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#壊れた地球の歩き方 【コミカライズ全3巻発売中!】  作者: ヤマモトユウスケ@#壊れた地球の歩き方 発売中!
第一章【古都奪還戦争編/妬まれて追放されたけど、実は『複製』スキルで戦闘から生産までなんでもこなす万能ワーカーでした。今さら帰ってこいと言われてももう遅いです。】

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54 三問答



 ドラゴンはリモコンを投げ捨て、テレビを踏みつぶした。

 それらはさらさらと砂のように分解され、金銀財宝の山へと溶けて還ってゆく。

 あれは魔法――なのか?


『くく。やり方はデザイナー泣かせだが、倒した事実に変わりはない。

 低レベルクリアや低ランククリア、縛りプレイはやり込みの花だ。

 その卑しき知略を褒めてやるぞ、邪道のサルよ』


 邪道のサルとはまた過分なあだ名を頂けたもので。

 僕にはイコマという名前があるし、いまはマコちゃんという仮の名もある。

 そんな名前はいらないのでお返ししたい。

 しかし、それはともかく。


「……よければひとつ、お聞かせ願いたいのですが」

『なんだ? わしは機嫌がいい、ひとつと言わず三つまで答えてやろう。

 ただし、質問できるのは邪道のサル、おまえだけ。いいな?』


 頷いて、僕は聞いた。


「あなたは――僕ら人類の、敵なんですか?」

『くはは』


 と、ドラゴンは人間臭く笑った。


『サルの言葉を解せる相手ならば、話し合いで解決できると期待したか?

 違うな、サルの隊長よ。

 わしらは竜だ。獣を食い、サルを喰い、星を喰い、そしてそれらの過程すべてを娯楽として遊ぶものだ。

 そういう概念なのだよ、竜というものは』

「ですが現状、こうして話し合えています――言葉があるならば、相互理解も」

『言っただろう、娯楽だと。

 ヒトで遊び、ヒトと遊ぶ。

 そうしてヒトを殺し、わしらもまたヒトに殺される。

 伝説、伝承、すべてがそうであろう?

 わしも同じだとも。

 そして、そんなわしの前で、邪道のサルが口先を回しながらも、しかし脳内ではわしをどうやって殺そうか必死で考えておる――これほど愉快なことがあるか?

 くははは! いや、ないな!』


 ぎらりと牙をむき、ドラゴンは長い首をかがめて僕と目線をあわせた。


『貴様が会話を長引かせ、後ろ手のサインで仲間を撤退させようとしておるのも知っておる。

 だが、見逃そうではないか。邪道のサルよ。

 わしはこの古都を預かり、ダンジョンの長を任ぜられた。

 シンボルエンカウントはいささかオールド・ファッション過ぎるかとも思ったが、このレトロな街にはよく似合っただろう?

 最後までオールド・ファッションに、戦闘も虐殺も問答のあとにしてやろう。

 このダンジョンのボスとして、イベントシーンのひとつやふたつ、用意してやらんとなぁ』


 なるほど。デザイナー。

 つまり、古都を古風なRPGのダンジョンにリメイクしたのは、コイツだ。

 顎に手を当てて、しばらく考える。


 さきほど、このドラゴンは『SランクもAランクもいないのか』と言った。

 デザイナーたる彼が想定していた、本来の討伐難易度はそのレベルである、ということ。

 僕ら程度の徒党には簡単に対応できると示したのだ。


 であれば、三度の質問権を生かし、なんとしてでもうまくここを切り抜けなければならない。


「……うそかもしれません」

『なんだと?』

「うそをついていない保証がない」


 疑問形で話を展開するのはナシだ。

 質問と捉えられるのは避けたい。


『はっ。いらぬ心配だな。

 竜はうそをつけぬ。

 ドラゴンは概念だと言ったろう。

 わしらはうそをつけぬし、約束を破ることもできぬ。

 ドラゴンが説話にて話す時、それは甘言にて人心を惑わすときに他ならんからな。

 悪魔と同じだ。

 誘惑はする。試しもする。食い殺すことなどしょっちゅうだ。

 だが嘘はつかんし、己に課したルールを破ることもできぬ』


 ――そういう概念ということか。

 なるほどね。


『くく、話し方に気を付けるその健気な努力もまた良い余興よな』


 うるせえな。

 頭使ってんだから話しかけないでくれ。

 ともかく、ええと。


「それでは二つ目の質問ですが。

 集団暴走(スタンピード)の予兆……モンスターの異常発生と異常行動は、あなたの悪だくみですか?」

『ほう。うまい聞き方をするではないか、邪道の。

 そうさな……わしが原因だが、悪だくみではない』


 原因であっても、悪だくみではない……?

 どういうことだろうか。

 聞き返すのは我慢して、黙ってドラゴンの言葉を待つ。


『わしらは二年前、地球を滅ぼすと決めた。

 この星を滅ぼして遊ぼう、とな。

 そして地球に天変地異を引き起こし、新たなルールを追加した。

 それだけでも疲れるというのに、その後、国家や軍隊相手の大暴れだ。

 わしらは疲弊しておった。消耗しておった。

 だから、寝ることにしたのだ。二年ほどな』


 二年――つまり、いまが起きるタイミングだったということか。


『ヒトもまた、疲弊し、消耗しておった。

 ヒトで遊べるようになるには、今少しの時間がかかるだろうと、わしらは思った。

 ゆえに休息を兼ねて眠って待っておったのだ。

 そして起き――貴様らの言う異常が発生したのだろうな。

 ドラゴンは概念だが、その大元は自然災害に強力な獣などへの恐怖よ。

 わしらが起きれば、ヒトが恐れてやまない獣もまた増える。

 道理よな。寝起きゆえ、まだ影響は少ないが。

 長く続けば地震や嵐、日照りも起ころう』


 ……お、起きてるだけで災害を引き起こすのか、こいつら!?

 存在が理不尽すぎる……!

 たしかに言うとおりだ。話が通じるからといって――仲良くできる相手ではない。

 そもそもが『ヒトを害する』概念なのだ。

 遊びで人類を虐殺し、遊興のために文明をぶっ壊した。

 到底、理解できる相手ではない。

 頬を引きつらせる僕に、ドラゴンがにんまりと笑った。


『もう二つ質問をしたな、邪道の。

 残り一つ、なにを聞く?

 わしの弱点か? それとも命乞いでもしてみるか!?

 さあ、最後の質問をするがいい――!!』


 ドラゴンがそう言った。

 そう、この質問をすれば、戦闘が始まる。

 AランクかSランクか、そんな感じの勇士でなければ太刀打ちできない怪物との戦闘が。

 なにか質問をしてしまえば、それが最後。

 僕も、ナナちゃんも、部隊のみんなも――殺される。

 それは避けねばならない。


 だから、僕は後ろを向いて精鋭部隊のみんなに笑いかけた。


「よし、それじゃみんな、撤収しよっか!」

『おいコラ貴様ァーッ!?』

「三つ目の質問をしなければ攻撃してこないから安心して!

 一回帰って、じっくり作戦会議してからこのトカゲぶっ飛ばそうぜ!」

『この……ッ! 邪道がァ!!

 待て、待たんか!!

 その選択は面白いが、わしが暇になるではないか!!

 もう少し遊んでいけ!! な!?』


 無視して撤退した。

 自分の課したルールに従わなければならず、嘘もつけない――僕に『戦闘も虐殺も問答のあと』なんて言わなきゃよかったのに。



イベントシーンで一時停止して飯食いに行くやつ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゲームあるあるだ(_’ イベントの途中まで進めて、数年放置とかあるしね! SとかAランクを前提としているなら、そりゃレベル上げ(?)しないと倒せないし、戦う意味ないない(。。
[良い点] ぽーず [一言] うまー
[一言] どこぞの3つの願いを思い出した 3つ目の願いを放置して不老不死を詠歌するやつ
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