れさまですー。

 ニューヒーロー、古都の英雄誕生ですね。

 インタビューとかないの?」

「いや、ド田舎やからスタジオから遠くて……」

「言っちゃってるじゃん!

 ド田舎って言っちゃってるじゃん!」


 テーブルの上のラジオに触れ、そのボリュームをゼロにして電源を落とす。


 無音になった暗い部屋に、男がひとり。

 覚悟を決めた男が、たたずんでいた。



新キャラです。

珍しく元ネタがわかりやすい……。


・『Sweety惹句』ピージー

 関西弁ラッパーのねーちゃん

・『Sweety惹句』DJヒサヒデ

 関東弁DJのねーちゃん

・暗い部屋の男さん

 男


 ★マ!


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― 新着の感想 ―
[一言] 女装仲間と合流する 覚悟(_’
[一言] (美少女装癖将軍に会いに行くという)覚悟
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