ある連合軍兵士の日記
三月×日 晴れ
ノートをもらった。
珍しく汚れていない、新品のノートだ。
せっかくなので日記代わりにしようと思う。
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三月×日 晴れ
なぜかどの現場にもいる謎のヒトが、狩猟班のレイジさんに追い出されたらしい。
上層部にもいろいろあるのだろう。
おれには関係ないが。
明日からしばらく東学部棟の補強工事だ。
がんばろう。
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三月×日 雨
物資がやばいらしい。
よくわからないが、レイジさんが追い出したヒト……イコマ氏が問題だったとか。
なんでも、コンドームの在庫が尽きてしまったらしい。
使う予定がないのでおれは構わないが、使う可能性がゼロというわけではない。
上層部には早い対応をしてもらいたいものだ。
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四月×日 曇り
公開班長会議に参加してきた。
物資関係はレイジさんがなんとかしてくれるそうだ。
「自分で追い出したんじゃなかったか?」と思わなくもないが、対処してくれるなら問題ないだろう。
カグヤさんは今日も小動物っぽくてかわいかった。眼福。
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四月×日 晴れ
東棟での作業中、オオカミの遠吠えが聞こえた。
ギャングウルフかもしれない。恐ろしい話だ。
狩猟班が出払っているから、近隣の安全確保と狩りが不十分らしい。
言われてみれば、配給の食肉の量が減っている。
狩猟班は、いったいなにをしているのだろうか。
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四月×日 晴れ
緊急公開班長会議があった。
古都を取り戻す戦争が始まるらしい。
戦闘能力のないおれだが、工兵としては貢献できるかもしれない。
燃えてきた。
建築班で鍛えた腕を、いまこそ使うべきときなのだろう。
聖ヤマ女村と合同で古都奪還を行うとのこと。
あの女人村との交流もできるだろう。出会いのチャンスだ。
念のため、あとで資材管理班にコンドームをもらいに行っておこう。
追記。コンドームは尽きているのだった。
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四月×日 曇り
第二陣に振り分けられてA大村を出た。
バリケードの補修以外で村の外に出るのは久々だ。
割れたアスファルトや露出した巨大な根っこの上を歩くのが、こんなにつらいとは。
自然公園まで、以前は車か電車ですぐだったのに、いまは半日がかり。
文明が崩壊したのだと強く実感する。
ボールペンのインクの残りが心もとない。
聖ヤマ女村に着いたら、融通してもらえるか聞いてみよう。
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四月×日 晴れ
連合軍を率いるマコ隊長……マコ将軍?
まあともかく、聖ヤマ女村の凄腕の食客だという美少女が、ボールペンをくれた。
目の前で十本ほど増やしてくれたのには驚いた。
『複製』スキルらしい。
そういえば、追い出されたイコマ氏も同じスキルだったはず。
便利な能力である。
手渡しで、指が触れてドキドキした。
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五月×日 晴れ
戦争が始まって数日が経った。
毎日、制圧済みのマスで安全確保やがれきの撤去を行なっている。
大変な作業だが、マコ様に励まされると『死んでもいい』という気分で頑張れる。
おれのような下っ端でも死ぬと悲しむだろうから、死ぬ気はないが。
色の濃いタイツとセーラー服、額に浮かぶ健康的な汗、ちょっとハスキーで色っぽい声。
戦場の昂った空気が、彼女の魅力を強調しているのか。
近くに寄ると美少女の匂いがする。
そろそろ気温も上がってきているからか、とても濃い。
こんな劣情を抱くのはよくないだろうが、とても濃い。
濃い。良い。
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五月×日 晴れ
マコ様、あなたは花です。
戦場に咲く一輪の花です。
凛とまっすぐに立つ姿に。
しゃなりと戦い舞う姿に。
目を奪われてしまいます。
心を奪われてしまいます。
マコ様、あなたは花です。
我が心に咲き誇る花です。
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五月×日 晴れ
昨日のポエムを読み直してもだえる。
誰にも見せられない。
実は昨日、瓦礫で切った指先を、すごそばにいたマコ様が気づいて、特別に『傷舐め』で治してくれたのだ。
興奮から、とんでもないものを生み出してしまった。
非常に下品な話ですが、大変興奮しました。
もう濃いタイツの美少女じゃないとダメな体にされてしまった。
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五月×日 雨
雨でアスファルトの間から泥やら下水やらが溢れて阿鼻叫喚だ。
補修が足りない部分があったのだろう。
マコ様も前線から下がって補修工事に参加してくれた。
ずぶぬれのセーラー服は犯罪的だが、見すぎるとナナ様に凄い顔で睨まれるのでほどほどにしなければならない。
ナナ様も美少女なので、雨天で目に毒なのに変わりはないのだが。
百合もいいな……。
本陣に戻るタイミングがかぶると、レンカ様、ヤカモチ様たち美少女と百合百合していて、あれはひょっとするとハーレムなのだろうか。
とても良いと思います。
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五月×日 曇り
明日、ついにダンジョンボスのドラゴンに挑む。
工兵隊として、爆薬設置に携わる。
最後の戦いだ。
気合いを入れていこう。
マコ様のお役に立ち、古都を再びおれたちの手に取り戻すのだ。
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五月×日 晴れ
男だった。
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五月×日 晴れ
いろいろ考えた結果、『男同士でもゴムはあったほうがいい』という結論に至ったので、あとで物資補給部隊に頼んでおこうと思う。
追記。コンドームはまだ尽きているのだった。
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五月×日 曇り
中を見てごめんなさい。
日記を書くのはとてもいい趣味だと思います。
ただ、落とさないように気を付けたほうがいいです。
なんというか、本当にごめんなさい。
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五月×日 雨
落とした日記をわざわざ届けてくれた。
イコマ様が。
とても死にたい。
男同士でもあったほうがいい(今週のお得情報)




