表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#壊れた地球の歩き方 【コミカライズ全3巻発売中!】  作者: ヤマモトユウスケ@#壊れた地球の歩き方 発売中!
第一章【古都奪還戦争編/妬まれて追放されたけど、実は『複製』スキルで戦闘から生産までなんでもこなす万能ワーカーでした。今さら帰ってこいと言われてももう遅いです。】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/266

40 久しぶり



 二週間と数日ぶりの再会は、思っていたよりも激しかった。


「いっくんっ!」

「わっ、と……」


 守衛室に入ってくるなり、カグヤ先輩が僕に抱き着いてきた。

 あぐらを掻いて小物の『複製』をしていた僕は、慌てて両手でカグヤ先輩を抱き締める。


「あああああ会いたかったよおおおおおお」


 涙でぐちょぐちょになった顔を僕の胸元にこすりつけながら、カグヤ先輩がむせび泣く。

 僕も無事に会えたのは涙が出そうなくらい嬉しいんだけれど、守衛室にいるのは僕らだけではない。


「カグヤ先輩、あの、みんなが見てますから……」

「はっ! そうだった!」


 守衛室内には僕とカグヤ先輩の他、ナナちゃん、レンカちゃん、ヤカモチちゃんが揃っている。

 そんな中で抱き着かれるのは、さすがにちょっと恥ずかしい。

 だけど、カグヤ先輩は抱き着いたまま後ろを振り返り、三人の表情――全員真顔――を確認して、もう一度僕の胸元に顔をこすりつけ始めた。なんで?


「もっとしっかりマーキングしておかないとっ!

 ぐりぐり……ぐりぐり……」

「カグヤ先輩っ、ちょっ、離れて……!」

「ふぅーっ……ふぅーっ……すぅ……はぁ……」

「先輩そこで深呼吸しないで、やめて、汗かいてて恥ずかしいから」

「すぅーっ……ズッ」

「ねえいま何を吸ったの? 先輩? 何を吸ったの?」

「……うー」


 なにかを吸ったカグヤ先輩が、うらめしそうに上目遣いで僕を見る。


「いっくん、座りなさい」

「え、ええと……座ってますけど」

「正座っ!」


 慌てて正座に居直る。なお、その間もカグヤ先輩は離れてくれなかった。

 おなかあたりに大きくて柔らかい感触を感じつつ、平常心を保ちながら体勢を変えるのは大変な労力であった。

 姿勢を正した僕に、カグヤ先輩は「むぅ」顔で言う。


「いまのいっくんからは、ほかの女の匂いがします。

 不埒です。不健全です。不健康です」

「ほかのおん……えっ?

 いやまあ、女子校に住んでるわけですし……。

 それは致し方ないのではないかと……」

「言い訳無用!

 女性の匂いを振りまくなんて、あまりにも不健康だよぅ!

 なので、先輩である私の健全な匂いで上書きするまで、このままでいること!」

「ええっ!? いやあの、さすがにちょっと――」


 かわいい(そしてでかい)カグヤ先輩に抱き着かれるのは役得だけれど、いろいろ作業もあるし……。

 ていうか結局カグヤ先輩も女性なんだから、女性の匂いを振りまくことに変わりはないんじゃないだろうか。

 どうしたものかと困っていると、真顔のナナちゃんがカグヤ先輩の脇を持って、ずりっと引っぺがした。


「はい、そこまで」

「あう、なにするの!

 感動の再会を邪魔しないで!」

「なにをするのはこっちのセリフだよ、お姉さん。

 お兄さんに……私のお兄さんに」

「『私の』っ!? いま『私の』って言った!?

 ……くんくん……あッ、この子いっくんの匂いがする!

 まさか……っ!」


 ナナちゃんがふふんと鼻で笑う。


「そういうことだよ。

 ふふ、悪いね、お姉さん」

「こ、このお……!」


 よくわかんないけど物騒な遣り取りを行う二人の間に、見かねたヤカモチちゃんが割って入った。


「ナナもカグヤっちも、いまはそれどころじゃないし」

「くんくん……はっ、このギャルからもいっくんの匂いが!」

「しねえし!?」

「おなかのあたりが特に濃い……やだ、いやらしい……!!」

「うう、やっぱりヤカモチの方が濃密なんだ……!!

 ねっとりなめなめだったんだぁ……!!」

「やめて!? 巻き込まないで!?」


 ヤカモチちゃんが真っ赤になって両手をばたばた振り回す。

 ぎゃーぎゃーわーわー騒ぐ女の子たちを見つつ、僕は小物――包帯や消毒液といった薬品の『複製』を進める。

 うーん、戦争前だというのに、みんな元気だなぁ。

 いや、元気がないと戦争なんてできないか。


「……と、なんでレンカちゃんが僕に抱き着いてくるの?

 どういう流れ?」

「いえ、一番『薄い』のはわたくしかなぁと思いまして。

 せっかくなのでこすりつけておこうかと」

「なにを?」

「あーッ!

 レンカが抜け駆けしてる!

 ずるい!」


 だばーっ、とナナちゃんが僕に抱き着いてきた。続けてカグヤ先輩も。


「いっくんは私のだもん!」


 だきっ、と。

 そして、なぜかヤカモチちゃんまでもが。


「……ま、まあ、アタシのおなか舐めた責任は取ってもらわないとだし……?」


 ぎゅ、と僕に抱き着いてきたので、さすがにこらえきれず、なだれるように畳の上に倒れ込む。

 積んでおいた包帯の山を崩して布塗れになった僕らは、だれからともなくこらえきれないように笑いだし――ひとしきり笑ったあと、目じりに涙を浮かべたカグヤ先輩が言った。


「久しぶりだね、いっくん!」


 半泣きながらも満面の笑みは、思わず見とれてしまうほどかわいかった。




まさかまさかの総合日間5位で表紙入り、本当にありがとうございます!(2020/10/29)

十万文字超えたら一日一回更新にしようとか思ってたんですが、せっかくなので区切りまでは毎日三回更新で頑張ります!


★マ~!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆を押して作品を応援しよう!!

TOブックス様から書籍一巻発売中!!

TOブックス様のサイトはこちら
― 新着の感想 ―
[一言] やはりペロペロは無しか…残念。
[良い点] えぇ……貴方1日3回もこんな面白い話作って投稿し続けてたの、、、ドン引きなんですが(ベタ褒め)
[一言] カグヤ、イコマに会えなかった反動とはいえそこまでする!? いろいろとおかしくなってない!? ナナとヤカモチは、そもそも治療行為とはいえイコマが原因なので、これはどうしようもないか・・・ そし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ